こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
ポータブルアンプといえば、今までスマートフォンほどので大型のサイズが多く、音質は良くなるけど利便性に欠ける製品ほとんどでした。
ただ、最近になり変換アダプター感覚で使える小型のDACアンプが主流になってきました。
その中でも特に音質にこだわった3万円クラスのスティック型DAC『Lotoo PAW S1』を今回はレビューします。
SAMPLEって書いてますが、代理店様からお借りしたものです。
Lotooといえば、10万円以上するハイエンド音楽プレイヤー『PAWシリーズ』で有名ですが、そのエッセンスを小さな筐体に凝縮した製品がPAW S1。
3万円でPAWシリーズの音を体感できると考えればかなりのコスパなのでは!?
しかも小型ながらも3.5mm端子だけでなく4.4mm端子もついており、リケーブルを愛用するオーディオファン(僕)にも嬉しい仕様!
今回はこちらのLotoo PAW S1を深掘りしてレビューしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
総合評価
4.5/5
- 広がりと深みのある小型DAC最高峰のサウンド
- イヤホン本来の音をニュートラルに引き出す
- 4.4mmバランス端子が使える
- iPhoneでも使える
- 100段階の細かな音量調整ができる
- 本体のみでゲイン調整ができる
- 通信ノイズを拾いやすい
- 他の小型DACと比べると筐体が大きい
4.2
高音
4.3
中音
4.5
低音
4.4
解像度
4.5
迫力
4.3
利便性
他の小型DAC、アンプとの比較はこちらの記事をご覧ください。
Lotoo PAW S1 概要
Lotoo PAW S1の特徴はこちら。
- Android/iOSどちらにも対応したスティック型USBーDAC
- 3.5mmアンバランス/4.4mmバランス端子どちらも搭載
- PCM:384kHz/32bit / DSD:128、MQAフルでコードまで対応
- DACチップ『AKM4377』を搭載
- 最大120mw(32Ω時)の高出力
- 価格は約3万円
価格はスティック型のDACアンプとしては約3万円と高めですが、iOS/Android、そして携帯ゲーム機などマルチデバイスに対応。
さらに3.5mm端子だけではなく4.4mmバランス端子も搭載し、本体のみでゲイン設定やイコライザー設定もできる機能性や拡張性の高さも備えています。
PAW S1のスペックはこちら
スペック一覧 | DC03 |
---|---|
本体サイズ(mm) | 66 x 22 x 13 |
重量 | 27.1g |
DACチップ | AKM4377 |
オペアンプ | TI OPA1622 |
THD+N | Low Gain:-106dB(0.0005%) High Gain:-108dB(0.0004%) |
出力レベル | 3.5mm:70mW/ch @32Ω 4.4mm:120mW/ch @32Ω |
S/N比 | 127dB |
ダイナミックレンジ | 不明 |
周波数特性 | 3.5mm: 20-20kHz:+0/-0.017dB 4.4mm: 20-20kHz:+0/-0.016dB |
ノイズフロア | 3.5mm:-118dBu 4.4mm:-114dBu |
対応ビットレート | PCM:384kHz/32bit DSD:64/128 MQAフルデコード |
カラーバリエーションはなく、ブラックの一色。
アルミニウム合金で制作された筐体で、価格相応の所有欲を満たすデザイン設計になっています。
また、Android版とiOS版が販売されており、iOS版はUSB-CケーブルとLightning to USB-Cケーブルの2種類が付属。
その分iPhone版は約35000円とAndroid版より5000円ほど高いですね。
ちなみにアリババが運営するAliExpressでは2万円前後で買えます。日本市場と価格差ありすぎっ!
概要はここまでにして、早速本体を開封していきましょう。
Lotoo PAW S1レビュー
外箱・付属品
Lotoo PAW S1の外箱はこちら。中華系のポータブルアンプなどでよく見られそうなパッケージデザインですね。そこまで高級感はないかも。
付属品一覧はこちらをご覧ください。
- USB Type C to C ケーブル(Lightningタイプの場合はUSB Type C to lightningケーブルが付属)
- マニュアル
Lotoo PAW S1はiOS向けのLightningタイプとAndroid向けのUSB-Cタイプの2種類販売されています。
今回レンタル用のため2種類のケーブルを付属してくれましたが、USB-Cタイプは1種類のみ、LightningタイプはUSB-CとLightningタイプの2種類同梱します。
本体はスティック型DACの中ではやや大きめ
Lotoo PAW S1の本体はアルミニウム合金でできた高級感のあるデザイン。艶感はあるけど光を通さないまさに漆黒の名に相応しい配色。
天面には4.4mm端子と3.5mm端子が搭載、反対側には他のデバイスに接続するためのUSB-Cメス端子が備わっています。
側面には音量操作ボタンが2つと、ゲイン設定やイコライザー設定のためのファンクションボタンが備わっています。
付属のUSB Type Cケーブルを装着するとこんな感じ。付属のケーブルが長めのため、iBasso DC03と比べると大ぶりに感じますね。
サイズは66.2×21.9×13.3(mm)。まあ単三電池より少し大きいくらいのサイズ感です。
PEE51やUA2など、他の小型DACアンプと比べるとこんな感じ。唯一、液晶画面付きで高級感もあるもののサイズは一番大きいですね。
本体の重さは27.1g、ケーブル込みで32.4g。
DC03が8.6g、少し重たいPEE51が28.8gなので、PAW S1は他の小型DACと比べてもやはり重ためですね。
Xiaomi Redmi Note 9sに装着するとこんな感じ。変換アダプターという感覚ではなく、アンプが明らかに一つ引っ付いてるって感覚ですね。
ジーパンのポケットに入れてみるとこんな感じです。ちょっと重たくてプラプラとします。
実際に運用してみるとイヤホンケーブルの延長で使える感覚ではなく、あきらかにアンプがくっついているような重みは感じますね。
小型アンプの中では取り回しは悪い方です。
音質 広がりと深みを再現するニュートラルサウンド
それではメインである音質のチェックをしていきましょう。
試聴環境は以下の通りです。
- スマートフォン:Redmi Note 9s
- 再生アプリ:Amazon Music HD
- イヤホン:カナルワークス CW-L52
まずは3.5mmアンバランスで試聴。
一聴した感想としては、楽曲に味付けをしないモニターライクな音でありつつも、楽曲が持つ音の深みやレンジ、広がりの良さを余すことなく再現する音のように感じました。
Chordでかつて大人気だったDAC『mojo』の傾向に似ているのか、基本的にはニュートラルな音ですが一音一音に丸みがあり、迫力は感じさせつつもまろやかなサウンド。
悪く言えば刺激が少なく、高域の伸びもやや悪く感じてしまいますね。モニター系のイヤホンを使うと味気ない感じにはなってしまいます。
ただ、味付けが少ないが故にイヤホン自体の特性を引き出しやすいようにも感じました。
アンプ側で余計な味付けをしたくない方にはPAW S1は良い選択肢だと思います。
一番の強みはやはりレンジと音場の広さでしょうか。ホールエフェクトのような余計な響きを与えすぎる広さというより、スタジオで録音された環境を再現するようなリアリティのある広さですね。
特にバンドサウンドは楽器が持つ躍動感や臨場感を生演奏さながらに再現してくれるので最高に気持ちいいですよ。
高音 | (4.2) |
中音 | (4.3) |
低音 | (4.5) |
解像度 | (4.4) |
迫力 | (4.5) |
スタジオで録音された音を再現するかのような生感のあるサウンド!
4.4mmバランス接続を推奨したい
PAW S1には4.4mmバランス端子も備わっており、専用ケーブルを用意することによってさらなる音質の向上を見込めます。
今回はこちらのケーブルを使って検証。やっすいですけど十分すぎるくらい4.4mm端子の効果を感じれるケーブルなのでおすすめですよ。
バランス端子で聴いてみた感想は、PAW S1を使っている限りは4.4mm端子で運用した方が良いと感じました。
個人的には左右に音が分かれすぎるのが苦手でバランス端子がついていてもアンバランスで使うことが多いのですが、PAW S1はバランス接続でも無理な分離はせず、広い音場をさらに横に広げたような自然な鳴らし方ですね。
ボーカルの定位がより定まり、各楽器隊の少しボヤけていた輪郭がよりクッキリさせつつも寒色になりすぎない印象。
アンバランス時よりも単純に音質をグレードアップしたように感じるので、できれば4.4mmバランス端子で運用することをおすすめします。
音質 | アンバランス | バランス |
---|---|---|
高音 | (4.2) | (4.3) |
中音 | (4.3) | (4.4) |
低音 | (4.5) | (4.5) |
解像度 | (4.4) | (4.5) |
迫力 | (4.5) | (4.5) |
アンバランス派ですがPAW S1はバランスで使うべき!
Lotoo PAW S1をUA2、PEE51、DC03を比べると
UA1とDC03を比べてみた感想を比較表で表すと以下のとおりです。
スペック一覧 | PAW S1 | UA2 | PEE51 | DC03 |
---|---|---|---|---|
高音 | (4.2) | (3.8) | (4.2) | (3.9) |
中音 | (4.3) | (3.8) | (4.5) | (3.8) |
低音 | (4.5) | (4.1) | (4.2) | (3.9) |
解像度 | (4.4) | (4.0) | (4.3) | (4.0) |
迫力 | (4.5) | (4.0) | (4.0) | (3.7) |
傾向 | レンジと音場が広いニュートラルサウンド | 濃密でややウォーム寄り | ボーカル重視の寒色系サウンド | 硬めでメリハリのあるサウンド |
出力レベル (32Ω時) | 3.5mm:70mW 4.4mm:120mW | 3.5mm:125mW 4.4mm:195mW | 2Vrms (負荷なし) ※125mW32Ω時 | 80mW |
端子 | 3.5mm/4.4mm | 3.5mm/2.5mm | 3.5mm | 3.5mm |
対応デバイス | iOS/Android | iOS/Android | Android | Android |
アプリ | × | ○ | × | ○ |
ゲイン調整 | ○ | ○ | × | × |
価格 | ¥29,700 | 10,000円前後予想 | ¥14,980 | ¥6,820 |
PAW S1は他の小型DACアンプより2倍以上の価格差があるだけに、音質はやはり一番良いですね。
また、AndroidだけでなくiOSに対応していたり、アプリを使わず本体のみでゲイン調整やイコライザー設定ができたりとユーザービリティも優秀。
また、最近のバランス端子の主流である4.4mm端子も備えているので、オーディオファンにとってもうれしい仕様ですね。
ただ、価格差ほどの音質の差があるわけではなく、なんだったらボーカルの表現力はAstell&Kern PEE51のほうが優れています。
まとめるとこんな感じです。
- PAW S1 → 音質に妥協したくない/4.4mmバランスを使いたい
- UA2 → 濃厚で厚みのあるサウンドが好み
- PEE51 → ボーカルを最大限に楽しみたい
- DC03 → 硬めで高解像度系の音が好み、コスパ・取り回し重視
コスパを求めると決して良くはないですが、スマホと一体型で使える小型DACとしてはハイエンドクラス。
気軽さも求めたいけど、音質に一切妥協もしたくない方におすすめの小型DACアンプです。
PAW S1は妥協したくない方向け!
細かな音量調整ができる
PAW S1は本体に音量調整ボタンがついており、本体のみで音量調整がおこなえます。
スマートフォン直結型のDACで音量調整をできるのはかなり珍しいですね。しかもボリュームは100段階で調整ができ、音量レベルを自分好みに合わせることができます。
100段階はすごいですね!めっちゃ細かく音量調整ができるのはありがたい!
ただ、iPhoneだとiPhone側でのボリューム調整ができず、PAW S1側で音量調整をしないといけません。使ってるシーンによっては不便に感じることがありますね。
恐らくiPhone側の余計な回路を通さず、音声信号を100%PAW S1側に伝えるためのこだわりの仕様だと思われます。Androidだと、デバイス側で音量調整ができます。
本体のみでゲイン設定ができる
こちらも珍しい仕様ですが、PAW S1は本体側のみでゲイン設定ができます。
これほど小型のDACだとアプリを使って対応するか、もしくはゲイン設定がないことがほとんどなのに、PAW S1はそのあたりも妥協なし。
ゲイン設定があれば、感度のイヤホンを使っても出力を与えすぎず、うるさくなりすぎない丁度良い塩梅の音にできます。
また、多ドライバーやダイナミック一基の鳴らしにくいイヤホンは、ハイゲインにすれば躍動感と迫力のある音に変化させることもできます。
色んなイヤホンを使っている方であれば、ゲイン設定はかなり便利ですよ!
イコライザー設定も本体側で変更できる
PAW S1はイコライザー設定も本体側で変更ができます。
ROCKやPOP、Near fieldやMovie、Gameなど10種類以上のイコライザーが豊富に用意されていますね。
ただ、極端なチューニングが多い印象で、正直使いたいと思うイコライザーはありませんでした。
このあたりは好みはあると思いますが、あくまでオマケくらいで考えたほうが良いかなとは個人的には思いました。
通信ノイズが混入しやすい
普段使っているスマートフォンにPAW S1を接続して使っていると、通信電波を拾ってその音も増幅してしまい、「ジジジ…」とノイズが定期的に入ってしまいます。
これはどのポタアンを使っても起こる可能性のある現象ですが、PAW S1は特にノイズを拾いやすいように感じました。
ロックやポップスなどバックミュージックが大きめの楽曲だと気になりませんが、弾き語りやクラシックを聴いているとかなり気になるかも。
あと、イヤモニなど感度の高いイヤホンと合わせてもノイズ音が感じやすくなるようです。
決して不良ではなく通信をともなうデバイスとポタアンを組み合わせたときに起こる仕様ではあるのですが、ちょっとノイズを拾いすぎかなとは感じました。
Lotoo PAW S1 まとめ
Lotoo PAW S1のレビューをまとめると以下の通りです。
総合評価
4.5/5
- 広がりと深みのある小型DAC最高峰のサウンド
- イヤホン本来の音をニュートラルに引き出す
- 4.4mmバランス端子が使える
- iPhoneでも使える
- 100段階の細かな音量調整ができる
- 本体のみでゲイン調整ができる
- 通信ノイズを拾いやすい
- 他の小型DACと比べると筐体が大きい
4.2
高音
4.3
中音
4.5
低音
4.4
解像度
4.5
迫力
4.3
利便性
スマホ直結型で音質最高峰を選ぶならコレ!
- スマートフォンを高音質化したい
- かといって音質は一切妥協したくない
- 味付けが少なく深みのあるサウンドが好み
PAW S1はスマートフォン直結型としては、やや大ぶりのDACではありますが、その分音に対するこだわりは一切妥協をしていない製品のように感じました。
ちょっと気になるのが通信ノイズを拾ってしまうこと。
バンドサウンドなら気になりませんが、クラシックやジャズを聴かれる方は通信を伴わないデバイスで聴いたり、聴いている間は通信を切った方がいいと思います。
気になる点もありますが、音質面では大変満足できる小型DACのように感じました。
音質に妥協したくない方におすすめ!
ちなみに余談ですが、AliExpressだと日本の市場価格より1万円ほど安く購入できます。
USB-Cタイプしか販売されていませんが、Lightning to OTGアダプターを別途購入すれば使えます。僕のおすすめのOTGアダプターも貼り付けておきます!
国内サポートが必要ないという方にはわりとおすすめです。
Lightning to USB-C OTGアダプターはこちら
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