こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
以前、YouTubeでも80万回再生されて、予想外にバズってしまったバケモンDAC「DC-Elite」の発売から約1年。
完全にマニア向けに作ってしまったから、「なに言ってるかわからん」「難しすぎる」「高すぎるわ」などさまざまなコメントをいただいております。

そのiBassoからまたまたスゴイドングルDACが登場しました。
それが今回紹介するNunchakuです。

この子、スマホに直接刺して有線イヤホンやヘッドホンの音を良くするドングルDACというものなのですが、なんと真空管が中に搭載されています。
真空管が中に2本並列に搭載されている様がヌンチャクっぽいから「Nunchaku」という名前にしたんでしょうかね。
リーク情報時点では真空管が2本しか写ってなかったから、真空管剥き出しのドングルDACになるのかと思ってました。

主な特徴はこちら。
- Cirrus Logic社 CS43198×2
- Raytheon JAN6418真空管デュアル搭載
- TUBEモード(真空管モード)/Class ABモード(AB級アンプモード)
- TI製OPAMP×4+BUF634A×4
- 4.4mm+3.5mmのコネクション
- 最大525mW@32Ωの高出力設計
- 消費電力、わずか120mAの低消費電力設計
- 価格は52,470円
3月14日から予約開始となっており、発売日は3月21日となっております。今回はiBassoさんから紹介用に提供いただきました。
果たしてどれほどの実力なのか、DC-Eliteは3万円クラスのDC07PROと比べながら検証していきましょう。
YouTube版はこちら
iBasso Nunchaku 外観・付属品
Nunchakuのパッケージはこんな感じ。

開封するとこんな感じです。


- 専用レザーケース
- USB Type-C to Type-C ケーブル
- USB Type-C to Lightning ケーブル
- USB Type-C to USB-A アダプタ
- クイックスタートガイド兼 製品保証書
はじめからケースがついているのは良心的!ただ、配色がマスタードイエローと超ド派手!ダッsss

Lightningケーブルも付属でつけてくれるので、追加投資なしでiPhoneと接続できるのもいいですね。

本体はこちら。カラーはDC-Eliteと同じグレーと、今回はレッドもあります。Xperia 1Ⅵのレッドと組み合わせたら絶対かっこええやん。

サイズはDC-Eliteとほぼ同じですね。ドングルDACとしてはやや大きめ。


DC-Eliteは本体設定は行えませんでしたが、Nunchakuはディスプレイが備わっており、ゲインやフィルターの調整、ボリュームの可視化ができるようになりました。

天面にはボリュームノブと入力用USB-C端子。

ボリューム部はDC-Eliteよりも飛び出しているので、回しやすくなっていますね。
また、ボリューム部を押し込んで操作を行う「マルチファンクションボタン」として使えます。
底面には3.5mm、4.4mmイヤホン端子が備わっています。

DC-Eliteには備わっていた側面のボタンはなくなっていますね。

逆サイドはラウンド加工になっています。

裏面は半透明になっていて、デュアル真空管が点灯しているのがうっすらと見えるようになっています。エモい。

重さは49.5g。

DC-Eliteの重さは60.5gなので、10gほど軽いですね。

iBasso Nunchaku 概要・スペック
スペックはこちら!
項目 | Nunchaku | DC-Elite | DC07PRO |
---|---|---|---|
DAC チップ | CS43198×2 | ROHM BD34301EKV | CS43131×4 |
オーディオ | ・真空管Raytheon JAN6418×2 ・TI製OPAMP×4+BUF634A×4 ・自社開発FPGA+KDS社製水晶発振器 | ・4セクションステップアッテネーター ・6つのデュアルオペアンプ ・NDK製フェムトクロック水晶振動子 | FPGA Master |
対応サンプリングレート | PCM 32bit / 768kHz DSD Native DSD512 | PCM 最大768kHz / 32bit DSD Native DSD512 | PCM 最大768kHz / 32bit DSD Native DSD512 |
出力端子 | 4.4mmバランス 3.5mmシングルエンド SPDIF(3.5mm) | 4.4mmバランス 3.5mmシングルエンド SPDIF(3.5mm) | 4.4mmバランス 3.5mmシングルエンド 3.5mm SPDIF |
ゲイン設定 | Low / High | – | Low / Medium / High |
デジタルフィルター | 5種 | – | 5種 |
4.4mmバランス最大出力 | 525mW+525mW@32Ω 4.5Vrms(High Gain)(TUBEモード) 450mW+450mW@32Ω 2Vrms(High Gain) (AB級モード) | 280mW@32Ω 4.6Vrms | 430mW+430mW@32Ω 4Vrms(High Gain) |
3.5mmシングルエンド最大出力 | 150mW+150mW@32Ω (TUBEモード) 125mW+125mW@32Ω (AB級モード) | 162mW@32Ω (2.28Vrms) | 118mW+118mW@32Ω |
S/N比 (4.4mm) | 130dB (AB級モード) 107dB (TUBEモード) | 121dB | 134dB |
S/N比 (3.5mm) | 125dB (AB級モード) 112dB (TUBEモード) | 117dB | 129dB |
ダイナミックレンジ (4.4mm) | 130dB (AB級モード) 110dB (TUBEモード) | 118dB | 134dB |
ダイナミックレンジ (3.5mm) | 125dB (AB級モード) 112dB (TUBEモード) | 115dB | 129dB |
周波数特性 (4.4mm) | 15Hz – 40kHz ±0.5dB (AB級) 15Hz – 40kHz ±1dB (TUBE) | 10Hz – 50kHz -0.5dB | 10Hz – 80kHz -0.5dB |
周波数特性 (3.5mm) | 15Hz – 40kHz ±0.5dB (AB級) 15Hz – 40kHz ±1dB (TUBE) | 10Hz – 50kHz -0.5dB | 10Hz – 75kHz -0.5dB |
価格 | 52,470円 | 73,260円 | 33,660円 |
iBasso Nunchaku レビュー
音質|iBassoらしいフレッシュな真空管サウンド
iBasso Nunchakuの音質ですが、さすが真空管! 解像度はもちろん高いですけど、それ以上に音楽的にしっとりと聴けるところがイイですね。
ボク、真空管やA級アンプの音が大好きなんで。

音の特徴は次のとおりです。
4.7
音質
音の傾向は、基本的にはiBassoらしくスピーディーでフレッシュなサウンドのように感じました。
しっとり落ち着いた真空管サウンド!という感じではなく、iBassoらしいフレッシュでシャキッとした音の中に真空管の暖かみが交わるような感覚ですね。
レスポンスの良い音に対して、フェードアウトしていく細かな音に、真空管らしい暖かみやしっとりさ、滑らかさを与えてくれます。
音のバランスも高域側・低域側にも偏らず、イヤホンの音のバランスのまま出すような感じですね。
DC-Eliteのような一聴して驚くようなノイズレスかつレンジが広くてスケール感のある音ではなく、DC07PROの高解像度優等生サウンドに、滑らかな真空管の音が乗ったような感じですね。
DC-Eliteが「シャキッ! ドゥオン!」だとすれば、Nuchakuは「シャキっ〜〜〜ン」「ドゥオッ〜〜〜ン」って感じ。
ボーカルやアコースティックギター、サックスなど、中高域ラインに真空管の音が乗りやすく、歯切れが良くも艶感のあるしっとりとした歌音で美しく聴かせてくれますよ。
低域はタイトさはありつつも、DC-EliteやDC07PROと比べると真空管らしい深みや柔らかな広がりを感じます。
IE 900と組み合わせて使うと、剥き出しで刺々しい高域に丸みを持たせて、聴きなじみの良い音に抑えてくれます。IE 900をもう少しウォーム傾向にしたい方には良い選択肢になると思います。
その他、Typ821など寒色傾向のイヤホンとの相性が良さそうですね。
解像度重視で”音”を楽しむのではなく、音の一体感や雰囲気を重視して”音楽”として楽しめるのが真空管の良いところ。
総評して、レスポンスが良いけど細部に真空管らしい暖かみや滑らかさを感じるような、まさに「iBassoの音に真空管が乗った!」って感じの音でしたね。
ドングルDACで真空管を搭載しているモデルは他にもなかなか見当たらず(Bluetoothレシーバーや大型のポータブルアンプならある)、現時点では唯一無二の製品で製品といえるでしょう。
AB級モードにすると
本体設定からAB級モードに変更できます。
AB級モードで使用した時の音の評価はこちらの通りです。
4.7
音質
こちらのモードにすると、真空管特有の柔らかさや広がりが抑えられ、従来のiBassoらしいフレッシュで歯切れの良いサウンドになります。
実力的にはDC07PROと近いように感じますね。
解像度や音の粒立ちの良さ、レスポンスの良さはDC07PROの方が上のように感じましたが、低域の深みや音の広がりの良さはAB級モードのNunchakuの方が良いと思いましたね。
DC-Eliteほど硬質にはならず、Nunchakuの真空管のふわっとした余韻だけを取っ払った感じです。
AB級モード目当てだけで使うのであればDC07PROでも十分だと思いますが、一台で真空管サウンドと、DC07PROのようなニュートラル高解像度サウンド、1台で2つのサウンドを楽しめるのNunchakuかなと思います。
合わせるイヤホンによっては、あえてAB級モードで使った方が良く感じるかもしれないですね。ボクは多分TUBEモードで使うと思いますけど。
出力について
出力も真空管搭載機としてはなかなか高め。
多ドライバー系のイヤホンや、能率が悪いイヤホンでも難なく本領発揮ができるでしょう。
バランス接続であれば、TAGO STUDIO T3-01(インピーダンス:70Ω、音圧感度:100dB)は余裕で鳴らせます。HD 620S(インピーダンス:150Ω、音圧感度:110dB)クラスでギリギリかちょうどイイくらいに感じましたね。
真空管って出力がそこまで高くない先入観があったんですけど、意外とAB級モードより出力が高いんですね。
HD 620Sを繋いだ状態で「TUBE」↔︎「AB」で切り替えをしたら、TUBEの方が明らかに音に厚みがあるように感じました。
デジタルフィルターで音の傾向を少し変えられる
モードを変えるだけでなく、デジタルフィルターで音の変更も少しだけ変えられます。
デジタルフィルターはデジタル信号をアナログ信号に変換する際に使用され、再生される音の質感や細部を調整する役割をもっています。
それぞれ以下のような種類があります。聴感上の音の傾向も記載してみました。
- Fast filter
→解像度が高く、シャープでクリアな音質 - Slow filter
→高域の減衰が穏やかで、音がナチュラル - Low-latency Fast filter
→Fast filterと似た音傾向で、応答性も良好 - Low-latency Slow filter
→温かみのある音ながら、応答性も良好 - NOS(Non-Oversampling)
→アナログ感のあるエモい音
「NOS」だとNuchakuの場合はモッサリとした感覚があったので、ボクは音の立ち上がりの良さ重視で「Fast Roll OFF」にしています。
携帯性について
携帯性については、DC-Eliteと同じでそのままだと悪め。
ドングルDACとしては本体が大きめのため、スマホに直結して使うと本体ブラブラとしてしまいます。
そこでiPhoneユーザーの方であれば、以前紹介したMagSafe対応アクセサリー「DAC POCKET」を使えば、めちゃめちゃ運用しやすくなりますよ。

iPhoneとDACを一つのデバイスとして運用できるようになるのでスマホも操作しやすくなります。
ただノーマルのDAC POCKETだとNunchakuを装着したらあーぱつあぱつでバンドが千切れそうになるので、これから買われる方はDAC POCKET Largeを買うことをおすすめします。

細かな音量調整がしやすい
DC-Eliteとは違い細かな音量調整もしやすいですね。
ボリュームは0〜100段階で調整可能で、意外とハイゲインでIE 900で聴いても、ボリュームは50ほどでちょうど良かったです。
意外とボリュームを上げてもうるさくならなず、細かく調整できるんですよね。
DC-Eliteは4セクションステップアッテネーターという仕様のせいで、ボリュームを回すたびに音が途切れたり、中途半端な位置で止めると音が変になったりしていましたが、今回はデジタルボリュームなのでその心配はありません。
ただDC-Eliteはあの仕様があるからこそ、デジタルボリュームによるノイズを抑制して純度の高い音質を手に入れているわけなんですよね。
ホワイトノイズは?
ホワイトノイズはかなり少なめなように感じました。
ハイゲインでIE 900を使って、無音部分が多い音源を聴いてみたのですが、ホワイトノイズはほとんど気になりませんでした。
さらに高感度のイヤホンを使うと、もしかすると目立つかも。
マイクロフォニックノイズの影響は?
真空管には振動による「マイクロフォニックノイズ」という「キーーーン」と鳴るノイズが入ることがあります。
これは真空管を搭載している限り避けようがない仕様で、同梱の注意書きにも同じような記載があります。
ただ、実際に使ってみるとマイクロフォニックノイズはほとんど入りませんでした。かなり対策されてそうです。
通信ノイズは拾う
ドングルDACという仕様上仕方がないのですが、通信ノイズは少し拾います。
スマホと距離を近づけて聴いていると「ピピっ」「ブブッ」といった音がイヤホンに入ってしまいます。
これはスマホの通信ノイズがドングルDAC側で拾い、その音をアンプで増幅してイヤホンに伝えてしまうため起こります。
むしろ静かな楽曲だとホワイトノイズより通信ノイズの方が気になることが多いかも。
確実に起こさないための対策としては「機内モード」で使うか、通信を伴わないDAPなどと接続して運用するか、ですかね。
もしくは通信ノイズと共に歩むか……。ボクは基本通信ノイズと共に歩んでます。
設定やアプリでできることは?

Nunchakuは「iBasso UAC」というアプリに対応しています。
ただし、アプリはAndroid端末でしか使えないのでご注意ください。iPhoneでは使えません。
アプリでは以下の設定が可能です。
- ボリューム調整
- L/Rバランス変更
- High Pass Filter
- Gain調整(Low / High)
- SPDIFのON/OFF
- スクリーンを180度回転
- TUBEモード、ABモード切り替え
本体のみでも設定ができるので、アプリは必須でもないですね。
ただ、直感的に操作はしにくいようにも感じました。
その他気になるところは?
ボリューム以外に気になるところはボク自身はないですが、UAC2.0→1.0への切り替えができない点は人によっては気になるかも。
1.0に切り替えることで、Switchなどの家庭用ゲーム機でも使えるDACもあるのですが、Nunchakuにはそのような設定はありません。なぜかiBassoの製品はいつもUACの切り替えがない。
あとは全てのドングルDACに言えることですが、スマホ側のバッテリーは結構吸われていきます。
DC-Eliteほど急速には吸われないですけど、なにもしていない時よりもスマホバッテリーが早く減っていくので、屋外メインで使う時はモバイルバッテリー必須です。
iBasso Nunchaku まとめ
総合評価
4.8/5
Nunchaku

- ドングルDACで本格的な真空管サウンドを
体感できる - TUBE / ABの2種類のモードで聴ける
- ホワイトノイズが少ない
- 細かな音量調整がしやすい
- 大型ヘッドホンでも鳴らし切れる出力の高さ
- ケースやLightningケーブルが付属
- ドングル型DACとしては大型
- 家庭用ゲーム機では使えない
- ケースの色味が派手すぎる
4.7
音質
3.5
携帯性
4.3
拡張性
4.4
利便性
- iPhoneやスマホの音をよくしたい(有線限定)
- 真空管サウンドを気軽に体感したい
- 暖かみのあるエモい音が好み
- できるだけ価格を抑えてハイエンドクラスの音質を手に入れたい
スケール感や解像度を重視するならDC-Elite、真空管ならではのアナログさや余韻感の美しさを重視するならNunchakuって感じですかね。
どちらか一つ選べ!と言われたら、ボクはDC-Eliteですけど、合わせるイヤホンによってはNunchakuの方がよく感じることもあるんですよね。IE 900とか程よくウォームになってくれてとても良かったですし。
どちらも性格が違いいますし、どちらもも良いのでなんやったら両方買(ry


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