こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
DACやDAPで国内でも人気の高いiBasso Audioから、大人気エントリーDAPのDXシリーズに、最新作の「DX180」が登場しました!
- CS43131 Quad DAC採用
- FPGA-MASTER 2.0に対応
- DX260のFIR技術を搭載
- Snapdragon 665 / RAM4GB+Android 13
- システムレベル”Non SRC”
- 690mW+690mW@32Ω パワフルな駆動性能
- 再生時間はバランス接続時で約15.5時間
なにがすごいかって、上位モデルのDX260の技術をほぼそのままエントリーモデルに持ってきているのですよ。
しかもSnapdragon 665 / RAM4GBだからDAPとしては操作性がいいでしょうし、再生時間もなかなか長いし、それでいて価格は78,210円とかなりお手頃なんですよ。
今までのDXシリーズから考えると1万円ほど値上がりはしていますけど、円安もありますし、なにより機能性も大幅にアップしていますし、この辺りは仕方ないかと。
どれほどの実力なのか、前作のDX170と上位モデルのDX260と比較しながら検証していきましょう。
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iBasso DX180 概要・スペック
DX260と同じDACマトリックステクノロジーをベースに、Cirrus Logic社の「CS43131」を4基搭載したクワッドDACアーキテクチャを採用しています。
DX260はCS43198を搭載していましたが、CS43131はほぼ同スペックでありつつ、ヘッドホンアンプを内蔵しさらなる低消費電力化が図られているチップです。
ただし、DX260の場合はDACを8つ搭載しているので、同じクオリティというわけではないですね。
さらにDX170で採用したデジタルオーディオシステム「FPGA-Master」が、DX260と同じく第2世代にバージョンアップし、前作よりもさらにクロックの精度を上げて音源が持つ情報を正確に引き出せるようになっているようです。
またDX260に採用された「FIRフィルター」機能もDX180にも搭載。DX260ではFIR 4Xまで対応していましたが、DX180はFIR 2Xまでとなっていますね。
これらの機能で複数のDAC間の差異を無くすことで、歪みの大幅な低減と、サウンドディテールの向上を図っています。
項目 | DX180 | DX260 | DX170 |
---|---|---|---|
OS | Android 13 / Mango OS | Android 11 / Mango OS | Android 11 / Mango OS |
SoC/CPU | Snapdragon665 | Snapdragon660 | RK3566 |
RAM | 4GB | 4GB | 2GB |
内蔵ストレージ | 128GB | 64GB | 32GB |
DACチップ | Cirrus Logic社 CS43131×4 | Cirrus Logic CS43198×8 | Cirrus Logic CS43131×2 |
FPGA-MASTER | 2.0 | 2.0 | 1.0 |
対応サンプリングレート | PCM 32bit / 768kHz DSD512 | PCM 最大768kHz / 32bit DSD256 | PCM 最大384kHz / 32bit DSD256 |
バッテリー | 3200mAh | 4400mAh 3.8V | 3200mAh 3.8V リチウムイオンバッテリー |
最大連続再生時間 | 4.4mm Phone Out(Low Gain):約15.5時間 4.4mm Phone Out(HighGain):約13時間 | 約14時間 | 約11 時間 |
充電対応規格 | USB-TypeC QC3.0 / PD3.0 | USB-TypeC QC3.0 / PD3.0 | USB-TypeC QC3.0 / PD2.0 |
Bluetooth | Ver 5.0 | Ver 5.0 | Ver5.0 |
出力端子 | 3.5mm ステレオ出力端子 4.4mm バランス出力端子 3.5mm 同軸デジタル出力(共通端子) USB-OTGデジタル出力 | 3.5mm ステレオ出力端子 4.4mm バランス出力端子 3.5mm 同軸デジタル出力 USB-OTGデジタル出力 | 3.5mm ステレオ出力 4.4mm バランス出力 3.5mm 同軸デジタル出力 USB-OTGデジタル出力 |
出力レベル | 4.4mm:6Vrms(690mW + 690mW@32Ω ) 3.5mm:3Vrms(281mW + 281mW@32Ω) | 4.4mm:6Vrms(1015mW + 1015mW @32Ω ) 3.5mm:3Vrms(280mW + 280mW@32Ω) | 4.4mm:6.4Vrms 3.5mm:3.2Vrms |
S/N比 | 4.4mm:133dB 3.5mm:127dB | 4.4mm:133dB 3.5mm:128dB | 4.4mm:130dB 3.5mm:125dB |
ダイナミックレンジ | 4.4mm:133dB 3.5mm:127dB | 4.4mm:134dB 3.5mm:128dB | 4.4mm:表記なし 3.5mm:表記なし |
THD+N | 4.4mm:-121dB (A特性 600Ω負荷) 3.5mm:-116dB(A特性 600Ω負荷) | 4.4mm:-121dB (A特性 600Ω負荷) 3.5mm:-115dB(A特性 600Ω負荷) | 4.4mm:-113dB 3.5mm:表記なし |
クロストーク | 4.4mm:-144dB 3.5mm:-118dB | 4.4mm:-145dB 3.5mm:-115dB | 4.4mm:-125dB 3.5mm:-115dB |
価格 | 78,210円 | 156,420円 | 59,620円 |
計測値はDX260と同レベルまで叩き出しつつ、AndroidバージョンやSoC、内蔵ストレージはDX260をも上回る性能です。
iBasso DX180 外観・付属品
それではパッケージからチェックしていきましょう。
シアンブルーっぽいデザインでとても爽やか。
開封するとこんな感じ。内蓋が血みどろ。
- USB-C to A 充電ケーブル
専用TPUケース
スクリーンプロテクター
製品保証書
クイックスタートガイド
はじめからケースからスクリーンプロテクターまでつけてくれるのは評価が高い。
本体はDAPでよくある感じのフォルムですが、カラーリングが可愛いですね。今回はブルーをお送りいただいています。その他にもブラックとグリーンがありますね。
ただ10万円以下のエントリークラスとしては少し大きめな気がしますね。
側面にはボタン類。
底面には3.5mm / 4.4mmイヤホンジャック。
天面にはmicroSDカードスロットと、USB-C端子が備わっています。
再生時間はバランス接続・ローゲインで15.5時間と長めなのに対して、充電時間は1.5時間で満充電となるので、バッテリー周りの利便性は高そうですね。
背面はDX260と同じくバックパネルを開けられる仕様になっていて、万が一の修理の際でもメンテナンスしやすくなっています(メーカーが)。
ボリュームノブはDX260のように勝手にクルクルと回る感じもなく、カリカリとした少し重め挙動になっていますね。
DX260のボリュームは軽すぎて個人的にはネガティブポイントでしたが、これなら許せる。
DX170、DX260ともサイズを比べてみましたけど、DX170がやや小さくて角が取れたデザインになっているくらいで、ほぼ同サイズですね。
重さは206gとおおよそスマホと同じかやや重たいくらい。
iBasso DX180 レビュー
音質|フレッシュで高解像度なサウンド
iBasso DX180の音質ですが、10万円以下でAndroid搭載機としてはとても良い方だと思います。
iBassoらしい高解像度で瑞々しくフレッシュなサウンドが特徴ですね。最近のiBassoの音をストレートに再現してきたような感じです。
今回の検証は以下の環境で行いました。
- イヤホン:AFUL Performer 8
- ヘッドホン:TAGO STUDIO T3-01(ハイゲイン)
- デジタルフィルター:Short Delay Slow Roll Off
- FIRフィルター:Normal
- アプリ:Amazon Music
音の特徴は次のとおりです。
4.4
音質
一聴して感じたのは、DX260と同じようなノイズ感の少なさと音の描写力の高さ。スペックからも表れている通りのノイズの少なさで、音像のブレのようなものがとても少ない音のように感じました。
音の傾向は、いわゆるHi-Fi系という感じの高解像度サウンドで、音の描写をクッキリハッキリ硬質に鳴らすような感覚。ただ、モニター系のようにカチッとしすぎず、高域ラインが少しウェットな余韻がありますね。
アナログ感や昔懐かしの温かみのようなものは少なめですが、とても現代的な音でフレッシュかつ高解像度で鳴らしてくれます。
前機種のDX170は同じような音の傾向でありつつも、少し雑味があってパワーのある音でした。
DX180になって全体的に音の見渡しが良くなり、DX260系統のような雑味の少ない高解像度サウンドに近づきましたね。
DX260と比べると、さすがに粒立ちの良さや解像度感は全体的に上。DX260の方がもっと一音一音の音の粒子まで感じ取れそうなほどの解像度感の高さがあります。ただ、レンジに大きな差はないように感じました。
ホントDX260の弟分という感じの音ですね。この価格+Android搭載機としては十分すぎるくらい音が良いですよ。
同価格帯のShanling M3Ultraよりもまた一歩上の実力はあると思います。
DC-Eliteと比べると?
78000円という価格だと、ドングルDACとしてはバケモノと評した「DC-Elite」とほぼ同じ価格帯なんですよね。
どちらを選ぶべきか悩ましい方も多いと思いますが、単純な音質だとDC-Eliteの方がボクは良く感じました。
音の丁寧さや描写の細かさだとDX180の方が上のようにも感じましたが、DC-Eliteはそれ以上に音のレンジが広く音に厚みがあり、全体的に凄みのあるダイナミックな音のように感じました。
どちらが「音が良い」と感じるかは人次第だと思いますが、ボクはDC-Eliteの方が一聴してイイっと感じましたね。
ただ、DC-Eliteはスマホのバッテリーや利便性を犠牲にする必要があるので、スマホとは独立させて運用させたい場合はDX180の方がおすすめです。
DX180をスマホ代わりに使って、DC-Eliteに繋いで使えば、スマホの利便性も悪くせずに音の違いも楽しめるし一石二鳥だと思うんですけど、いかがでしょうか。
デジタルフィルターとFIRフィルターで音の傾向を変えられる
さらにDX180の面白いところが、デジタルフィルターとFIRフィルターの2つのフィルターを掛け合わせて、音の傾向を変えられるという点。
こちらもDX260と同じような仕様ですね。
デジタルフィルターはデジタル信号をアナログ信号に変換する際に使用され、再生される音の質感や細部を調整する役割。
そして、FIRフィルターは入力信号に対して一定の時間遅延をもたらしながら、特定の周波数成分を強調または減衰させることで信号を加工する役割を持ちます。
それぞれ以下のような種類があります。聴感上の音の傾向も記載してみました。
- Fast Roll OFF
→解像度が高く、シャープでクリアな音質 - Short Delay Slow Roll Off
→自然で滑らかな音でボーカルラインが一番映える - Short Delay Fast Roll Off
→クリアかつ自然な音 - Slow Roll Off
→暖かみのある自然な音 - NOS(Non-Oversampling)
→アナログ感のあるエモい音
- Normal
→解像度重視 - 2X(2波形目が1クロックずれたものが出力)
→Normalと比べてほんの少しまろやかな音に
FIRフィルターの音の変化はわかりにくいのですが、デジタルフィルターは他のDAPと比べても変化が大きいように感じました。
どの設定がおすすめかは、合わせるイヤホンや音の好み次第なので一概には言えませんが、Performer 8でAdoを聴いていた時は「Short Delay Slow Roll Off +Normal」が好みでしたかね。
こんな感じでiBassoの音をベースにしつつ、好みの音の傾向にわずかに変えられるのもDX180の強みです。
ストリーミングの対応は?
ストリーミングの対応もチェックしてみましたが、Apple Music、Amazon Music、Spotify、どれも対応していましたね。
Amazon Music でも192kHz/24bitの音源も問題なく再生できていました。
ちなみにシステムレベルでSRC回避ができているため、Amazon Music HDなどサードパーティーアプリでも192kHz / 24bitで再生できていました。
ただ公式では、「サードパーティー製のアプリの動作を保証するものではない」とは謳っているので注意が必要ですが、まあ今のところは問題ないかとは思います。
操作性は?
操作性は”DAPとしては”という前提ではありますけど、とても良い方だと思います。なんだったら上位モデルのDX260よりもサクサク動きますよ。
Apple Musicだと、ほぼ引っかかりを感じないくらい滑らかに動作しますね。検索バーに文字入力してもカクつきがほとんどありません。
Spotifyも問題なしですね。
Amazon Musicはジャケットが読み込まれた瞬間は重くなりますが、読み込まれた後は引っかかりなくサクサクスクロールできますね。ただ、検索バーに入力しているときはカクつきますね。
その他、ゲイン設定やフィルターの設定を変更したいときは、画面上部から下にスライドするとメニューバーが表示されて、1タップで設定の変更も可能です。
ゲインやフィルターは変えがちなので、メニューバーへのアクセスが良いのはありがたいです。
USB-DACとしても使いやすい
純正アプリの「MANGO Player」から「USB-DACモード」をONにしてパソコンにUSB接続すると、DACとして認識されるようになります。
USB-DACモードでもDX260側でフィルターやゲインの調整もできるのも便利です!
また、上部にUSB-C端子があるため、DACとして使っている間も画面が逆転せずに、そのまま手元で操作ができますね。
Bluetoothレシーバーとしても使える
USB-DACだけとしてではなく、Bluetoothレシーバーとしても使用できます。
試しにiPhoneでAAC接続で外で使ってみましたが、Bluetoothにしてはノイズ感が少なくなかなか緻密な音で鳴らしてくれるじゃないですか。意外とアリ。
Bluetoothだと基本的に音質は劣化してしまうので、DX180単体で聴く方がやはり音質は良いのですが、スマホ操作で気軽に音楽を聴きたい時には普通にアリだと思いました。
ただ、Bluetooth接続時のみ音量調整の振れ幅が大きいですね……。ちょっとボリュームを触っただけでもけっこう音質が大きくなります。あと受信はLDACに非対応です。
その他気になる点は?
その他気になる点ですが、使っていない間に自動的に電源がOFFになる「スリープタイマー機能」がついていないことですかね。
上位モデルのDX260をしばらく使っていくうちに気になったポイントです。
この機能がないと電源を消し忘れたときに、いざ使おうと思った時にバッテリーがなくなっていることが多いんですよね。
iBassoに不満点を伝えると、わりと対応してくれることが多かったりするので、こちらもフィードバックをして解消されることを祈っております。
iBasso DX180 まとめ
総合評価
4.9/5
DX180
- Android搭載&7万円台としては音が良い
- ノイズ感が少ない
- デジタル+FIRフィルターでさまざまな音の傾向にできる
- 出力もなかなか高め
- 液晶がとてもキレイ
- 付属品が豊富
- DAPとしては操作性がいい
- スリープタイマーがない
- エントリークラスとしては筐体がやや大きめ
4.4
音質
4.0
携帯性
4.5
拡張性
4.6
利便性
- 予算15万円前後でDAPを探している
- 高解像度でノイズの少ないフレッシュな音が好み
- ストリーミング、内蔵音源どちらも使う
- 音の傾向を好みに変えたい
エントリークラスのストリーミングサービスが使えるDAPなら、DX180はかなりおすすめですよ。
今までのiBassoのエントリーの中で比べても、音質・操作性・価格、それらのバランスがとても良くできた製品だと思います。
他社の4〜6万クラスのストリーミング対応DAPと比べると、筐体がちょっと大きいですけど、音質・操作性は上だと思いますし、予算が許す限りは超おすすめです。
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