こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回はAstell&Kernより、DACを8基も積んだ10万超えでありつつもポケットサイズのコンパクトなDAP「PD5」をレビューしていきます。
ポジション的には以前「声DAP」として話題になった「A&norma SR35」の実質的な後継機にあたるモデルです。価格はメーカー発表で税込176,000円、専門店では16万円前後で販売しています。

- Cirrus Logic CS43198を8基搭載したOcta DAC構成
- Octa DACとQuad DACを切り替えられるデュアルドライブモード
- Quad DACモードで最大約28時間の連続再生
- 周囲の騒音を検知して音を補正する新機能「EnviroTune」
- 4.4mmバランスは最大8Vrmsの高出力
- 約198gのアルミボディに4.1インチ曲面タッチディスプレイ
- Full Android OS+Octa-core CPUでストリーミングも快適
- ADPでストリーミングもビットパーフェクト再生
使ってみた感想ですけど、これかなり良いですね。
音質は良いし、フラット系のサウンドでバランスがとても良くていろんなイヤホンに合わせやすいし、動作も軽いし、バッテリーも長持ちさせられるし、何より10万円超クラスの音質でありながら、サイズはエントリークラス並みにコンパクトでポータブルしやすいんですよ。
こういうのが欲しかった!って感じの要素が絶妙なバランスで詰め込まれています。
今回はこちらのPD5をガッツリ使い込んでみたので、どれほどの実力か検証していきましょう。
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Astell&Kern PD5 外観・付属品
それではPD5を開封して、外観をチェックしていきましょう。


- PD5専用TPUケース
- USB Type-C to Type-Cケーブル
- 画面保護シート
- microSDカードスロットカバー
地味にうれしいのがTPUケースが最初から付属している点。PD20のときは「30万もするのにケース別売りかい!」とボヤいていましたが、PD5はちゃんと入っています。

ケースはドイツ製のTPU素材で、透明度が高く安っぽさもありませんし、本体のデザインを邪魔しません。
UV安定剤入りで黄ばみにくいとのこと。ボタンの押し心地も損なわれていないので、基本はケースに入れっぱなしで良さそうです。
本体はこちら。小さい!軽い! 片手にスッと収まるサイズ感です。

シルバーカラーのアルミニウム筐体で、デザインコンセプトは「Grip Control」。角張りすぎず丸すぎず、片手で握ったときのグリップ感がちょうどいいです。

右側面には音量調整用のホイールと、

左側には再生停止 / 曲送り / 曲戻しの物理キー。

ホイールは少し大きめの音でコリコリと回ります。安っぽさのようなものはないですけど、どうせだったらマルチファンクションボタンとしても兼用してほしかったかな。

本体上部には電源ボタンと、EnviroTune用の内蔵マイクが配置。マイクがあるDAPって新鮮というか斬新ですね。
天面の出力端子は、3.5mmアンバランスと4.4mmバランスの2つ。SR35のように光デジタル出力はありません。

底面にはUSB-C端子とSDカードスロットが並んでいます。

ディスプレイは4.1インチの曲面タッチスクリーン(720×1280)。SR35の3.6インチから一回り大きくなって、ストリーミングアプリの操作もしやすくなりました。

背面はシンプルなアルミ一枚板。
PD20やSR35と比較するとこんな感じ。PD20よりかなりコンパクトですね。

重量は約198g。SR35(約184g)より少し重く、PD20(約313g)より100g以上軽いです。これくらいの大きさ、重さが一番ポータブルしやすくてありがたいんですよね。

Astell&Kern PD5 概要・スペック
スペックは以下のとおりです。比較として、同じPDシリーズの上位機「PD20」と「PD10」を並べてみました。
| モデル名 | Astell&Kern PD5 | Astell&Kern PD20 | Astell&Kern PD10 | A&norma SR35 |
|---|---|---|---|---|
| カラー | Silver | Silver | Silver / Black | Charcoal Gray |
| 本体素材 | アルミニウム | アルミニウム | アルミニウム | アルミニウム |
| DAC | Cirrus Logic CS43198×8 (Octa DAC) | ESS ES9027PRO×4 (Quad DAC) | AKM AK4498EX×1 + AK4191EQ×1 | Cirrus Logic CS43198×4 (Quad DAC) |
| DACモード / アンプ | Octa / Quad 切替(デュアルドライブモード) | トリプルアンプ (Class AB / A / Hybrid) | シングル | Quad / Dual 切替 |
| 対応サンプリングレート | PCM最大 : 384kHz (16/24/32bit) / DSD最大 : DSD256 | PCM最大 : 768kHz (16/24/32bit) / DSD最大 : DSD512 | PCM最大 : 768kHz (16/24/32bit) / DSD最大 : DSD512 | PCM最大 : 384kHz (16/24/32bit) / DSD最大 : DSD256 |
| アウトプットレベル | [Octa] アンバランス 4Vrms / バランス 8Vrms [Quad] アンバランス 3Vrms / バランス 6Vrms (無負荷) | アンバランス 5Vrms / バランス 10Vrms (無負荷) | アンバランス 5.5Vrms / バランス 11Vrms (無負荷) | [ハイゲイン] アンバランス 3.1Vrms / バランス 6Vrms (無負荷) |
| S/N比 | 125dB / 129dB | 124dB / 127dB | 129dB / 132dB | 127dB / 130dB |
| THD+N | 0.0006% / 0.0006% | 0.0003% / 0.0004% | 0.0003% / 0.0003% | 0.0005% / 0.0006% |
| 出力 | 3.5mmアンバランス / 4.4mmバランス | 3.5mmアンバランス(光デジタル兼用) / 4.4mmバランス | 3.5mmアンバランス / 2.5mmバランス / 4.4mmバランス | 3.5mmアンバランス(光デジタル兼用) / 4.4mmバランス |
| OS | Full Android (Google Play対応) | Full Android (Google Play対応) | Full Android (Google Play対応) | AK独自OS |
| ディスプレイ | 4.1インチ 曲面 (720×1280) | 6インチ フルHD (1080×2160) | 6インチ フルHD | 3.6インチ (720×1280) |
| 内蔵メモリ | 64GB | 256GB | 256GB | 64GB |
| Bluetooth | V5.3 (aptX HD / LDAC / LHDC) | V5.3 (aptX HD / LDAC / LHDC) | V5.3 (aptX HD / LDAC / LHDC) | V5.0 (aptX HD / LDAC) |
| バッテリー | 4,000mAh | 5,770mAh | 5,050mAh | 3,150mAh |
| 再生時間 | 最大約28時間 (Quad) / 約15時間 (Octa) | 約14時間 | 約15時間 | 約20時間 |
| 充電時間 | 約2.5時間 (PD 3.0) | 約4時間 (PD 3.0) | 約4時間 (PD 3.0) | 約2.5時間 (PD 3.0) |
| サイズ (W×H×D) | 69.7 × 119.7 × 16.1 mm | 77.5 × 155.7 × 17.3 mm | 75.4 × 149.5 × 17.3 mm | 63.5 × 108.3 × 18.2 mm |
| 重量 | 約198g | 約313g | 約435g | 約184g |
| 価格(税込) | 176,000円(市場想定16万円前後) | 297,000円 | 275,000円 | 109,980円 |
注目はやはり、この価格帯でDACを8基積んできたという点。PD20・PD10の半分ほどのサイズと重量で、しかもQuad DACモードなら再生時間は約28時間と、上位2機種の倍の長さです。
一方でPCMは384kHzまで、光デジタル出力なし、内蔵メモリは64GBと、スペックの数字だけ見ると上位機ほどではありません。
出力は4.4mmバランスで最大8Vrms(Octa DAC時)。SR35のハイゲイン6Vrmsから一段上がっていて、このサイズとしてはかなりパワフルです。
Astell&Kern PD5 レビュー
デュアルドライブモード|Octa DACとQuad DACを切り替えられる

まずはPD5の目玉、デュアルドライブモードから。設定画面からOcta DACとQuad DACをワンタップで切り替えられます。
それぞれの傾向はこんな感じ。
- Octa DAC:8基フル稼働。解像度と空間の広さが一段上がって、レンジが広く、音が太く、前に出てくる。再生時間は約15時間。
- Quad DAC:4基で動作。SR35っぽいバランスの取れたナチュラルで滑らかな音。再生時間は約28時間。
聴き比べるとOcta DACの方が明らかに音の密度が高くて、躍動感もあります。
ただQuad DACも決して「省エネモード」的なショボい音ではなく、SR35のQuad DACがそのまま上質になったような音で、アコースティックや女性ボーカルものはむしろこちらの方が聴き疲れしにくい印象。
音とバッテリーのトレードオフを自分で選べるのは、こういう小型DAPだとかなり実用的な機能だと思います。
EnviroTune|騒音に合わせて音を補正してくれる新機能

PD5の新機能「EnviroTune」は、本体上部の内蔵マイクで周囲の騒音をリアルタイムに分析して、騒音でかき消されがちな帯域を自動で持ち上げてくれる機能です。ノイズキャンセリングではなく、あくまで音楽側を補正します。
実際に電車の中で試してみると、走行音に埋もれやすい中低域〜中域がじわっと持ち上がって、音量を上げなくても低域が埋もれるような感覚が少なめ。
騒がしい環境であればあるほど、その違いはわかりやすく、かといって急にEQが切り替わるような不自然さもなく、かなり自然に音を補正してくれます。
静かな室内だとほぼ何も起きないので、常時ONにしておいても問題なし。ただし対応音源はPCM 192kHz/24bitまでなので、DSDやそれ以上のハイレゾ音源を聴くときは自動的にOFFになります。ストリーミングアプリでもちゃんと動作しますね。
正直「DAPに必要なの?」と最初は思いましたけど、電車内など騒がしい環境で使ってみると地味に便利ですよこれ。ノイキャンがついていない有線イヤホンでも中低域ラインが電車の走行音に負けにくくなります。
どんな環境でもフラットな特性で聴きたいんだ!って方はOFFにしておいた方がいいとは思いますけどね。
音質|SR35の声の質感にPDシリーズの解像度と密度が加わった
で、本題のPD5の素の音質ですが、価格に対しては大体並クラス。ただ、このコンパクトさを考えるととても良い方だと思います。
このポケットサイズで15万超クラスの音を気軽に持ち運べるのが一番の強みだと思います。
検証環境は以下のとおりです。
- イヤホン:ゼンハイザー IE 900(バランス接続)
- ヘッドホン:TAGO STUDIO T3-01(バランス接続)
- 設定:Octa DAC / EnviroTune OFF / DACフィルター Fast Roll-Off
音の特徴は次のとおりです。
4.7
音質
音の傾向はニュートラル〜わずかにウォーム。SRシリーズのナチュラルで声の質感に優れた傾向はそのままに、PDシリーズ特有の解像度の高さと密度が加わった音のように感じました。
PD20のようなカチッとした硬質系ではなく、PD10ほどウォームでもない。AKらしい高解像度でありつつ、ナチュラルに聴かせるSRシリーズの血筋を感じられます。
カチッと系のDAPよりも、ナチュラル系のサウンドの方が好みなのでありがたいです。
SR35と同じく、とにかくボーカルの質感が良く、息遣いや声の消え際まで余さず描写してくれてますね。ボーカルのクリアさも一段と上がったように感じます。
ボーカルをメインで引き立たせないゼンハイザー IE 900で使っても、ボーカルがかなり映えるようになります。
また、SR35と比べると、声だけでなく楽器隊の音までフォーカスした鳴り方で、各音の解像度も高く、全体の情報量が増えて濃密になったような印象です。
SR35よりも高域はよりクリアに鋭く伸びて、低域にも躍動感が生まれて重厚に。レンジもより広くなり、ベースラインの輪郭も掴みやすくなりました。
ナチュラル系でありつつレスポンスもとても良く、最近流行りのR2R系DAPのようなモッサリ感もなく、細かな音までカチッとさせすぎずに拾い上げていきますね。
出力面でもバランス8Vrmsはこのサイズとしては十分すぎるパワー。T3-01のようなヘッドホンでも余裕があり、高感度IEMでもホワイトノイズはほぼ感じません。
得意なジャンルはポップス、アニソン、女性ボーカル全般。YOASOBIや星野源あたりの最近のチャート曲は特に相性が良く、音数の多い曲でもゴチャつかないですね。
クールで分析的な高解像度を求めるならPD20、ボーカルの質感とナチュラルさを重視するならPD5という選び方が良いと思います。
もちろん「音質」としてはPD20の方がいいですが、音の好みはボクはPD5派ですね。一昔前のラインナップでもSE300よりSR35の方が好きだったんですよね。
DACフィルターとDARアップサンプリング

PD5には4種類のDACフィルターが搭載されていて、音色の傾向を微調整できます。ボクが試した中では「Fast Roll-Off」が一番見通しが良く、ボーカルの輪郭がハッキリ出る印象でした。
また、アップサンプリング機能のDAR(Digital Audio Remaster)も搭載。PCM変換(最大384kHz)とDSD変換(DSD128)のどちらかを選べます。
PCM変換はモヤ感が取れて輪郭がわかりやすくなる方向、DSD変換はアナログライクに一体感が出る方向。例によってボクはこの手の機能はOFF派なんですが、PD5のDSD変換はジャズやクラシックとの相性が良くて、ジャンルによってはONもアリだと思いました。
クロスフィード機能も搭載
イヤホンの定位をスピーカーのようにする「クロスフィード機能」も搭載しています。
片方のチャンネルの信号の一部を反対側にミックスして、頭の中ではなく前方に音像を作る機能。長時間リスニングで聴き疲れが気になる人は試してみてください。ライブ音源との相性も良いです。
Octa-core CPUで動作はそれなりにサクサク

OSはFull Android OSで、Google Playストアから自由にアプリをインストールできます。Apple Music、Amazon Music、Spotify、Qobuzなど主要なストリーミングサービスはひと通り動きました。
CPUがOcta-coreになったおかげで、SR35ではモッサリしていたストリーミングアプリの動作が、ストレスの溜まらない程度には軽快になりました。Amazon Musicも普通に使えます。
独自のADP(Astell&Kern Direct Path)技術でAndroid OSのサンプリングレート制限(SRC)を回避しているので、ストリーミングでもビットパーフェクト再生が可能です。
ストリーミングメインで使う場合でもおすすめです。
拡張性|AKシリーズおなじみの便利機能はひと通り搭載
- USB-DAC機能:PCに接続して据え置きDACとして使える
- BT Sink:Bluetoothレシーバーとして使える
- AK File Drop:Wi-Fi経由で音楽ファイル転送
- AK Connect:DLNAネットワークオーディオ対応
- AirPlay / Roon Ready / Qobuz Connect:ネットワーク再生もひと通り対応
- USBデジタルオーディオ出力:外部DACへのトランスポートとしても使える
コンパクトなサイズながら、拡張性は上位機と遜色なし。ストレージが64GBなのは少し物足りませんが、microSDが最大2TBまで対応しているので実用上は問題ないでしょう。
Astell&Kern PD5 まとめ
総合評価
4.7/5
Astell&Kern PD5

- SR35の声の良さを受け継いだナチュラルな
サウンドに、Octa DACの密度が加わった - Octa / Quad DACを切り替えて
音とバッテリー持ちを選べる - Quad DACなら最大約28時間の長時間再生
- このクラスではトップレベルにコンパクトな筐体
- 8Vrmsの出力でヘッドホンの駆動にも余裕あり
- EnviroTuneのおかげで環境音に対して
中低域が埋もれにくい - ストリーミングもビットパーフェクト再生
- 細かな設定項目が豊富
- TPUケースが最初から付属
- アンプ切り替えなど音を作り込む機能は
PD20より少ない
4.7
音質
4.7
携帯性
4.0
拡張性
4.7
利便性
- ポケットに入るサイズで10万円超クラスの音が欲しい
- カチッと系よりナチュラル系のサウンドが好み
- ボーカルの質感を重視してDAPを選びたい
- ストリーミングアプリをメインに使う
- 一日中充電を気にせず使いたい
音質だけを切り出せば価格相応ですが、「コンパクトで持ち運びがしやすく、ナチュラルな音でイヤホンを選ばず、バッテリーの持ちも良い」という、DAPに本当に欲しかった要素を絶妙なバランスで詰め込んできた点がいちばんの魅力かなと思います。10万円超クラスの音をこのサイズで持ち歩けるのはPD5の強みです。
PD20のような尖った機能や上位機の解像度はないですが、SR35のようなサイズ感でストリーミングもサクサク動くDAPが欲しい、16万円前後でポータブル性と音質のバランスが取れたDAPを探しているという方は、PD5は必ず候補に入れてほしい一台です。
以上!Astell&Kern PD5のレビューをお送りしました。




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