こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回はワイヤレスでも使えるDAC。
日本でも人気の高いオーディオメーカー「Astell&Kern」から、ワイヤレスとワイヤード両対応のBluetooth DACアンプ「AK HB1」をレビューします。
- Bluetooth DACとUSB-DAC、ワイヤレスとワイヤード両対応のDAC内蔵ポータブルアンプ
- ESS ES9281AC PRO DACを搭載
- PCM384kHz/32bit、DSD256のネイティブ再生対応
- 3.5mmと4.4mmバランスのデュアル出力対応
- マルチポイント接続対応(最大2台)
- 「AK Control」によるEQ変更やDACフィルター変更等の設定可能
AKサウンドをBluetoothで高音質で楽しめるだけでなく、有線でドングルDACとしても使えるとか強くない?
3.5mm / 4.4mmどちらも対応で、アプリやマルチポイント対応など利便性もかなりのもの。
“同社初のBluetooth対応DAC”とか言いかけたけど、「AK XB10」という2020年に発売された時代を先取りしすぎたBluetoothDACがありましたね。あの製品も好きだった。
今回はAK HB1をアユートさんから先行で提供いただいたので、実機を使って検証していきます。
総合評価
4.5/5
AK HB1
- Bluetooth接続とは思えないノイズの少なさ
- 有線接続でさらに高音質
- ホワイトノイズが少ない
- 3.5mm、4.4mm接続どちらも使える
- カーオーディオでも使いやすい
- 本体も小さくて非常に軽量
- 液晶画面がなく本体のみで設定を変えられない
- ゲイン設定がない
- ボリュームノブの動作が軽い
4.5
音質
4.5
携帯性
4.5
拡張性
4.5
利便性
Astell&Kern AK HB1 外観・付属品
Astell&Kern AK HB1のパッケージはこちら。
AKシリーズらしくスタイリッシュな感じ。
開封するとこんな感じ。
- USB Type-Cケーブル
- Type-Cデュアルノイズシールドケーブル
- Lightningデュアルノイズシールドケーブル
- マニュアル
ケーブルはType CとLightning、2本のショートケーブルが付属します。
このケーブルはノイズを最小限に抑え、より鮮明なサウンドを提供するデュアルノイズシールドケーブルを採用しています。
ケーブル全体をアルミフィルムで包むことでノイズを遮断し、電源ケーブルの周囲にもシールドを施し錫メッキ銅線を編み込むことでノイズ耐性を高めています。
付属品でありつつ、かなり質感は高そうです。
本体はポリカーボネートを採用した筐体で、持ってみた感じかなり軽量ですね。
このデザインには光と影の相互作用で知られる安藤忠雄氏による建築の傑作「光の教会」からインスピレーションを得ているとのこと。
ボリューム部はアルミニウムを採用。かなり軽めのボリューム感でカリカリと動くような感じ。
SR35、AK HC2と比べるとこんな感じ。
ちなみにAK HB1、BTR7、GO Bluと比較するとこんな感じ。
ちょうどBTR7とGO Bluの間くらいの大きさですね。
ヘッドホンジャックは3.5mm、4,4mmジャックが搭載。抜き差ししてみましたが質感は悪くなさそう。
底面には充電兼デジタル接続用USB-C端子が備わっています。
ボタンは側面に3つ備わっています。
上から再生停止などを行う「メディアボタン」「ペアリングボタン」「電源ボタン」となります。
最後に重さは約40g。
見た目に対して本体重量はかなり軽め
AK HB1、AK HC2、AK HC3のスペックを比較
項目 | AK HB1 | AK HC2 | AK HC3 |
---|---|---|---|
DAC | ESS ES9281AC PRO | Cirrus Logic CS43198×2 (Dual-DAC) | ESS Technology ES9219MQ×2 (Dual-DAC) |
Bluetoothバージョン | 5.0 | – | – |
Bluetoothコーデック | SBC, AAC, aptX™ HD, LDAC | – | – |
Bluetoothプロファイル | A2DP, AVRCP, HFP | – | – |
対応サンプリングレート | PCM : 384KHz/32bit DSD : DSD256(11.2MHz/1bit) ステレオ | PCM最大 : 384KHz/32bit, DSD最大 : DSD256(11.2MHz/1bit) ステレオ | PCM最大 : 384KHz/32bit, DSD最大 : DSD256(11.2MHz/1bit) ステレオ |
入力 | USB Type-C (UAC 2.0 / UAC 2.0 切替可能) | USB Type-C / Lightning(付属変換コネクター使用) | USB Type-C / Lightning(付属変換コネクター使用) |
出力 | 3.5mmアンバランス出力, 4.4mmバランス出力 | 4.4mm5極バランス出力 (GND接続あり) | 3.5mmアンバランス出力 (CTIA規格4極マイク・コントローラー入力対応) |
アウトプットレベル(無負荷) | 2Vrms(アンバランス) 4Vrms(バランス) | バランス 4Vrms (無負荷) | 2Vrms (無負荷) |
出力インピーダンス | 2.5Ω(アンバランス 3.5mm) / 2Ω(バランス 4.4mm) | 1.5Ω | 2Ω |
周波数特性 | ±0.135dB (20Hz20kHz), アンバランス / ±0.136dB (20Hz20kHz), バランス | ±0.011dB (20Hz20kHz) バランス, ±0.145dB (20Hz70kHz) バランス | ±0.013dB (20Hz20kHz), ±0.020dB (20Hz70kHz) |
S/N比 | 117dB @ 1kHz, アンバランス / 118dB @ 1kHz, バランス | 122dB @ 1kHz, バランス | 118dB @ 1kHz |
クロストーク | -112dB @ 1kHz, アンバランス / -112dB @ 1kHz, バランス | -146dB @ 1kHz, バランス | -130dB @ 1kHz |
THD+N | 0.0005% @ 1kHz, アンバランス / 0.0005% @ 1kHz, バランス | 0.0004% @ 1kHz, バランス | 0.0005% @ 1kHz |
IMD | 0.0003% 800Hz 10kHz (4:1), アンバランス / 0.0003% 800Hz 10kHz (4:1), バランス | 0.0003% 800Hz 10kHz (4:1) バランス | 0.0002% 800Hz 10kHz (4:1) |
充電時間 | 約1.5時間 | – | – |
再生時間 | 約6時間 (AAC接続時) | – | – |
メーカー保証 | 本体1年 / 付属品90日 | 本体1年 / 付属品90日 | 本体1年 / 付属品90日 |
スペックだけでみると、DAC単体としての性能はAK HC2やHC3の方が上のようですね。
AK HB1の強みは有線・Bluetoothどちらも使えつつ、3.5mm、4.4mm接続のどちらにも対応しているる点でしょうか。
ただ、再生時間がAAC接続時でも約6時間という点が少し気になりますね。
AK HB1のその他の機能
また、UAC2.0/UAC1.0切替機能搭載で、Nintendo Switchなどの家庭用ゲーム機との接続にも対応しています。
また、充電モードの切り替えも可能で、オンにするとUSB接続時にバスパワーで駆動し、オフにするとAK HB1のバッテリーのみで駆動するようにもできます。
なのでスマホ側のバッテリーをチューチューさせることもありません。スマホ側の電力を吸いすぎてバッテリーが切れることもありますしね。
充電モードは電源ボタンを2回連続で押すと切り替わります。
また車のエンジンを入れると、自動で電源のオン/オフを行うカーモード機能も搭載。
カーオーディオをAUXで接続して聴いている方にAK HB1も活用できそうです。
Astell&Kern AK HB1の音質について
Astell&Kern AK HB1の音質ですが、Bluetooth接続とは思えないほどのノイズの少なさが強みのように感じました。
今回の検証ではXperia 5ⅣでLDACで検証しています。
音の特徴は次のとおりです。
5万円以下のBluetoothアンプの評価軸
4.5
音質
音の傾向はAKシリーズにしては珍しく柔らかめでナチュラルさの感じる音作りで、中低域ラインに少し付帯音を加えて豊かさを持たせるような鳴らし方乃ように感じましたね。
パキッとした解像度感や左右にクッキリと分離するような感覚がなく、音源が持つ特性を引き出して自然に鳴らすような感覚です。
AK HC2の方は輪郭をなぞるようなクッキリとした音で、どちらかというとAK HC3や、SR35のような感覚に近いですかね。
同価格帯のBluetoothレシーバーと比べても、音の傾向は少しウォームで柔らかめに感じますね。バランス接続であってもアンバランス接続っぽい鳴らし方です。
それ以上に驚いたのはノイズ感の少なさで、Bluetooth接続特有の音のザラつきやノイズ感が少なくて、とてもBluetooth接続とは思えないほどの緻密な音を鳴らします。
ボーカルの明瞭さや再現力は他のAKシリーズ同様に高く、アニソンなどのボーカルものとの相性は相変わらず良いですね。
ホワイトノイズも少ない
また、イヤホンで接続しても「サー」っとバックで薄く鳴るホワイトノイズも少ない印象でしたね。
ホワイトノイズが苦手な方も安心。
出力も申し分なし
出力もアンバランス接続時で2Vrms、バランス接続時で4VrmsとAK HC2、HC3と同じ数値となっているため、出力も申し分なしです。
インピーダンス300ΩのHD 660 S2に接続して聴いてみましたが、もう少し出力は欲しいと思いつつも鳴らせている感
HD 800 Sのような完全に据え置きクラスのヘッドホンでもない限りは問題なく鳴らせるほどのドライブ力はあります。
有線接続で聴くと
USB接続で有線で聴くと、ノイズ感の少なさはそのままに情報量が増え、解像度感さらにアップしたような感覚ですね。音の傾向は変わらないです。
他のBluetoothレシーバーと比べても、有線接続時の音質の向上幅が大きく感じましたね。
ドングル型DACメインだけで使う場合は費用対効果は正直悪いですが、
「屋外でスマホをフリーにして気軽に音楽を聴きたい時はBluetoothで使う」
「自宅やカフェなどゆっくりとできる環境で高音質で聴きたい時は有線で使う」
といった二刀流の使い方ができるのもAK HB1の強みです。
AK HC2、AK HC3とどっちがいい?
有線接続で使うならAK HC2やAK HC3とどっちが良い?と気になっている方もいるかと思いますが、“音質だけ”にこだわるなら、ボクはAK HC2やAK HC3の方が良いと感じましたね。
DACチップの差などもあるかもしれませんが、やはりAK HC2、HC3の方が実力は一歩上です。
AK HC2・HC3の方が解像度感が全体的に高く、音も太めで情報量も上のように感じます。
AK HB1はBluetoothが使えることと、3.5mm / 4.4mm両方使えることが強みなので、音質が良いだけではなく使いやすさにもこだわりたい人におすすめです。
「AK HB1を購入すれば、AK HC2たHC3の音を有線でもBluetoothでも楽しめる!」と考えている人は要注意です。音の質も傾向も別物です。
ただ、音の好みの差もあると思いますので、ナチュラルな音が好みならAK HB1の方が好きという方もいると思います。
AK PA10との組み合わせもおすすめ!
僕の大好きなA級アナログポータブルアンプ「AK PA10」と組み合わせで使うのは相当おすすめです!
AK PA10を使っている人はぜひこの組み合わせのためだけに買ってほしいレベル。
AK HB1の本体軽量はかなり軽いので、重量的には全然プラスにはなりませんし、GND分離をした4.4mm5極にも対応しているので、そのままAK PA10に接続してBluetoothで気軽に聴けます。
ただ、3.5mmのアンバランス接続の方がどちらも”らしさ”を出せるような感覚で、こちらの方が好みでしたね。
AK HB1はノイズ感が少ないですし、Bluetooth接続時でも有線に匹敵するかのような音でAK PA10を気軽に楽しめるようになります。
AK PA10は今年レビューしたポータブルアンプの中でも2023年ベストレベルで良かったので、AK PA10まだ聴いたことない人はぜひ聴いてみてほしい。
アプリでできることは?
アプリでできることは次のとおりです。
- Bluetoothの接続優先度の変更
- バッテリー残量の確認
- 充電モードのON・OFFの切り替え
- イコライザー設定
→プリセットはなくカスタムEQのみ - カーモードのON/OFF
→自動車と有線接続されている場合、エンジン点火に合わせてDACがON・OFFされる - 自動電源オフ設定
→無効〜60分から10分刻みで設定可能 - DACフィルター設定
→3種類から選択可能 - USB Audio Calss設定
→UAC1.0、UAC2.0の切り替え - 取扱説明書の確認
カスタマイズできる項目はそれなりに多めなので、アプリはとりあえずダウンロードしておいた方が良いかと。
DACフィルターの変更も試してましたけど、そこまで変化はわかりませんでした。
気になるところ
最後に気になる点をお伝えします。
ゲイン設定はない
アプリでもゲイン設定がないため、イヤホンやヘッドホンに合わせて最適な出力設定を行えません。
ボクの手持ちのイヤホンだと、そこまで高感度のイヤホンは所持していないので気になりませんでした。
人によってはバランス接続時に、ゲインが高すぎると感じるかもしれません。
ボリュームノブが軽い
ボリュームノブが軽くてスルスルと動いてしまうので、音量の細かな調整が難しいですね。
もうちょっと重ためのボリュームの方が調整しやすくて好きでした。
ポケットに入れるときなんかにもボリュームが回ってしまうことがあるので、気になる場合はペアリングボタンを2回連続押すことでボリュームをロックできます。
ディスプレイは非搭載
AK HB1はディスプレイが非搭載のため、本体のみで細かな設定が行えません。
まあゲイン設定ができないので、ディスプレイがなくても設定はそこまで頻繁には変えないかとは思います。
LDAC接続はイコライザーが使用できない
LDAC接続時はなぜかイコライザが使えなくなります。
DACではイコライザーは使わない派なのでボクは気にならないですが、人によっては気になるかもです。
Astell&Kern AK HB1 まとめ
総合評価
4.5/5
AK HB1
- Bluetooth接続とは思えないノイズの少なさ
- 有線接続でさらに高音質
- ホワイトノイズが少ない
- 3.5mm、4.4mm接続どちらも使える
- カーオーディオでも使いやすい
- 本体も小さくて非常に軽量
- 液晶画面がなく本体で設定を変えられない
- ゲイン設定がない
- ボリュームノブの動作が軽い
4.5
音質
4.5
携帯性
4.5
拡張性
4.5
利便性
- スマホの音を高音質化して有線イヤホンを聴きたい
- Bluetooth接続、有線接続どちらも使いたい
- 3.5mm接続 / 4.4mm接続どちらも使いたい
- カーオーディオやアナログアンプに使いたい
Astell&Kern AK HB1は単なるBluetooth対応DACではなく、有線接続、カーオーディオ、ゲームなどマルチな用途に使えるのが強みのように感じました
単純に音質だけを求めるなら、AK HC2やDAPのSR35など使った方が良いと感じましたが、一台である程度の音質で気軽に有線イヤホンを使いたい方にはAK HB1はおすすめです。
マニアックではありますがAK PA10との組み合わせはかなり良いので、アナログアンプのトランスミッター用に気軽に使えるDACを探している人にもおすすめですよ。
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