こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今年のエープリルフールに、Xでこんな画像が投稿されました。
この画像自体はエープリルフールネタなんで実在しないイヤホンなんですけど、実際にFitEarとqdcのコラボとか出たらアツいですよね〜。
とか思っていたら、ホンマに登場しました!
それが今回紹介するqdc × FitEarのコラボによるミドルクラスイヤホン「SUPERIOR EX」!! なんか医薬品みたいな名前。
ただのコラボだけではなく、昨年登場して超話題になった1万円台エントリーモデル「SUPERIOR」の兄弟モデルですよ!
ちなみにEXとは「EXECUTIVE」「EXTRA」「EXPERIENCE」の3つの意味が込められているようです。
主な特徴はこちら
- SUPERIORをベースに本来音楽が持つ広大なダイナミクスの再現に注力したFitEar共同チューニング
- 筐体素材にアルミニウムを採用しサウンドディテールを強化
- オリジナルの銀メッキOFC導体4芯線ケーブルを採用
- 10mm径シングルフルレンジダイナミックドライバー搭載
- 独自の同軸デュアル磁気回路とデュアルキャビティ構造
- 価格は29,700円(e☆イヤホン価格)
代理店のアユートさんも開発に携わっているので、実質3大コラボです。
役割的には、FitEarが音の傾向とチューニング方法のアドバイスなど、qdcがチューニングの特性のチェックや調整など製造周り担当、そしてアユートが筐体の素材選定とケーブルの選定を行なったようです。
各メーカーを知らない人向けに解説しますが、qdcは中国でアーティストが扱うカスタムIEM(イヤモニ)のシェア率の70%を誇るオーディオブランドです。
対して、FItEarは須山補聴器が扱うイヤモニブランドで、テレビとか見ていただいたわかると思うんですけど、日本のアーティストのほとんどがこのFitEarを使っているんですよ。まさに業界の標準レベルで。
ボクが敬愛するBUMP OF CHICKENをはじめ、Adoやずっと真夜中でいいのに。のACAねさんや、Mrs.GREEN APPLEやMr.Childrenなどさまざまなアーティストが実際にステージモニターとして使っています。
ぜひFitEarの制作実績を見ていただきたいのですが、びっくりするくらい著名なアーティストばかりですよ。
今回は2大イヤモニブランドによる共同作「SUPERIOR EX」の詳細をお伝えするとともに、どんな音なのか? 気になる点がないか?などお伝えしていきます。
SUPERIOR EX 概要・外観・付属品
それではSUPERIOR EXの概要をお伝えするとともに、外観や付属品をチェックしていきましょう。
パッケージ
SUPERIOR EXのパッケージはこんな感じ。ちゃんとFitEarのロゴが入っていますよ!
開封するとこんな感じ
付属品
- SUPERIOR EX Cable 3.5mm3極アンバランス、
- qdcTips Soft-fitシリコンイヤーピース:3ペア(S/M/L)、
- ダブルフランジシリコンイヤーピース:3ペア(S/M/L)、
- クリーニングツール
- オリジナルキャリングケース
イヤーピースは通常のシリコンタイプとダブルフランジタイプの2種類が付属。
ハードケースはシンプルなデザイン。
中身はこんな感じ。
本体・ケーブル
本体がこちら。めっちゃシックでかっこよくない? 3万円台という価格でちゃんとFitEarのロゴも入っていますよ!超かっこいい!
筐体には初代SUPERIORとは異なるアルミニウムを採用。いろんな筐体をテストしてチューニングを行ったようですけど、アルミ筐体が一番SUPERIOR EXの特性を活かせたようです。
アルミ筐体によって共振を抑制しつつ、細かなサウンドディテールの強化と低音域に程よい余韻を出すことに成功したとのことです。ちなみに筐体の選定はアユートさん担当のようです。
アルミ筐体でありつつも、qdcということもあって耳の形状に沿ったイヤモニ型の形状になっています。qdcの装着感マジで良いんですよね。
ドライバーには10mm径シングルフルレンジのダイナミックドライバーを搭載。ダイアフラムには真空成膜技術を使用した複合膜を採用。ドライバー部には独自の同軸デュアル磁気回路とデュアルキャビティ構造を採用しています。
ドライバー周りの仕様はSUPERIORと一緒かな? インピーダンス16Ω、音圧感度100dB/mWとスペック周りも同じですね。
そしてSUPERIORのドライバーをベースに、チューニングはFitEarが担当。SUPERIORの特性はそのままに、再生音圧を上げても破綻しにくいようにピークが生じる部分を抑制。本来音楽が持つ広大なダイナミクスの再現に忠直して、より幅広い楽曲へマッチングさせることを目的としたチューニングを共同で施したとのことです。
ケーブルの着脱も対応で、今回も同じく2pinのフラットタイプを採用。qdcは専用の凹凸型のタイプが多いですが、SUPERIORは互換性を高めるためか2pinになっているんですよね。
ノズル部はややくびれが強めですが、他のイヤーピースでも問題なく使えるかと。
SUPERIORと比較するとこんな感じ。
ケーブルは銀メッキOFC導体4芯線ケーブルを採用した専用の「SUPERIOR EX Cable」が付属。初代SUPERIORは高純度無酸素銅(OFC)の4芯線だったんで、素材違いのものになっていますね。
EXのサウンドのトータルバランスを考える上でチューニングと製品コンセプトに合わせてよりダイナミックレンジと深いサブベース再生をユーザーが体感できるよう、複数のケーブルをテストした中から、オリジナルの銀メッキOFC導体4芯線ケーブルを採用したようです。
ケーブルもしなやかでタッチノイズも少なく、取り回し良く使えます。
耳掛け部は形状固定型、コネクタはL字型のフラット2pinタイプになっています。
分岐部は本体カラーと同じ素材感。もちろんアジャスター付き。
プラグは3.5mmのストレートタイプになっていて、
同じ素材のものが4.4mmタイプで販売されています。価格は9,900円と少し高め。
本体とケーブルを装着するとこんな感じ。
筐体の素材からケーブルまで一貫性があって、でとても所有欲を満たしてくれるデザインになっていますね。かっこいい。
SUPERIOR EX レビュー
装着感|さすがイヤモニメーカー
SUPERIOR EXの装着感ですが、初代SUPERIOR同様に素晴らしいの一言ですね。
イヤモニメーカーだけはあって、有線イヤホンのなかでも最高クラスの装着感の良さを提供してくれます。
実際に装着してみるとこんな感じ。デザインがとにかくかっこいい。
前から見てもそんなに飛び出してはいないです。
2〜3時間くらいつけっぱなしで使っていましたが、耳が痛くなることもなく重さも分散できていますし、遮音性もとても高いので電車の中でもストレスなく音楽に浸れます。
qdcってどの製品もそうなんですけど、装着感がめちゃくちゃ良いんですよね。
装着感 | (4.5) |
音質|SUPERIORのドライバーで楽しむFitEarサウンド
SUPERIOR EXの音質ですが、まさにSUPERIO上位機種的なポジションのように見えますけど、SUPERIORからの完全ステップアップ機かといわれるとちょっと違う気もしますね。
FitEarのアプローチも入っていることがわかるようなチューニングに仕上がっています。
- DAP:SR35
- アプリ:Apple Music
- 接続方式:3.5mm接続
- イヤーピース:付属シリコンイヤーピース
- エージング:100時間ほど
SUPERIOR EXの音の特長は次のとおりです。
4.6
高音
4.7
中音
4.7
低音
音の傾向は初代SUPERIORとかなり似ています。少しレンジは狭めですが、中域にフォーカスを当てたパワー型のモニターサウンドという感じ。かといってカチカチのモニターではなく、迫力と少しの余韻感が加えられたリスニングライクなテイストもありますそして、各帯域のアプローチの仕方がFitEarの音になっていますね。
高域は初代SUPERIORの少しモッサリした感覚が薄れ、EXで少し硬質でカチッとした現代的な音になっています。相変わらず弦楽器などの生楽器系は苦手ですが、シンセサイザーやエレキギターなど電子音の表現力は素晴らしいです。
低域はSUPERIORと同じく迫力をしっかりと迫力を感じられるような印象。迫力や広がりは初代SUPERIORの方があるような気がしますが、EXの方がもう少し締まりが良くて広がりを抑えた低域のディテールを捉えた明瞭なサウンドになっていますね。解像度感はやはりEXの方が。
中域はとくにFitEarのアプローチがわかりやすく、ボーカルの距離がSUPERIORより近づいており、よりハキハキとしたクリアな歌声が伝わるようになっています。
他の楽器隊を主張させつつも、ボーカルを軸に聴かせるようなアプローチで、他の楽器隊に目移りさせずにポップスの美味しいところをメインディッシュとして持ってくるような感覚でしょうか。
また、SUPERIORで音が団子になりがちだった中域ラインの分離感も向上していて、各楽器隊の音も聴き分けがしやすくなりましたね。
今回はSR35で試しましたけど、AK PA10を追加してあげても相性がとてもよかったですよ。モニターテイストの音にアナログな音が加わって、より心地よく聞けるリスニングライクなサウンドになります。
邦楽も合うようになった
SUPERIORは邦楽よりも洋楽の方が合うような印象を受けましたが、SUPERIOR EXは洋楽も邦楽も行けるようになったって感じがしますね。得意なジャンルが増えたという印象でしょうかね。
SUPERIORは解像度感よりも音楽の一体感を重視しているような感覚で、ブルーノマーズ」「ダフトパンク」あたりのディスコファンク系とか、「ビリーアイリッシュ」あたりのエレクトロ系サウンドを多用したPOPSや、「Nine Inch Nails」「OASIS」「Rediohead」など90年代のオルタナロックシーンのようなレンジを広げず解像度を重視しすぎないような時代の楽曲との相性がとても良いんですよね。
対してSUPERIOR EXは、SUPERIORをベースにしつつも音の分離感やボーカルの質感を重視したチューニングで、先に述べた洋楽アーティストはもちろん、YOASOBIやAdo、ずっと真夜中でいいのに。、Mrs Green Appleなど2020年代の邦楽シーンにも合わせやすくなったように感じましたね。
SUPERIORからの完全なステップアップではない
ただ、先にも伝えた通りSUPERIORからの完全なステップアップになるかというと、ボクはそうではないと感じました。SUPERIORは古き良き録音環境のままを鳴らせるのに対して、SUPERIOR EXはその録音環境を現代的な音で鳴らすような感覚がありました。
たとえば、ZARDの「Don`t you see!」を聴いてみると、SUPERIORの場合だと高域や低域にフォーカス当てすぎずに、楽曲の旨みが詰まっている中域ラインを中心に聴かせるのに対して、SUPERIOR EXは高域や低域にもフォーカスを当てた音になっています。昔の楽曲だと旨みが詰まっていない箇所も拾ってしまうような感覚でしょうかね。
また、前回のSUPERIORでもおすすめ楽曲として紹介していたゲームサントラの「ニーア・レプリカント / イニシエノウタ/運命」ですが、こちらは初代のSUPERIORの方が壮大で良く聴こえたんですよ。
もちろん音の細部にわたる解像度感はSUPERIOR EXの方がいいんですけど、音の一体感や音が塊としてぶつけてくるような迫力のあるサウンド、あの表現は初代のSUPERIORの方が向いているように感じましたね。
まさに「SUPERIORの筐体でFitEarのチューニングを楽しむイヤホン」という印象でしたね。アユートの営業さんもSUPERIOR EXが上位機種ではなく兄弟機と伝えていたのはこのようなチューニングの違いからだと思われます。
バランス接続をすると?
別売りのバランスケーブルでも試してみましたが、初代と同じくバランス接続してあげた方が化けますね。
全体的に中央に寄っていた音場が左右に広がるようになって、少し団子になっていた音も、一音一音をよりクッキリと感じやすくなりました。
駆動力も上がるおかげか、低音の迫力やスナップ感も増しているような感覚で、弱点を補いつつ長所も伸ばすような印象でしたね。
個人的にはバランス接続は必須レベルかなとは思っていますが、ケーブル単体が11000円とちょっと高いのがネックですね……。
少しでも費用を安くできないかなと思って、初代SUPERIORの方の安いバランスケーブルをEXの方に着けてみましたが、横方向への音の抜け感や、高域の煌びやかさが落ち着いてモッサリとしてしまう感覚がありますね。やっぱりEXケーブルを使った方が良いです。
SUPERIOR EX まとめ
SUPERIOR EXをまとめると以下のとおりです。
総合評価
4.7/5
SUPERIOR EX
- SUPERIORよりも解像度感やレンジの広さが向上している
- 3万円台でFitEarのチューニングを体感できる
- SUPERIORよりもあらゆるジャンルに合わせやすい
- 全有線イヤホン最強クラスの装着感
- 高いビルドクオリティ
- 音場やレンジは狭め
- 4.4mmケーブルが別売り
4.6
高音
4.7
中音
4.7
低音
4.6
解像度
4.6
迫力
5.0
装着感
SUPERIOR EXはこんな人におすすめ
- 予算3万円ほどで高音質の有線イヤホンを探している
- ボーカルものを中心に聴くことが多い
- SUPERIORの音が好みだが、現代的なジャンルも良い音で楽しみたい
- FitEarのサウンドをお手頃価格で体感してみたい
すばらしいビルドクオリティとFitEarのロゴによって所有欲を満たしてくれるだけでなく、音質もまさにqdcとFitEarの掛け合わせのようなチューニングで楽しい音でした。
ベースモデルのSUPERIORと同じく、この価格帯にありがちな”高解像度HiFi”的な音ではないですが、中低域から中高域にかけての「美味しいゾーン」に対する表現力が素晴らしく、またそのゾーンをFitEarのサウンドとして体感できるのも強みです。
初代とアプローチは違うとはいえ、得意とするゾーンも似ているところはあり、「邦楽ポップス」「洋楽ロック・ポップス」などこのあたりとの相性はとても良いかと思います。
本日から解禁で、またe☆イヤホンやヘッドフォン祭などでも体感できると思いますので、ぜひ一度聴いてみてください!
以上! SUPERIOR EXのレビューをお送りしました。
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