こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回はオーディオーメーカー「Shanling」より、なんと世界初! 真空管を搭載したポータブルCDプレーヤー「EC Zero T」を紹介します。

ぶっちゃけね、初めはこの依頼を断ったんですよ。ShanlingのCDプレーヤーってギャップレス再生できないものがほとんどだったから……。CDプレーヤーではギャップレス再生は個人的に必須なんですよ。
一回断ったんですけど、一度ポタフェス大阪で試してから検討することにしたんですけど……。ちゃんとギャップレス再生に対応しているではありませんか。そしてめちゃめちゃ音が良かったんですよ。
これならいける!と思って今回引き受けることにしました。やはり正式に引き受ける前に試すのが一番ですね。
EC Zero Tの主な特徴はこちら。
- 真空管「JAN6418」デュアル構成
- 自社開発24bit R2R DAC「Kunlun(コンロン)」を搭載
- 「Tube Mode」「AB Mode」2つのモード
- 「TPA6120A2」オペアンプデュアル搭載
- USB DACモード搭載
- 大容量5500mAhバッテリー内蔵で4.4mm接続時で約7.5時間再生可能
- Bluetooth 5.3対応でaptX Adaptiveにも対応
- CDリッピング機能
R2R DAC×デュアル真空管という変態構成すぎるポータブルCDプレーヤーですよ。
それ以外にもUSB-DACとして使えたり、Bluetoothの送信にも対応したり、CDリッピング機能もついていたりとなかなかの万能っぷり。
発売日は6月20日で本日6月13日より予約開始、価格は89,100円(税込)とポータブルCDプレーヤーとしてはかなり高価格帯になってきます。
今回はShanlingの代理店のMUSINさんから紹介用に提供いただいたので、実機を使ってどれほどの実力なのか検証していきましょう。
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EC Zero T 外観・付属品
EC Zero Tのパッケージはこちら。価格だけあって高級感はあるけど、EC Miniの方が豪華だった気がしなくもない。

開封するとこんな感じ。


- 充電用ケーブル(USB-A to C)
- 製品保証書
- クイックスタートガイド
本体はEC Miniと比べてコンパクトで、ギリギリ持ち運びができるレベルの「ポータブルCDプレーヤー」っぽくはなりました。

実際にEC Miniと比べるとこんな感じです。EC-Miniと比べるとかなりコンパクトになりましたね。

それでも従来のポータブルCDプレーヤーと比べるとデカいですけどね。
4.4mm接続時で約7.5時間の連続再生ができるバッテリーも搭載しているので、本格的なCDオーディオシステムをどこでも楽しむことができます。
ただ、この価格だし……真空管だし……透明な部分も割れそうだし……家の中とかカフェなど落ち着いた場所での使用限定になりますかね。持ち運ぶことを想定しているのであれば専用のケースも欲しいところ。
前面にはボリュームスライダーと一般的な3.5mmイヤホンジャック、そして4.4mmバランス端子が備わっています。

天面には1.68 インチのディスプレイを搭載。ここからトラックの確認や各種設定が行えます。

右側には真空管「JAN6418」がデュアルで搭載されていることがわかります。TUBEモードをONにするとオレンジ色にほんのり点灯します。

その右側には「停止」「再生 / 一時停止」「ファンクションキー」「曲戻し」「曲送り」キーがそれぞれ搭載。
このファンクションキーを使ってUSB-DACモードへの切り替えや、ローゲインやハイゲインの切り替え、DACモードの切り替え、出力先の切り替えなどができます
CDディスクトレイは上部にパカっと開くタイプになっていますね。

デスク下には設置しにくいけど、一番不具合が起きにくいアナログな手法でいいかと思います。EC Miniのようなスライドしながらシュッと入っていくタイプだと中で詰まったり、うまく取り出せなくなったりすると怖いですからね。
一応代理店に確認しましたが、8cmCDも対応しているみたいです。
左側面には電源ボタン。電源ボタンちっさ……。はじめ、どこにあるか分からんかった……。

右側には物理ボタンの操作をロックするスイッチがありますね。

背面には3.5mm / 4.4mm LINE OUT、DIGITAL OUT、そしてUSB0-DAC用のUSB-C端子と電源入力用のUSB-C端子、一番右側にはバッテリー駆動と電源駆動を切り替えるスイッチがあります。

4.4mm LINE OUTがあるのは珍しいですね。
重さの実測値は669g。EC Miniが1200gほどあるので1/2ほどの重さになりました。うん、ポータブルだ。

スペック
EC Zero T スペック表
項目 | 詳細 |
---|---|
サイズ | 158×150×28mm |
重量 | 約669g |
スクリーン | 1.68インチ LCD |
対応サンプリングレート(USB DAC) | 最大768kHz/32bit、DSD512 |
ゲイン設定 | High / Low |
DAC構成 | 自社開発「Kunlun」24bit R2Rアーキテクチャ |
デジタルフィルター | OS / NOS 切替対応 |
Bluetoothバージョン | 5.3 |
Bluetooth送信コーデック | aptX Adaptive、aptX、SBC |
オーディオ出力仕様(共通)
項目 | 3.5mm出力 | 4.4mm出力 |
---|---|---|
ABモード Low Gain | 57mW@32Ω | 195mW@32Ω |
ABモード High Gain | 158mW@32Ω (EXT DC: 330mW) | 551mW@32Ω (EXT DC: 1220mW) |
TUBEモード Low Gain | 47mW@32Ω | 195mW@32Ω |
TUBEモード High Gain | 158mW@32Ω (EXT DC: 268mW) | 551mW@32Ω (EXT DC: 1087mW) |
THD+N | 0.02% | 0.02% |
ダイナミックレンジ | 116dB | 117dB |
チャンネルセパレーション | 79dB | 103dB |
S/N比 | 115dB | 117dB |
ノイズフロア(Low Gain時) | 111dB | 108dB |
周波数応答(USB DAC) | 20Hz–40kHz(-0.5dB) | 20Hz–40kHz(-0.5dB) |
周波数応答(CD再生) | 20Hz–20kHz(-0.5dB) | 20Hz–20kHz(-0.5dB) |
EC Zero Tでできること
CDを”CDとして”高音質で聴ける
EC Miniを紹介したときも同じことを言いましたが、いちばんの魅力はやはり「CDをCDとして聴ける」こと。しかも真空管&R2R DAC &4.4mmバランス接続という贅沢な環境で。

CDを挿入するだけで、高音質で簡単に音楽を再生できます。しかも今回はディスクトレイが透明だから中のCDが回っている様を眺めながら聴くことができますよ。エモい(語彙力)
最近はCDを購入しても「リッピングして、はい終了」みたいな使い方をしている方も多かったと思いますが、EC Zero Tであれば購入したCDをそのまま楽しむことができるのですよ。
購入したCDのジャケットを楽しんで、中のアートワークを楽しんで、CDに印刷されたデザインも楽しんで、CDを入れて歌詞カードを見ながらCDを聴く。
その一連の儀式をすることで、一つのアルバムやシングルを丁寧に120%楽しむことができるのですよ。
※個人的な意見です
便利なこの令和の時代に、あえて手間をかけてキャンプに行くようなものです。オーディオ流のキャンプブームみたいなもんです。キャンプブーム終わった感あるけど。
最近はストリーミングサービスのおかげで最新曲もすぐに配信されて便利に音楽を聴けるようになりましたが、昔に比べると一つのアルバムに対する重みのようなものが少なくなった気がします。
もちろんストリーミングも否定するわけではなく僕もヘビーユーザーですけど、やっぱりBUMP OF CHICKENのような大ファンのアーティストだけはCDをちゃんと買いたいんですよ。
その買ったCDをそのまま”CDとして”高音質で楽しめるのは想像以上に感動ものでした。
またストリーミングだとついつい最新の曲を聴きがちになりますけど、持っているCDをあさってみたら「あ、久々このアルバム聴いてみようかな!」という気持ちになりますよ。僕はこの記事を書きながら久々にサカナクションの「kikUU-iki」を聴いてます。
USB-DACとして使う
次にUSB-DACとして使う方法があります。
ファンクションボタンを一度押せば「CDモード↔︎USB-DACモード」の切り替えができます。

この方法であれば、ストリーミングで配信されている楽曲を好きに聴けます。CDを所持していない楽曲を聴く時にはこの方法が良いと思います。
ただ、CDとUSB-DACモードでApple Musicで聴き比べると、明らかにCDの方が良く聴こえるんですよね。なんというかノイズが少なく無駄のない厚みのあるサウンドという感じ。
Bluetoothの送信もできる
次にBluetoothの送信機として使う方法もあります。aptX Adaptiveには対応していますが、LDACには対応していません。
この機能でCD音源をワイヤレスイヤホンやヘッドホンなどに飛ばして聴くことができます。
ただ、EC Miniと違ってBluetoothの受信には対応していないので、スマホで飛ばした音源をEC Zero Tで聴くといったことはできません。
またBluetoothでの接続はあくまでデータの転送のみとなりますので、CDやR2R、真空管の恩恵は全く受けられないと思ってください。スマホで聴くのと一緒です。
あくまでCDでしか聴けない音源をワイヤレスイヤホン / ヘッドホンで聴くための機能だと思ってください。
CDリッピング機能も搭載
一応CDリッピング機能も搭載しています。
ただし、背面のDC INにUSBメモリを差し込んで、そのまま等倍でWAV形式で録音していくだけというアナログすぎる録音方法となっています。
カセットテープに録音するようなイメージだと思ってください。クッソ不便。
「パソコンにCDドライブとして読み込ませて、そのまま楽曲情報を取得しながらリッピングできる!」と思ったら大間違いなんで、この点ご注意ください。
EC Zero Tのモードや設定について
TUBEモードとABモードの切り替え
今回のEC Zero Tは、ただCDを聴くだけではありません。真空管を使った「TUBEモード」と、トランジスタを使った「ABモード」の異なる音の2つのモードを選べます。

TUBEモードは真空管らしい温かく柔らかなサウンドが特徴。音の輪郭が丸くてしっとりとした瑞々しい音になります。
ABモードは従来のDACやDAPと同じ力強い解像度重視のサウンドになります。
音の好みやイヤホン・ヘッドホンに合わせてモードを切り替えられるのが強みです。
ただ、EC Zero Tを買う人はほとんどが真空管の音目当てだと思うので、TUBEモードメインで使うことになると思いますけどね。
「OS / NOS」の切り替えができる
本体設定で「OS(オーバーサンプリング) / NOS(ノンオーバーサンプリング)」の切り替えも可能です。

OSは音像の鮮明さが向上し、繊細で解像度の高い音になります。NOSはアナログライクでかなり柔らかめの音になります。
デジタルフィルター版「TUBEモード / ABモード」のようなものだと思ってください。この2つで交互に聴き比べると、けっこう音が変わることがわかりますよ。
より真空管らしいアナログなサウンドを体感したいなら「TUBEモード+NOS」、真空管の音を楽しみたいけどもう少し明瞭さが欲しい場合は「TUBEモード+OS」もおすすめです。
ゲインなどの設定が可能
これら以外にも本体設定のみで「ハイゲイン / ローゲイン」の設定が可能です。

能率の低いヘッドホンを駆動するときは「ハイゲイン」、高感度のイヤホンを使うときは「ローゲイン」で切り替えてあげるといいですよ。
EC Miniのようにタッチパネルではなく物理ボタンで操作を行うので、直感的に操作もしやすくなりましたね。
それ以外にも「リピート/ランダムなどの再生モード」「画面の明るさ」「L/Rのバランス調整」「ヘッドホン / ライン / デジタル / Bluetoothの出力切り替え」の設定があります。
DC外部電力入力モードでさらに高出力に
筐体背面の「P MODE」を「EXT DC」に切り替えて背面のUSB DCINにUSB-Cの充電ケーブルを指すことで、バッテリー駆動からDC外部電力入力のモードに切り替わり、「最大1220mW@32Ω」の高出力で聴けるようになります。

バッテリーモードだと「最大551mW@32Ω」なので数値的には2倍以上の出力を得られるようになります。
「EXT DC」であれば鳴らしにくいヘッドホン代表、ゼンハイザー「HD 800S」でも十分と感じられるほどの駆動力を得られるようになります。かなり高出力ですよ。
真空管のヌルめの音にさらに厚みが加わるようになりますし、自宅など電源が確保できる環境であれば、基本「EXT DC」で使うことをおすすめします。こっちの方がバッテリーも長持ちすると思いますしね。
音質は?
EC Zero Tの音質ですが、もうこれぞ真空管+R2Rみたいな音してます。
めちゃめちゃ暖かいサウンドです。
- 試聴音源:CD
- モード:TUBEモード / NOS / H Gain
- ヘッドホン:HD 800S / T3-01
- 接続方式 :4.4mmバランス
やはり大きさと重さは正義。
4.8
音質
音の傾向はいつものShanlingと比べてもかなり暖かめ。これぞ真空管+R2Rって感じの暖かみと優しさ極振りサウンドです。
以前紹介したハイエンド真空管DAPの「M8T」は真空管+Shanlingらしさのあるナチュラルなサウンドでしたが、「EC Zero Tはこれぞ真空管!」って感じの超甘々サウンドですよ。
超カッチリクール系のHD 800 Sがめちゃめちゃしっとり系になりましたからね。相当な暖色系サウンドだと思いますよ。
TUBEモード+NOSだと暖かみが強すぎてユルさも感じてしまうので、もう少しシャキッとした音にしたい場合は「OS」に切り替えるとちょうど良い塩梅になるかと思います。
シンバルやハイハットの音も刺さりが完全に抑えられて、湿度80%くらいあるんじゃね?と思うレベルで瑞々しく弾けるように鳴らします。
中域のボーカルラインはとても艶めかしく、一音ごとに吐息を感じるような甘い歌声を聴かせてくれます。高解像度でありつつもゆったりと聴けるような感覚です。
低域は締まりがやや甘めではありますが、深く沈み込みながらゆったりと中低域ラインにかけて広がっていくような感じです。
得意なジャンルについてですが、バラードやジャズ、シティポップなどメロウな楽曲はかなり合います。反面ロックやメタルだと少しもたつきはあります。
「ABモード+OS」にすればまだ歯切れの良いサウンドにはなりますが、R2R DACを使っている影響か、いつものShanlingと比べてもやはり暖色系のサウンドになっていますね。
ギャップレス再生に対応した!
最後にいちばん嬉しいポイントですが、やはりギャップレス再生に対応したことでしょうか。
ギャップレス再生とはトラック間をシームレスに繋ぐ機能のことなんですが、対応していないと次のトラックに行った時に一度ブツっと途切れてしまうんですよね。
ライブアルバムだと曲が終わったら毎回途切れてしまうので、せっかくいい気分で聴いていたのに「ブツっ」で冷めてしまうんですよ。つまり致命的。
EC Miniも良い製品だったんですけど、唯一CDのギャップレス再生に対応していなくて、それで一気に評価を落とした記憶があります。
今回は対応したので、ライブアルバムもストレスなく聴けました!
ただ、代理店のMUSINさんで試したギャップレス再生確認用の音源では、一部ブツっと途切れたようです。CDによってはもしかしたら気になるかもしれませんが、ボクの手持ちのCDでは問題ありませんでした。
長時間使っているとノイズが気になってくる
真空管の熱の影響かもしれないですが、長時間使っていると中高域あたりにざらっとしたノイズのようなものが入るようになります。
しばらく放置して冷ませば気にならなくなるのですが、状況によっては気になってくるかもしれません。
あと一曲目を再生しようとした時の曲の頭に「ブチっ」とノイズが入ることがあります。2曲目以降は発生しません。
EC Zero T まとめ
総合評価
4.8/5
EC Zero T

- CDをCDとして高音質で楽しめる
- 真空管+R2R DACによる超アナログサウンド
- TUBEモード / ABモードで音の傾向を変えられる
- OS / NOSで音の傾向を変えられる
- 最大出力が1220mW32Ωとかなり高め
- 4.4mmヘッドホンアウト / ラインアウトを使える
- ギャップレス再生ができる
- CDリッピング機能は実質使えない
- 長時間使っているとノイズが気になってくる
4.8
音質
3.0
携帯性
4.5
拡張性
4.0
利便性
- 手持ちのCDを直接高音質で聴きたい
- 真空管ならではの暖かみのあるサウンドが好み
- CDプレイヤーとして使いつつ、USB-DACとしても使いたい
真空管+CDプレイヤーというニッチすぎる製品ではありますけど、需要が合えばなかなか最高なプレーヤーですよ。
価格は高いですけど、いつでもどこでもCDで真空管サウンドをヘッドホンで楽しみたい方にとってはこれ以上ない製品だと思います。
高い製品に変わりはないので、そのうちやるであろうMUSINさんのレンタルサービスを使ってみて、一度体感してみるのもおすすめです。ぜひ一度聴いてから検討してみてください。

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