今回は中華イヤホンの火付け役ブームを作り、中華イヤホンの代名詞とも言えるメーカー「KZ」の新製品をまとめてレビューします。
KZのまとめレビューは2年半ぶりくらいですかね? 今回はKZさんからレビュー用に製品を提供いただきました。
以前のレビューは以下をご覧ください。昔すぎて書き方とか評価の仕方がけっこう違います。
しばらくレビューしていない間にも数々の新製品が出てきているみたいで、今回は特に発売してから間もない新製品「ZSN PRO 2」「PR3」「AS24」「Krila」「Castor」の5製品まとめてレビューします。
Castorは2バージョンあるのである意味6製品ですかね?
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KZの新製品まとめレビュー
ちなみに今回は全てエージングは200時間以上行っており、DAPはSONY NW-WM1AM2、イヤーピースは付属のシリコンで行っています。
ZSTx|まずは基本モデルの紹介から
スペック一覧 | ZSTx |
---|---|
ドライバー | 10mmダイナミックドライバー + 1BA |
インピーダンス | 12Ω |
再生周波数帯域 | 20-40KHz |
音圧感度 | 107dB/mW |
プラグ形状 | 3.5mm |
コード長 | 約1.2m |
リケーブル対応 | 2Pin |
リモコンマイク | マイク付きモデルもあり |
付属品 | シリコンイヤーピース 3ペア フォームイヤーピース 1ペア 2pinケーブル ユーザーガイド |
まず新製品を紹介する前に、KZの定番でありベストセラーモデルである「ZSTx」を基準代わりに紹介します。
約2000円という価格で10mmドライバーと1BAを搭載したハイブリッドモデルで、発売当初の構成としてはかなりのコスパの高さを誇る製品です。
ケーブルは2pinを採用。最近はQDCタイプが多いKZですが、こちらは昔のKZによく見られる2pinですね。
音の特徴はこちらです。
3.7
高音
3.7
中音
3.7
低音
音質はKZのど真ん中のようなチューニングで、高解像度! 硬質! ドンシャリ!って感じです。
高域は鋭めでありつつも刺さるはギリギリなく、キラキラとした印象。2000円台だと音が団子になりがちな中域帯もボーカルや楽器隊の分離もなかなかにできていて、解像度感高く鳴らします。
低域はベースラインは少しスッキリとしつつも、バスドラムやサブベースは迫力のある音で鳴らすドンシャリサウンドです。
2000円台とは思えない高解像のサウンドを体感しつつも、音は硬いけど硬くなりすぎずロックやポップスを『音』ではなく『音楽』として楽しめますね。
今まで家電量販店で聴いてきた国内製の2000円台の有線イヤホンと比べると解像度の高さに驚かされると思います。
発売からしばらく経ちましたが、今でも2000円台としては脅威のコスパを誇る中華イヤホンだと思います。これぞ中華イヤホンって感じ。
ちなみにxのつかない「ZST」の方がもっとドンシャリ感が強くて剥き出しのKZ感があります。ボクは「ZSTx」の方がオススメだと感じました。
Krila|優しさを覚えたKZサウンド
スペック一覧 | Krila |
---|---|
ドライバー | 10mmダイナミックドライバー + 1BA |
インピーダンス | 28-36Ω±3Ω |
再生周波数帯域 | 20Hz-40KHz |
音圧感度 | 106±3dB |
プラグ形状 | 3.5mm |
ケーブル | 銀メッキケーブル 1.2m |
リケーブル対応 | 2Pin QDC |
リモコンマイク | マイク付きモデルもあり |
付属品 | シリコンイヤーピース 3ペア フォームイヤーピース 1ペア 2pinケーブル ユーザーガイド |
「$1000以下敵なし」という強烈な広告とともに現れたKZの新たなエントリーモデルですが、んなわけがない。
ボクとしては「3000円台なら結構おすすめ!」って感じでしょうか。
ドライバー構成は10mmダイナミックドライバー + 1BAとKZの定番構成となっています。
4つのスイッチイング機能があり、3つは低域ラインの調整、1つは高域ラインの調整が可能な仕様になっていて、音の傾向を変えることができます。
高域側はけっこう雰囲気が大きく変わるので、好みに合わせて調整してみると良いと思います。とりあえずデフォルトの全部ONの状態で評価しています。
着脱端子はQDCタイプの2Pinを採用。
装着してみるとこんな感じ。こちらも不満なし。
音の特徴はこちらの通り。
3.9
高音
3.8
中音
3.8
低音
KZの1DD + 1BA構成の剥き出しのKZ感がなくなって、全体的にまとまりがありバランスが良いサウンドになりましたね。ZSTXよりも聴きやすい音になっているかと思います。
ただ、あくまで”KZにしては”という基準なので、相変わらずドンシャリであることには変わりありません。
高域は刺さりを全く感じさせずにKZらしく鋭く伸ばすような感覚、低域も暴力的には沈み込みすぎず、程よく豊かさもあるような感覚。
このあとに紹介するZSN Pro 2よりも聴きやすい仕上がりでしょう。ただ一聴した時のクリアさや解像度感の高さはZSN Pro 2に軍配があがるかもしれません。
解像度感の高さを感じつつ落ち着いて聴きたいならKrila、KZらしいドンシャリ感で高解像度サウンドを楽しみたいならZSN Pro 2という感じですかね。
過大広告で悪い意味で話題になってしまったけど、純粋に3000円台のイヤホンと考えればコスパはなかなか高い方だと思います。初めての中華イヤホンとしてもおすすめしやすいかと。
Castor|2バージョンを楽しめる2DDイヤホン
スペック一覧 | Castor |
---|---|
ドライバー | 10mmダイナミックドライバー 6mmダイナミックドライバー |
インピーダンス | ハーマン・ターゲットバージョン:31-35Ω 低域バージョン:16-20Ω |
再生周波数帯域 | 20Hz – 40kHz |
音圧感度 | ハーマン・ターゲットバージョン:105±3dB 低域バージョン:103±2dB |
プラグ形状 | 3.5mm |
ケーブル | 銀メッキケーブル 1.2m |
リケーブル対応 | 2Pin QDC |
リモコンマイク | マイク付きモデルもあり |
付属品 | シリコンイヤーピース 3ペア フォームイヤーピース 1ペア 2pinケーブル ユーザーガイド |
Castorは10mmダイナミックドライバーと6mmダイナミックドライバーの2DD構成となっています。
そのチューニングはイヤホンの周波数特性の定番である「ハーマンターゲットカーブ」に準拠して制作されているのですが、低域バージョン(ブラックカラー)はそこに低域をモリモリに盛ったチューニングになっています。
こちらも4つのスイッチイング機能があり、本体上部のスイッチを切り替えることで音の傾向を変えることができます。
とりあえずデフォルトで今回は検証しています。
ケーブルがCastorのみ、銅線感たっぷりの品質が悪そうなケーブルで、そこだけが残念。
着脱端子はQDCタイプの2pinを採用しています。
装着感はこんな感じ。悪くないですが、音漏れはやや多め。
音質についてですが、低価格帯の最近のKZのなかではCastorの低音モデルが一番好みかもしれません。
音の特徴はこちらの通り。
3.9
高音
3.8
中音
4.0
低音
その音質ですが、2DDらしいモリモリの低音と、KZらしい高解像度でクリアなサウンドが組み合わさったような感覚ですね。
音の傾向はKZらしいドンシャリには変わりないのですが、BAを搭載していないため音が鋭くなりすぎず、全体的に豊かさを感じる音作りです。
低域がとにかくモリモリではあるのですが、かといって支配的な感覚はなく、中高域はそのままクリアなんですよね。
音場も少し広く、ダイナミックドライバーらしく中低域から豊かに広がっていくような感覚があります。
2DDと聴くとモッサリするような印象を受けるかもしれませんが、意外とBA搭載機のように粒立ちも良く、一音一音を把握しやすいんですよね。
低域を豊かに鳴らせることもあり、ヒップホップやEDM、エレクトロ系なんかとも相性が良いです。
昔DQ6という3ダイナミックドライバー構成のイヤホンがあったんですけど、そのイヤホンがとても好きだったので、ダイナミックドライバー複数機は好みに合いやすいのかもしれません。
低音派ではあるけど中高域が埋もれすぎるのは苦手!という方におすすめしたい中華イヤホンです。
ちなみにノーマルのCastorの評価はこんな感じ。
3.9
高音
3.8
中音
3.8
低音
こちらはバランスの整った音ですが、低音バージョンのように豊かさが薄れて、KZらしくシャキッとした感覚ですね。
2DDらしい低音の臨場感や音の広がりを楽しむなら、やはり低音バージョンの方が良く感じました。
Castorのノーマルバージョンを買うなら、Krilaの方がおすすめかなー。
ZSN PRO 2|これぞ現代のKZ
スペック一覧 | ZSN PRO 2 |
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ドライバー | 10mmスーパーリニアダイナミックドライバー×1 +バランスドアーマチュアドライバー×1 |
インピーダンス | 32 Ω |
再生周波数帯域 | 20Hz-40KHz |
音圧感度 | 108dB |
プラグ形状 | 3.5mm |
ケーブル | 銀メッキケーブル 1.25m |
リケーブル対応 | 2Pin QDC |
リモコンマイク | マイク付きモデルもあり |
付属品 | シリコンイヤーピース 3ペア フォームイヤーピース 1ペア 2pinケーブル ユーザーガイド |
ZSN PRO 2はKZの大人気モデル「ZSN PRO」の後継機種です。 デザイン的にはZN10 Proに近い気がする。
ただ、一昔前のKZよりもプレートのバリ感が抑えられて、シェルもキレイになっており、全体的に質感がアップしていることがわかります。
着脱端子はQDCタイプの2pinを採用しています。
装着してみたらこんな感じ。装着感も悪くないです。
そのZSN PRO 2の音ですが、最近のKZのなかでは一番KZをしている音だと思いました。
3.9
高音
3.8
中音
3.8
低音
KrilaはKZにしてはバランスが良くて上品、CastorはKZにしては豊かで、ZSN Pro 2はKZの原点回帰的な音作りですね。
音の傾向は硬質系で余韻感が少なめのTHE・ドンシャリサウンドという感じでしょうか。もはやKZドンシャリと名付けたいくらいKZらしい傾向。
かといってZSTXのような昔の荒々しいKZ感は控えめで、最近のKZらしい丁寧さも持ち合わせています。
高域は暴力的にカチッと硬めに鳴らしつつも、刺さりを感じさせないギリギリを攻めた感じ。
低域は一聴するとスッキリとした感じなのですが、楽曲によってはサブベースあたりで急にゴリゴリに攻めてくるような良い意味で下品な重低音を鳴らしてきます。
ボーカルラインもピークラインの表現がなかなか粋な感じで、フレッシュに聴かせてくれます。
ただ初代のZSN Proと比べるとまだ落ち着いた感覚はありますね。初代は高域はナイフ、低域はハンマーみたいなもっと頭が悪い音してたんで、あの頃と比べると大人になりました。
底抜けに明るく、そして低域の下限はゴリゴリと、これぞ現代のKZ!的な音を主張してくるので、KZらしい音に触れたい方にオススメの製品です。
ちなみにAmazonで買うより、アリエクで買った方が半値以上安いです。
PR3|ポテンシャル最強!激安平面ドライバー
スペック一覧 | PR3 |
---|---|
ドライバー | 13.2mm平面駆動ドライバー搭載 |
インピーダンス | 15±3 Ω |
再生周波数帯域 | 20~80,000Hz |
音圧感度 | 94±3 dB |
プラグ形状 | 3.5mm |
コード長 | 1.2m |
重量 | 約50g(ケーブル・プラグ含む) |
リケーブル対応 | 2Pin QDC |
リモコンマイク | × |
付属品 | シリコンイヤーピース 3ペア フォームイヤーピース 1ペア 2pinケーブル ユーザーガイド |
保証期間 | 1年 |
PR3は13.2mmの平面駆動ドライバーを1機採用したモデル。Amazonだと約1万円ほど、アリエクスプレスなら5000円以下くらいで買えますね。価格差っ!
そして平面駆動型で5000円以下はめちゃめちゃ安いですね。1万円台でもハイコスパって言われているのに。
インピーダンスは15±3 Ω、そして音圧感度は94±3 dBとエグい鳴らしにくさ。ヘッドホンかよ。
実際にふだん使ってるSONY NW-WM1AM2の3.5mm接続だと音がスカスカになって、高域もめっちゃ刺さります。
こちらはできればリケーブルでバランス化した方が良いかもしれません。
着脱端子はQDCタイプの2Pinを採用。
装着してみるとこんな感じ。装着感は特に不満なしですね。
その音質ですが、5000円という価格を考えればめちゃめちゃいいです! ただし、試聴環境は高出力環境を用意した方が良いと思います。
音の特徴はこちらの通り。
4.3
高音
4.1
中音
4.0
低音
音の傾向的には、剥き出しの平面ドライバーに対して、KZのチューニングをプラスした感じの音ですね。
高域は鋭めではありますが、1万円以下としてはトップクラスに伸びが良いですね。フォームイヤーピースである程度スポイルしてあげれば、ちょうど良い高域のキツさになります。
ボーカルラインもややスッキリとしつつ、価格に対して曇りを一切感じさせない超クリアなサウンドです。
低域は再生環境によっては立体的な音で豊かに鳴らしてくれるのですが、その環境を作るのがけっこう大変っていう……。
音場も平面ドライバーらしく広くて、上にスゥ〜っと自然に伸びていく感覚がありますね。
価格に対してめちゃくちゃ音は良いんですけど、スマホ直差しとかでは絶対おすすめしません。最低でも1万クラスのDACは必要かと思います。スマホ直差しだと音がスカスカになって、高域だけ刺さるような音になります。1
ただ思うことは、PR3を鳴らせる環境を使っている方は、多分1万円以下の有線イヤホンはメインで使ってないんじゃないかな……。マニア向け感が強い。
もしコスパ重視でPR3を使い切りたい場合は、リケーブル+DACの購入をおすすめします。Dawn ProかEarFun UA100あたりなら安くて出力も高いですよ。
リケーブルはフォロワーさんにおすすめいただいたJSHiFi-Hi8の4.4mmバージョンを購入してみましたが、いい感じに出力を確保できました。価格も1,650円ほどなのでおすすめです。
AS24|脅威の片側12BA
スペック一覧 | AS24 |
---|---|
ドライバー | 12BA |
インピーダンス | スタンダードバージョン 20Ω |
再生周波数帯域 | 20~40000Hz |
音圧感度 | 標準バージョン 112±3dB |
プラグ形状 | 3.5mm |
ケーブル | 銀メッキケーブル 1.2m |
リケーブル対応 | 2Pin QDC |
リモコンマイク | マイク付きモデルもあり |
付属品 | シリコンイヤーピース 3ペア フォームイヤーピース 1ペア 2pinケーブル ユーザーガイド |
AS24は約17,000円という価格で片側12BAを搭載した変態機。
それだけではなく音質切り替えスイッチも片側に8つ付いているというバカみたいな構造。
8つもあると、さすがにどのスイッチにすればいいかわからない……。
インピーダンスは20 Ω、そして音圧感度は 112±3dBなんで、問題なく鳴らせるレベルかと。
着脱端子はQDCタイプの2Pinを採用。
装着してみるとこんな感じ。装着感は特に不満なしですね。
その音質ですが、正直PR3を聴いた後だと「?」ってなってしまいますね。これで17000円?これで12BA?って感じ。
4.0
高音
4.0
中音
4.0
低音
KZにしてはマイルドというか、なんだかモッサリさも感じるような音作りですね。
12BAということもあって全体的に情報量は多い気がするが、各帯域ごとのドライバーが邪魔している感覚で、さらに一音一音の伸びも悪め。
低音も価格に対して締まり感や迫力のようなものもそこまでなく、悪い意味でマイルドという感覚です。
中音も艶感がなくて分析的なのに柔らかめという感覚で、これらが全部合わさってモッサリ感につながっているような感覚です。
とりあえず12BA突っ込んだし、とりあえず8つスイッチつけたから、あとは好きに調理してくれ!と言わんばかりの丸投げ構成。こういう雑な状態で販売をGOするあたりもKZの醍醐味ですね。
ボクだったら17000円払うなら、間違いなくAS24以外のイヤホンを選ぶ。
KZ新製品レビューまとめ
商品名 | ZST X | Krila | Castor 低域バージョン | Caster ハーマンバージョン | ZSN PRO 2 | PR3 | AS24 |
総合 評価 | (4.5) | (4.7) | (5.0) | (4.5) | (4.7) | (4.9) | (3.5) |
ドライバー | 1BA +1DD | 1BA +1DD | 1BA +1DD | 1BA +1DD | 1BA +1DD | 1平面 | 12BA |
高域 | (3.7) | (3.9) | (3.9) | (3.9) | (3.9) | (4.3) | (4.0) |
中域 | (3.7) | (3.8) | (3.8) | (3.8) | (3.8) | (4.1) | (4.0) |
低域 | (3.7) | (3.8) | (4.0) | (3.8) | (3.9) | (4.0) | (4.0) |
傾向 | KZらしいドンシャリサウンド | KZにしてはバランスが良く聴きやすい | 低域が豊かかつ高解像度なサウンド | ほどよく豊かで高解像度なサウンド | 現代の KZドンシャリ | 超伸びやかで立体的 | 情報過多でモッサリ |
ボクの好みで伝えると、ちゃんと再生できる環境があればPR3が一番よかったです。ただ、PR3は再生環境を選びすぎるんですよね……。もうすでに環境ができているマニア向けって感じなんですよ。
はじめての中華イヤホンとしてコスパ重視で買うなら「Castor」が一番好みでしたね!約3000円でこの音質は素晴らしいです。
もっとKZらしい音というか、中華イヤホンのスタンダードな音を味わいたいという方には「ZSTx」や「ZSN PRO 2」などをおすすめします。
どれも5000円以下なのに良い音で鳴らしてくれるので、まだKZのイヤホンを買ったことがないという人は、この機会に一度買ってみてください!ここが沼の入り口です。
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