こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回はHiFiMANより、かつての同社フラッグシップにして「まともに鳴らせるアンプがない」と言われた2010年発売の伝説の平面磁界型ヘッドホン「HE6」を、現代仕様で復刻した「HE6 Remastered」を紹介します。

オリジナルのHE6は、感度83.5dBというアホみたいな鳴らしにくさで有名なモデル。並大抵のヘッドホンアンプでは力不足で音がスッカスカになってしまうヤバイやつです。
その鳴らしにくい仕様はそのまま継承しつつ、ヘッドバンドを刷新して軽量化して現代に復刻したのが、今回紹介する「HE6 Remastered」というわけです。音は一切変えずにガワだけ現代化してきました。
価格は328,900円(税込)で、発売日は2026年9月4日。まあ超ハイエンドでございますよ。
ということでHiFiMANさんから紹介用にお借りしましたので、どんな音なのかチェックしていきましょう。
HE6 Remastered 外観・付属品
それではHE6 Remasteredの外観や付属品をチェックしていきましょう。
外箱はこんな感じ。

開封!

付属品

- ヘッドホン本体
- 6.35mmシングルエンドケーブル
- 4ピンXLRバランスケーブル
- 取扱説明書・保証書
ケーブルは6.35mm標準プラグと4ピンXLRバランスの2本が付属します。現代版に復刻するなら4.4mmバランスケーブルをつけて欲しかった。
本体・ケーブル
HE6 Remasteredの本体がこちら。

パッと見の外観はオリジナルのHE6とよく似ていますね。
中身はオリジナルHE6の振動板をそのまま継承。金蒸着のナノメーター厚ダイアフラムという、10年以上前の設計をそのまま持ってきています。

オリジナルのHE6には真鍮製の保護メッシュと、磁気回路まわりを補強するリブが入っていましたが、Remasteredではこれが取り払われているとのこと。製造技術が進歩して、振動板と磁気回路そのものの強度だけで十分もつと判断したそうです。
イヤーパッドはFocusPadを採用。メモリーフォームを芯に、側面がプロテインレザー、肌に触れる面がベロアというハイブリッドタイプです。

レザーだけのパッドより蒸れにくく、長時間でも快適に使えるタイプです。
ヘッドバンドは第2世代(Gen.2)のコンポジットヘッドバンド。航空グレードのメモリー合金をコアに、プロテインレザーの圧力分散パッドを組み合わせた構造で、ハンガー部には回転式のヒンジが入っています。

ストラップは穴あきタイプで通気性も確保。芯には航空グレードのメモリー合金が入っていて、形状をキープしながらしなやかに曲がってくれる構造になっています。
オリジナルのヘッドバンドから置き換わった、今回いちばんの変更点がここ。というか変わったのは実質ここだけと言ってもいいくらい。

ヘッドホン側の端子は3.5mm×2の両出しタイプ。

3.5mmを左右それぞれに挿すタイプなので、社外品のリケーブルが選びやすいのはうれしいところ。HiFiMANの他モデルとも共通の規格なので、手持ちのケーブルを使い回せる方も多いはず。
付属するのは6.35mmと4ピンXLRの2本だけ。完全に据え置き前提の構成です。
重さは公称値で522g。実測値518g。オリジナルのHE6から約28g、率にして約10%軽量化されています。

とはいえ500gオーバーなので、ヘッドホンとしてはかなり重ためのクラス。実際の装着感については後述します。
HE6 Remastered スペック
オリジナルのHE6との比較
| 項目 | HE6 Remastered | HE-6(オリジナル) |
|---|---|---|
| 型式 | 開放型・平面磁界型 | 開放型・平面磁界型 |
| 振動板 | ナノメーター厚ダイアフラム ※オリジナルと同一設計 | ナノメーター厚ダイアフラム |
| 周波数特性 | 8Hz〜65kHz | 8Hz〜65kHz |
| 感度 | 83.5dB | 83.5dB |
| インピーダンス | 50Ω | 50Ω |
| 質量 | 522g | 550g |
| ヘッドバンド | 第2世代コンポジット (メモリー合金コア+プロテインレザー) | 金属フレーム |
| 付属ケーブル | 6.35mmシングルエンド 4ピンXLRバランス | 6.35mmシングルエンド 4ピンXLRバランス |
| その他の付属品 | — | 交換用イヤーパッド ケーブルコネクター×2 |
HE6 Remastered レビュー
装着感|重さの割には快適
HE6 Remasteredの装着感ですが、522gという重さから想像するよりはずっと快適です。
ヘッドバンドが頭の形に沿って重さをうまく分散してくれるので、頭頂部の一点に重さが集中する感覚がありません。
側圧もほどよく緩めで、音は逃さず密閉しつつも耳は痛くならない絶妙な加減になっています。
イヤーパッドも肌に当たる面がベロアなので蒸れにくく、耳をすっぽり覆うサイズがあるので、内部空間にも余裕があります。
とはいえ500gオーバーには変わりはなく、首や肩への負担はそれなりにありますが、重さの割にかなり快適です。
| 装着感 | (4.5) |
駆動力が超必要
HE6 Remasteredの音質を伝える前に避けて通れないのが、この鳴らしにくさ。
感度83.5dB・インピーダンス50Ωという組み合わせは、スマホ直挿しやドングルDACではまず音量が取れません。論外です。
最低でも10万円クラス以上の、出力に余裕のあるDAC / ヘッドホンアンプが必要だと思ってください。

そして厄介なのが、このヘッドホンは「音量が取れた=ちゃんと鳴っている」ではないという点。出力に余裕がないと音場が狭くまとまってしまい、高域は線が細くなり、中域には厚みが足りず、低域にも深みが出ません。
本体33万円で終わりではなく、アンプ側にも相応の投資が必要になるヘッドホンです。
HIFIMANの10万クラスのアンプ「SERENADE(3,000mW@32Ω)」だと出力がやや足りず本当にギリギリライン。高域の線が細くなる感覚がありましたが、「ADI-2/4 Pro SE(4,000mW@32Ω)」ならもう少し高密度になりましたね。
これ以上出力が高くてXLRに対応したDACだとPRELUDE(10W@32Ω / 32万円)あたりにはなりますが、所持していないよー。ただ、HE6 Remasteredクラスをちゃんと鳴らそうと思ったらこれくらいの出力は必要だと思ってください。ヤベェやつです。
音質|超歪みの少ないニュートラルサウンド
HE6 Remasteredの音質ですが、ひとことでいうと「ニュートラルを軸にしためちゃめちゃ歪みの少ない音」って感じです。
あまりに歪みが少なすぎて、音源の粗が全て見えすぎそうになるんですけど、ほどよく滑らかになっているおかげでモニターヘッドホンのように粗探しするような感じではないですね。
HE6は僕も使ったことがないのでオリジナルとの比較はできないですが、発売当初に人気があった理由は頷けます。

- DAC:SERENADE / ADI-2/4 Pro SE
- 接続:4ピンXLRバランス
- アプリ:Apple Music
HE6 Remasteredの音の特長は次のとおりです。
音の傾向
音の傾向はニュートラルを軸にしつつ、ほんの少しだけ高域側に寄った明るめのバランス。ドンシャリでもかまぼこでもなく、帯域ごとの凸凹が少ないフラットなサウンドです。
歪みの少なさと分離感の高さのおかげで、意識せずともどんな細かな音まで逃さず耳に入ってくるような感覚。
今までレビューしてきたHIFIMANの超高価格帯「Arya Unveiled」「ISVARNA」の2機種は濃厚な音でしたが、HE6は完全にニュートラルで味付けが少なめです。
ただ、フラット系にありがちな優等生だけど面白みがない感じではなく、分析的になりすぎず、艶感や余韻も加えた透明感のあるリスニングサウンドになっています。
とてもニュートラルなおかげか、むしろアンプ側の音がそのまま乗るような感覚がありますね。SERENADEだとすごく濃厚な音になりますし、ADI-2/4 Pro SEだと歪みの少ないクリーンな音という印象を受けました。
復刻モデルということで音は2010年当時のままなわけですが、2026年のヘッドホンとして聴いても古臭さは全然感じないですね。
音場
音場は素晴らしいほどに広く、開放型らしい抜けの良さと、そして左右だけでなく奥行き方向にも空間が広大に広がっていって、すごく立体感のある音で奏でてくれます。密度のある広がりって感じ?
音の分離感もとても高く、リスニング系ながらも定位感も良好。かといってゲーミングやモニター系のようにスパッと音を切り離した感じではなく、スピーカーのように一つの部屋で鳴っている中で定位を定めてくるような自然な感覚。
そしてこの音場、アンプの出力を上げていくとさらに上下左右奥行に広がっていきます。伸び代はすごいんですけど、それだけアンプ側に投資が必要っていうね。
高音
高域は伸びやかで、空気感の表現が得意。あと歪みがめちゃめちゃ少なくてすごくクリーンな音が出ます。
やや持ち上がっている帯域ではあるんですけど、特定の帯域だけが飛び出すようなピークがなく、なだらかに上まで伸びていくような感覚。
ストリングスやアコギは天井知らずで音の密度を保ちながらどこまでも伸びていきます。なんというか本来薄くなっていく高域の上限部分にすごく厚みがあるんですよね。豊潤な音ですごく瑞々しい音です。多分ヒアルロン酸入ってる。
ハイハットやシンバルはカチッとした輪郭を持ちつつも刺激を抑えてサラッと鳴らしますね。
ただ、出力が足りないと密度が足りず線が細くなって高域がやや刺さりがちな貧相な音に。出力をしっかり確保してあげると一気に密度感のある音になります。SERENADEでギリギリラインって感じ……。
中音
中音域は、温かみよりも透明感や歪みの少なさを優先した超丁寧なチューニング。ボーカルも楽器も味付けを加えずナチュラルなまま音源の情報をスッと正確に出してきます。
声の薄さはなく、厚みのある歌声のまま詰まり感が一切なく、すぅ〜っと伸ばしてきます。女性ボーカルはHE6の透明感が特に際立ちますね。逆に低めの男性ボーカルは少し暗めに感じますね。
基本的にボーカルをぐっと前に出して濃厚に聴かせるタイプではなくフラットに鳴らすタイプなので、同帯域のメロディラインと同列に聴こえてきますね。
分離感が高くて歪みが少ないおかげで声もメロディもどちらも耳で自然に追い続けられます。
しっとりとしつつ前面に出てくるボーカルを求めるなら「Arya Organic」や「Arya Unveiled」あたりの方が好みに合うかと思います。
あとロックやポップスを聴くと、ギターやシンセサイザーの音が歪みがなくて厚みもあって超綺麗なんですけど、歪みが少なすぎて逆に雑味が欲しくなります。
低域
低域はタイトですんごく深みのある音を鳴らしますね。深すぎて温泉が沸くレベル。
低域の深みのおかげでミッドベースも下弦側で輪郭を把握できるような感覚で、めちゃめちゃ耳で追いやすいです。
バスドラムもびっくりするくらい立体感があって、空気の震えまで空間レベルで再現してくるような感覚。まさに上質な低音って感じです.
サブベースまでしっかり沈み込んで、力感もちゃんとありますが、サブベースに雑味があまりになさすぎず、EDMも綺麗になりすぎますね。
また低域側のレスポンスが速く、輪郭もぼやけずモタつきも全然ありません。中低域が中音域に被って濁ることもないので、ボーカルラインも一切阻害していないですね。
おすすめジャンル
おすすめジャンルはクラシックやジャズ、女性ボーカルのバラードなど、生楽器系を多用したサウンドフィールドが広大な楽曲。この辺りが一番HE6 Remasteredの強みを活かせます。
といっても基本的には万能で、ロックやメタルのような速い楽曲も、レスポンスの速さのおかげでモタつかずに鳴らしきってくれますが、逆に雑味というか歪みが欲しくなりますね……。ちとクリーンすぎる。
ヒップホップやEDMのように低音の量感で押すジャンルは、そこまで得意ではないかなという印象です。
HE6 Remastered まとめ
HE6 Remasteredをまとめると以下のとおりです。
HE6 Remasteredはこんな人におすすめ
出力に余裕のある据え置きアンプをすでに持っている人、味付けの少ない、歪みの少ないニュートラルな音が好きな人、クラシックやジャズを広い音場でじっくり聴きたい人、情報量が多くも透明感のあるボーカルを聴きたい人、そんな方に向いているヘッドホンのように感じました。
とにかく鳴らしにくいので、本当に上流のアンプを選ぶ一台ではありますが、環境さえ用意できる方はポテンシャルは相当高いヘッドホンになりますので、ぜひご検討ください。
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