こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回はAstell&Kernより、音をパーソナライズできる新世代DAP「PD20」をレビューしていきます。

- Audiodoと共同開発されたパーソナルサウンド機能
- ESS ES9027PRO Quad DAC構成
- 3つのアンプクラスを搭載したトリプルアンプアーキテクチャー
- アンプの動作電流を3段階で調整可能なClass A Current機能を搭載
- 没入型空間サウンド「Audiodoオーディオスフィア」に対応
- サウンドマスターホイールEQコントロール
- Full Android OS + ADPでストリーミングサービスも利用
前作のPD10の後継機ではなく完全に新規開発されたまったく新しいDAPです。価格は専門店などでは税込297,000円で販売しています。
最大の特徴は、DAPとして世界初となる「パーソナルサウンド」機能。Audiodo社との共同開発で、付属の聴力測定用イヤホンを使って自分の聴覚特性を測定し、左右の耳ごとに最適化したサウンドを作成できます。
さらに本体上部に2つのホイールを備える独特なデザインや、3つのアンプクラスを物理スライドキーで切り替えられるトリプルアンプアーキテクチャー、Bass/Mid/Trebleを160段階で微調整できるサウンドマスターホイールなど、「音を自分で形作る」をテーマにした機能が満載です。
今回はこちらのPD20をガッツリ使い込んでみたので、どれほどの実力が検証していきましょう。
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A&K PD20 外観・付属品
それではPD20を開封して、外観をチェックしていきましょう。


- 聴力測定用イヤホン
- USB Type-C to Type-Cケーブル
- 画面保護シート
- microSDカードスロットカバー
面白いのが「聴力測定用イヤホン」が付属している点。

これはパーソナルサウンド機能の聴力テスト専用にキャリブレーションされた特別なイヤホンで、テストアルゴリズムが必要とする正確な音圧レベルを出力するために専用設計されています。
音楽再生用ではないので普段使いはできませんが、聴力テストの精度を担保するためのものなので、テスト時には必ずこの付属イヤホンを使うようにしましょう。
本体はこちら。でかい!重い!角張ってる!痛い!

シルバーカラーのアルミニウム筐体。
外観の最大の特徴は、本体上部に2つのホイールを備えた独特なデザイン。スタンガンみたいだね。

左側が「サウンドマスターホイール」で、低音と高音のバランスを微調整できるようになっています。右側が音量調整用のホイール。

どちらもコリコリとした挙動で品質も高め。
音量調整用のホイールは電源ボタン兼用となっています。
電源ボタンを囲むLEDライトは、再生中の曲のビット深度を表示するインジケーター的な役割を果たしてくれます。LEDはユーザー設定でON/OFFできるので、好みに合わせて使えばOK。

左側面にはアンプクラス切り替えの物理スライドキー、Class A Currentの切り替えキー、ロックボタンが搭載

アンプクラスをソフトウェアメニューではなく物理スライドキーで切り替えられるのが地味に便利。リスニング中に「もう少し力強くしたいな」と思ったらサッと切り替えられます。
右側面には、再生停止 / 曲飛ばしなどを行う多機能キーが配置されています。

天面の出力端子は、3.5mmアンバランス(光デジタル兼用)と4.4mmバランスの2つのイヤホン端子が搭載

背面はめっちゃシンプル。

ちなみにケースもお送りいただきました。

スタンド付きの上質なケースではありますが、残念なのが別売りという点。
30万という価格なのだから付属で入れとけや!って思ったのが正直なところ。
サイズは77.5 × 155.7 × 17.3 mm、重量は約313g。同じ6インチディスプレイ搭載のPD10(約435g)やSP4000(約615g)と比べるとかなり軽くなっていて、片手でも扱いやすいバランスになっています。

A&K PD20 概要・スペック
スペックは以下のとおりです。比較として、「SP4000」と「PD10」も並べてみました。
| モデル名 | A&K PD20 | A&K PD10 | A&K SP4000 |
|---|---|---|---|
| カラー | Silver | Silver / Black | Black / Silver |
| 本体素材 | アルミニウム | アルミニウム | Stainless Steel 904L |
| DAC | ESS ES9027PRO×4 (Quad DAC) | AKM AK4498EX×1 + AK4191EQ×1 | AKM AK4191EQ×4 + AK4499EX×4 (Real Quad DAC / OCTA) |
| 対応サンプリングレート | PCM最大 : 768kHz (16/24/32bit) / DSD最大 : DSD512 | PCM最大 : 768kHz (16/24/32bit) / DSD最大 : DSD512 | PCM最大 : 768kHz (16/24/32bit) / DSD最大 : DSD512 |
| アンプ | トリプルアンプ (Class AB / A / Hybrid) | シングル | 並列OPアンプ + High Driving Mode |
| アウトプットレベル | アンバランス 5Vrms / バランス 10Vrms (無負荷) | アンバランス 5.5Vrms / バランス 11Vrms (無負荷) | アンバランス 4.1Vrms / バランス 8.2Vrms (無負荷) |
| S/N比 | 124dB / 127dB | 129dB / 132dB | 129dB / 131dB |
| THD+N | 0.0003% / 0.0004% | 0.0003% / 0.0003% | 0.0005% / 0.0003% |
| 出力 | 3.5mmアンバランス(光デジタル兼用) / 4.4mmバランス | 3.5mmアンバランス / 2.5mmバランス / 4.4mmバランス | 3.5mmアンバランス(光デジタル兼用) / 4.4mmバランス |
| OS | Full Android (Google Play対応) | Full Android (Google Play対応) | Full Android (Google Play対応) |
| ディスプレイ | 6インチ フルHD (1080×2160) | 6インチ フルHD | 6インチ 2K (2160×1080) |
| 内蔵メモリ | 256GB | 256GB | 256GB |
| Wi-Fi | 802.11 a/b/g/n/ac (2.4/5GHz) | 802.11 a/b/g/n/ac (2.4/5GHz) | 802.11 a/b/g/n/ac (2.4/5GHz) |
| Bluetooth | V5.3 (aptX HD / LDAC / LHDC) | V5.3 (aptX HD / LDAC / LHDC) | V5.0 (aptX HD / LDAC / LHDC) |
| バッテリー | 5,770mAh | 5,050mAh | 6,780mAh |
| 再生時間 | 約14時間 | 約15時間 | 約10時間 |
| 充電時間 | 約4時間 (PD 3.0) | 約4時間 (PD 3.0) | 約5時間 (QC 3.0) |
| サイズ (W×H×D) | 77.5 × 155.7 × 17.3 mm | 75.4 × 149.5 × 17.3 mm | 85 × 149.8 × 19.5 mm |
| 重量 | 約313g | 約435g | 約615g |
| 価格(税込) | 297,000円 | 275,000円 | 623,700円 |
注目はやはり、AKがこれまで採用してこなかった「聴力テストによるパーソナライズ」という新機軸ですね。
スペック表だけ見るとPD10やSP4000の方が数値上は上回る部分が多いのですが、PD20はそもそも別ジャンルの製品と捉えた方が良さそうです。
あと地味にうれしいのが、本体重量が約313gとフラッグシップ級としては軽量に抑えられている点。PD10と比べると約120gも軽く、SP4000と比べると約300gも軽量です。それでもズシっとはきますけどね。
A&K PD20 レビュー
サウンドマスターホイールの操作感がとても良い

まずPD20を使っていてすぐに気づくのが、サウンドマスターホイールの操作感の良さ。
Audiodoイコライザーと連動していて、ホイールを回すだけでBass / Mid / Trebleの各帯域を−8.0dBから+8.0dBの160段階で調整できます。音楽を中断することなく、触感だけでサウンドをチューニングできるのがプロ機っぽくて良きですね。
イコライザーの効きも自然で、過度に強調されすぎず、原音の特性を保ったまま全体の音色バランスを調整してくれる印象。低域を少しだけ持ち上げる、高域を少しだけ引き締める、といった微調整が直感的にできるのがいいですね。
ただ、3バンドしか調整できないのは残念かな。
パーソナルサウンド機能|効果はかなりわかりやすい
PD20最大の目玉、パーソナルサウンド機能を試してみました。
付属の聴力測定用イヤホンを装着して、左右の耳に流れるテストトーンが聞こえるか聞こえないかをYes/Noでタップしていくだけ。所要時間は5分ほどで、思った以上に手軽です。

測定が終わると、自分専用のサウンドプロファイルが作成されます。
気になる効果ですが、ボクの場合、パーソナルサウンドをONにすると低域がスッキリとして、中高域が前に出てくるようなスッキリ系の音に変化しました。
ハイ寄りな音にはなりましたが、ボーカルを主体に鳴らすような感じになりましたね。
ON/OFFどっちが好み?と言われると……うーん、合わせるイヤホンによるかも。IE 900だとややシャッキリしすぎましたけど、AFUL Dawn-Xのような濃厚系のイヤホンだとちょうど良いバランスになりますね。
人によって聴覚特性は違うので、効果の感じ方も人それぞれかと。ただ「自分専用にチューニングされた音」という体験そのものは、これまでのDAPにはなかった新しい感覚で面白いです。
ただし、パーソナルサウンド機能は最大192kHz/32bitまでのオーディオ再生に対応となり、それ以上のフォーマットではOFFになります。それ以上の音源って個人的には滅多に聴かないけど、DSDで聴いている方は要注意ですね。
トリプルアンプアーキテクチャー|物理スイッチで切り替えできるのが楽しい

PD20のもう一つの大きな特徴が、トリプルアンプアーキテクチャー。Class AB / Class A / Hybridの3つを物理スライドキーで切り替えられます。
それぞれの音質傾向はこんな感じ。
- Class AB(デフォルト):ダイナミックさと解像度を両立。一番カチッとした音。
- Class A:音の密度が増して、滑らかでアナログ的な質感に。ボーカルや弦楽器が特に色っぽくなる。
- Hybrid:Class Aの質感とClass ABの効率を融合させたモード。勢いがありつつも艶っぽい感じ
Class A Current機能
さらにClass A / Hybridモード時のみ、Class A Currentでアンプの動作電流をHigh / Mid / Lowの3段階で調整できます。
Highにすると音圧と力強さが増し、Lowにするとノイズフロアがさらに下がって繊細な音になります。
アンプクラスとClass A Currentの組み合わせで、HD 660 S2のような300Ω級ヘッドホンも完璧に鳴らし切れますし、高感度IEMでもノイズが少なくキレイに鳴ってくれるのがすごい。
これらの設定を物理スイッチで切り替えられるのは、ソフトメニューを辿る手間がなくて本当に便利。曲を聴きながらサッと変えられるので、音の違いを比較しながら自分好みのセッティングを探していくのが楽しいです。
音質|クール系の超高解像度系カチッとサウンド
で、本題のPD20の素の音質ですが、モードやパーソナライズにもよりますが、基本的にはクリアで解像度重視のサウンドのように感じました。
SP4000とは異なるのはもちろんのこと、PD10ともサウンドコンセプトが異なるように感じましたね。
検証環境は以下のとおりです。
- イヤホン:ゼンハイザー IE 900(バランス接続)
- ヘッドホン:TAGO STUDIO T3-01(バランス接続)、ゼンハイザー HD 660 S2(バランス接続)
- 設定:Quad DAC / Hybridモード / Class A Current Mid / Phase Compensated Fast
音の特徴は次のとおりです。
4.9
音質
- 音質:解像度の高さとノイズの少なさがピカイチ。背景の静けさがしっかりと感じられて、細部の音までクッキリと描写してくれる。SP4000やPD10と比べると、カチッとした硬質さのある音ですね。SP4000やPD10の方がもう少しナチュラル方面。
- 解像度:これは文句なしの解像度感。10万円台のDAPと聴き比べると、音の輪郭の立ち方や微細な音の聴こえ方がワンランク上で余裕のある解像度。
- 傾向:素の状態だとフラットで原音重視、やや硬質でカチッとした感じはあるかな? Class Aモードにしても滑らかさを感じつつも元の硬質さは備わっているような感じ。Hybridモードに切り替えるとClass Aらしい滑らかさが加わりつつ、硬さやスピード感もあるような感じ。
- 音場:横方向に広く、奥行きも深い。ボーカル位置はやや前寄りでフラットに近く、楽器の配置がはっきり見えますね。
- 駆動力:バランス出力10Vrmsとパワフルで、HD 660 S2のような300Ω級のヘッドホンでもClass A Current Highにすれば余裕でドライブできます。
濃密でリッチな質感を求めるならSP4000、クリアで現代的な解像度の高さとパーソナルチューニングを求めるならPD20という棲み分けになりますね。
そしてPD20の真骨頂は、サウンドマスターホイールやアンプモード切り替え、パーソナルサウンドなど、「素の音」をベースにして、自分好みに細かくチューニングしていける自由度の高さ。
基本ベースはカチッとしつつも、そこからはユーザー自身が作り上げていくような感じです。
オーディオスフィア|有線イヤホンでも空間サウンドが使える!
PD20には、DAPとしては珍しくステレオ音源を3次元の空間サウンドに拡張する「オーディオスフィア」という機能機能も搭載されています。

Subtle(狭め) / Balanced(中間) / Immersive(立体的) / Echoic(エコー強め)の4つのプリセットから選べます。
その効果もめちゃめちゃ残響感を強くする感じでもなく、割と自然。常時ONにする機能ではないですが、ライブ音源を聴くときにはおすすめです。
ライブ音源やオーケストラなどで効果がわかりやすく、特にImmersiveは立体感が一気に増します。
この機能が強みというわけでもないですけど、面白い機能って感じですね。
クロスフィード機能も搭載
イヤホンの定位をスピーカーのようにする「クロスフィード機能」も搭載。

ヘッドホンは左右のチャンネルが完全に分離しているので、長時間聴いていると耳が疲れやすいのですが、クロスフィードは片方のチャンネルの信号の一部を時間差で反対側にミックスして、スピーカーで聴くような自然な音像を作り出してくれます。
シェルフカットオフ、シェルフゲイン、ミキサーレベルなどを細かく調整できるので、自分の好みに合わせて設定可能。長時間リスニングの聴き疲れがちょっと気になる人は試してみると良いですよ。
DACフィルターとDARアップサンプリング
PD20には7種類のDACフィルターが搭載されていて、さらに自分好みの音色傾向にカスタマイズできます。

デフォルトは「Minimum phase」ですが、ボクが試した中では「Linear Phase Fast Roll-Off」がもっとも音の見通しが良く、高域のクリアさが際立つように感じました。
また、第2世代DAR(Digital Audio Remaster)のAdvanced DARも搭載。
要はアップサンプリング機能なのですが、ONにすると音が滑らかにはなりますが、音圧が少し薄くなるような感覚がありますね。こちらは好み次第だとは思いますが、個人的にはこの手の機能はOFFの方が好き。
ストリーミングサービスも一通り対応
Androidベースの独自OSではありますが、「Apple Music」「Sptify」「Amazon Music」などのストリーミングサービスは基本的に使えます。

音源の再生自体は問題ないですが、CPUの影響か、動作はややモッサリとしていますね。Amazon Musicとか特に重い。
スマホのようにキビキビとは動作しませんが、一応問題なくストリーミングでハイレゾ音源を楽しむこともできます。
拡張性|AKシリーズおなじみの便利機能はひと通り搭載
PD20はFull Android OSを採用していて、Google Playストアから自由にアプリをインストールできます。Apple Music、Amazon Music、Qobuz、Spotifyなど主要なストリーミングサービスはひと通り対応。
独自のADP(Astell&Kern Direct Path)技術によって、Android OSのサンプリングレート制限(SRC)を回避し、ストリーミングでもビットパーフェクト再生が可能。
その他の拡張機能はこんなにあります。
- USB-DAC機能:PCに接続して据え置きDACとして使える
- BT Sink:Bluetoothレシーバーとして使える
- AK File Drop:Wi-Fi経由で音楽ファイル転送
- AK Connect:DLNAネットワークオーディオ対応
- 光デジタル出力:3.5mm端子兼用
とにかく多機能なので、DAPとしてだけでなく据え置き用のUSB-DACやBluetoothトランスミッターとしても使えます。
ただし……
ただし、USB-DAC機能として使う場合は、パーソナライズサウンドやイコライザー、空間サウンドなど、さまざまな機能が使えなくなります。
駆動力も高く据え置きと兼用としても使えそうなのに、ここは結構残念かも……。
A&K PD20 まとめ
総合評価
4.7/5
Astell&Kern PD20

- 味付けを加えないクリアで高解像度なサウンド
- パーソナルサウンドで
自分好みの音に仕上げられる - DAPながら空間サウンドも使える
- トリプルアンプ×Class A Currentで
幅広い音色を実現 - 据え置きクラスのヘッドホンにも対応できる
駆動力 - ストリーミングにも対応
- イコライザーも物理ノブで調整できる
- 拡張性が高い
- パーソナルサウンドは192kHz/32bit以下のみ対応
- USB-DAC機能時はパーソナライズサウンドや
空間サウンドなどが制限される - ケースが別売り
- 価格がとにかく高い
4.9
音質
3.0
携帯性
4.8
拡張性
4.5
利便性
- 自分でサウンドを細かくチューニングするのが好き
- クリアで解像度の高いカチッとしたサウンドが好き
- 据え置きのUSB-DACとしても使いたい
- 自前の有線イヤホンで空間サウンドやパーソナライズ機能などを使いたい
音を変化させる手段がこれだけ詰め込まれているDAPはなかなか珍しいんじゃないでしょうか。
空間サウンド機能とかパーソナルサウンドとか、ワイヤレスイヤホンで搭載しがちな機能を、有線イヤホンを使って超高音質で楽しめるので、この点が特にユニークなように感じましたね。
以上!Astell&Kern PD20のレビューをお送りしました。


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