今回は楽器メーカー「Zildjian(ジルジャン)」から、同社初のワイヤレスヘッドホン「ALCHEM-E(アルケミー)Perfect Tune Headphones」を紹介します。

Zildjianといえばトルコ発のシンバルで世界トップのシェア率を誇るメーカーで、なんと創業400年以上という歴史を有しています。
ジャンルを問わず多くのプロドラマーから愛され続けており、まさに「シンバルといえばZildjian」とも言えるメーカーでしょう。
日本ではヤマハミュージックジャパンが輸入販売を行っています。今回はヤマハさんから紹介用に提供いただいたものになります。
そして今回紹介するALCHEM-E Perfect Tune Headphonesの特徴は次の通りです。
- 40mm径のダイナミックドライバーを搭載
- ユーザーの耳に合わせてパーソナライズを行う「Perfect Tuneテクノロジー」を採用
- 2段階のアクティブノイズキャンセセリングに対応
- 連続再生時間は最大45時間
- AUX接続による有線接続にも対応
- アプリによるEQにも対応
- 価格は88,000円(税込)
価格はかなり高めに感じますが、どれほどの実力があるのか、実機を使って検証していきましょう。
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Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphones 外観・付属品
それではZildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesの外観や付属品をチェックしていきましょう。
パッケージ
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesのパッケージはこんな感じ。

オープン。

付属品

- キャリーケース
- オーディオ・ケーブル(ケース付き、6フィート)
- 1/4インチ・ケーブル・アダプタ
- USB-C充電ケーブル(3フィート)
- 製品保証(ご購入日から1年間)
オーディオケーブルからUSB-CケーブルまでZildjianのロゴ入りでかっこいい!

ケースはシリコン素材を採用したチャック付きのケースという珍しい仕様。

ケースの中身はこんな感じ。ドラムスティックやシンバル、ドラムのアイコンが散りばめられたオシャレなデザインになっています。

ハードケースのようにゴツゴツとしていないので、携帯性もそれなりには高そうですね。
本体
ヘッドホン本体はかなりゴツゴツとした男らしいデザイン。

ハウジングの表面はシンバルと同じように音溝が彫り込まれており、そこにZildjianが黒文字で印字されています。
ガチのシンバル感を出すためにゴールドハウジングにしても面白そう。デザインがイイかどうかは置いといて。
右側のハウジングにはまるでアンプにも搭載されていそうな大型のボリュームノブが搭載されています。

このノブはボタンとしても機能しており、押し込むことで再生/停止などの操作もできます。
イヤーパッドは肉厚でとてもモチモチとしていますね。質感はとても良さそう。

イヤーパッドは交換も可能で、純正アクセサリーとしても発注できます。
アーム部はシンバルと同じようなゴールド配色で彩られていています。
アーム部は段階式で長さの調整も可能。

ヘッドバンド部は真ん中だけ少し凹んだおもしろいデザインになっていますね。

ちなみにヘッドパッド部はすんごいモチモチしてます。イヤーパッドといいパッドの質感にはこだわってそうですね。
右側ハウジング下部には充電用のUSB-C端子、電源ボタン、バッテリー残量を知らせるLEDランプ、ノイズキャンセリングの切り替えボタンが備わっています。

左側には有線接続用の3.5mmステレオジャック(メス)が備わっています。

Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphones スペック
製品名 | Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphones |
ドライバー | 40mm |
Bluetooth | Bluetooth®5.3 |
コーデック | SBC,AAC |
再生時間 | 最大45時間 ノイズキャンセリングON時 |
充電端子 | Type C |
防水 | – |
自動装着検出 | – |
低遅延モード | – |
ノイズキャンセリング | ◯ |
外音取り込み | ◯ |
空間オーディオ | – |
アプリ | ◯ |
マルチポイント | ◯ |
イコライザー | ◯ |
価格 | 88,000円 |
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphones レビュー
起動するとシンバルの音が流れる
それではまず起動してみましょう。
電源をONにする際は、電源を長押しする必要はなく1クリックだけで起動します。立ち上がりがめちゃめちゃ早い。
電源をONにするとハイハットの音が「チャカカカーン」と鳴ります。この時点でドラマーやドラム好きの方からすればたまらない仕様。
電源OFFの時は「シャーカッ」とハイハットのクローズで締めます。
某ギターアンプメーカーのヘッドホンみたいで楽しい。
装着感|見た目のわりにかなりイイ
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesの装着感についてですが、ゴツいみたい目のわりには、とてもイイと思います。
実際に装着してみるとこんな感じ。男らしいデザインですけど、意外とおしゃれに見えますね。ふつうにかっこいい。こういうのは外人ニキの方が似合いそうですけど。

前から見てもハウジングの飛び出しは意外と控えめ。

重ためなので頭頂部が痛くなるかと思いきや、長時間装着しっぱなしでも意外と痛くなりませんね。
首からぶら下げてもかっこいい

側圧もやや強めではあるのですが、パッドがモチモチしているおかげで耳への負担も少なく、メガネをつけた状態でも耳の付け根が痛くなりにくいですね。
その上でしっかり密閉してくれるので低音が逃げず、屋外でもしっかり遮音しながら音楽を楽しめます。
装着感 | (4.5) |
音質|洋楽に合う極太ロックサウンド
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesの音質について。
一聴して感じたことが、音太っ!極太っ!って感じです。めちゃめちゃ濃厚で厚みのある音ですね。
超ゴリゴリのサウンドで、ぼっち・◯・ろっくで例えるとゲーミング虹◯ちゃん並みにゴリゴリです。
そしてシンバルメーカーらしくシンバルの音はとても生々しく表現してくれます。

Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesの音の特長は次のとおりです。
4.8
高音
4.7
中音
4.8
低音
音の傾向
音の傾向はデフォルトだとかなりロー寄りで、重心をとにかく低くした重厚なサウンド。
また、シンバルあたりの帯域は明瞭にクリアに聴こえるドンシャリ型のサウンドになっていますね。
高域
高域はさすがシンバルメーカーということもあり、ハイハットやシンバルの音はとても生々しいストレートな音。
シンバルの音に対して脚色を加えず、変に刺激的な音にもせず、スポイルして刺激を抑えている感じもなく、シンバルの音を真芯で捕らえてくるような感覚です。
高域側に関してはモニターライクで輪郭を追いやすい音のように感じました。どんな楽曲でもシンバルは思わず耳で追ってしまいます。
スネアドラムもとてもスナップ感が良く、炸裂音がとても心地いいです。
中域
ボーカルラインは引っ込んでいるわけではないですが、主張もしすぎず艶感も少なく、モニターライクに鳴らすような印象です。
厚みもたっぷりでエレキギターも重厚に掻き鳴らします。
低域
低域〜中域側は量感がかなり多めで、とにかく濃厚。バスドラムも迫力満点ですね。
まるでライブ会場にいるのかな?と思うほどの重厚な低音が脳内を揺らし続けます。
かなりローが強めで、低音の輪郭よりも迫力が攻めてくるようなタイプなので、モニタリングには向いていないかもしれませんが、聴いていてとても楽しいですね。
ジャズを聴くと、ウッドベースの音がむしろステージの床から鳴っているんじゃないかな?と思うくらい低いところからベンベンと広がっていきます。
この重厚な低音が洋楽とはとてもマッチするみたいで、この音に慣れてから他のヘッドホンに変えて洋楽を聴くと、耳が調教されて低音が物足りなく感じてしまいます。危険。
ただ、間違いなく音の好みや聴くジャンルによっては、低域が多すぎると感じると思います。
音場
音場はなかなかに広めで、重厚な中低域と合わせてスケール感のあるサウンドを体感させてくれます。
ライブ音源を聴くとスタジアム感溢れる壮大なサウンドを体感できますよ。
どうせだったら空間オーディオも搭載してくれたらうれしかった。ALCHEM-Eの音と空間オーディオは絶対に相性良いと思うのに。
おすすめジャンルについて
まず、邦楽の最新チャート曲だと音が太すぎて合わないように感じました。
中低域が濃厚すぎて音が小気味良さがなくなって音が潰れてしまう感覚がありましたね。
YOASOBIやAdoを聴くとサブベースで音が埋もれちゃうよー。
逆に洋楽のロックやメタル、ラウド、テクノ、ヒップホップ、EDM、ジャズあたりはかなりおすすめです。
60〜80年代のハードロックや、90年代オルナタシーン、00年代のロックンロールリバイバルやエモ・ポップパンク世代との相性は最高ですよ。
バスドラム、ギター、ベースの音の一つ一つがめちゃめちゃ重厚になるので、とにかく音の厚みを求める方にはとてもハマる音だと思います。
レッド・ツェッペリン / マリリン・マンソン / ナイン・インチ・ネイルズ / スリップノット / フー・ファイターズ / ミューズ / アークティックモンキーズ 、このあたりの洋楽ロックの重鎮達が好みであれば、ALCHEM-Eは超おすすめですよ。
洋楽ロックだけでなく、ブルーノ・マーズやビリー・アイリッシュなどの洋楽ポップスも全然イケますね。チューニングを完全に洋楽に合わせているんでしょうね。
シンバルの音が生々しいので、ジャズも小気味良いハイハットワークを中心に聴く場合にもおすすめです。ビル・エヴァンス・トリオのWaltz for Debbyを聴くと、いつも聴いている感覚よりもさらにライブ感が増したように聴こえます。
総評
総評すると、ジャンルは選ぶとは思いますけど、この音にハマれば抜け出せない魅力のあるヘッドホンのように感じましたね。洋楽とはかなりマッチします。
所持している同価格帯のヘッドホンとも比べてみましたが、高域の繊細さやボーカルの美しさ、解像度の高さを重視するなら他にも選択肢があります。
ただ、この低音の重厚さと生々しいシンバルの音はALCHEM-E Perfect Tune Headphonesにしか出せない唯一無二のサウンドのように感じましたね。
Perfect Tuneで好みの音に自動で仕上げてくれる
ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesの強みは「Perfect Tune」。
こちらを使うことで、元の音から自動で自分好みの音に仕上げてくれるパーソナライズ機能です。
使い方ですが、アプリから「Perfect Tune」を選択すると、聴覚検査が始まります。

左耳/右耳側それぞれ聴覚検査を行うのですが、所要時間はおおよそ3分〜5分くらいですかね?
かなり小さめの音がピーピーと流れるので、静かな環境じゃないとちゃんと計測はできないと思います。
実際に作られたPerfect Tuneがこちら。左右の耳で測定してイコライザーも調整されていますね。

元のチューニングと比べて、3K~12.5Kあたりの帯域が強調されてバランスの良い音になりました。
こちらで実際に聴いてみると、劇的に良くなったというよりは、味変的な感じですかね。
ボーカルラインが半歩ほど前にくるようになって、中低域も少し抑えられて、邦楽も聴きやすくなりましたね。
洋楽をガッツリ聴く時はOFF、邦楽を聴く時はPerfect TuneをONにするなど、二刀流で使えるようになりましたね。
有線で聴くと
付属の3.5mmオーディオケーブルで有線接続で聴くと、電源ONの時はワイヤレス接続時と同じバランスで聴けるように感じました。
Bluetoothによる音の劣化がないため、少し密度のある音で聴けるようになった気がしますね。
電源OFF時は有線用にチューニングが最適化されていないのか、全体的にモッサリとした音のように感じましたね。基本的には電源ONで使った方が良いかと。
ノイズキャンセリング|ある程度は実用的
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesはノイズキャンセリングにも対応しています。
ノイズキャンセリングボタンを押すと「Half」→「Full」→「OFF」と切り替わっていきます。
「Full」の状態で使ってみましたが、めちゃくちゃ強烈ってわけでもないですけど実用的です。
パッドの密閉度が高いので、耳とパッドの間に隙間が生まれず、ノイズキャンセリング時も安定した遮音性の高さを提供してくれます。
電車の中で使えば少しロードノイズは残る感覚はありますが、ロックでも聴いていればほとんど気にならないレベルにはなります。
ただ音漏れはそれなりにあるので、音量の上げ過ぎには注意が必要です。しっかり密閉していても、iPhoneの音量バー35%〜40%くらいでも少し漏れ始めます。
ノイズキャンセリングの強さと装着感の良さのおかげで、この重厚なサウンドを屋外でも気軽に体感できるのもALCHEM-Eの強みですね。
ちなみに有線接続時もノイズキャンセリングをONにして聴くこともできます。
ノイズキャンセリング | (4.0) |
外音取り込みについて
外音取り込み機能は対応していないように見えて、「Half」が実質外音取り込みモードみたいですね。
周りのノイズを少し抑えつつも、声はOFFの時と比べて明らかに聴こえやすくなっています。
このモードは公式曰く、ヘッドホンで音楽を聴きながらも合わせてアコースティックドラムの演奏ができ、両方の音を聴けるように作られたようですね。
といっても外音取り込み機能はめっちゃ優秀というわけでもなく、あくまで声を聞き取れる程度の必要十分な外音取り込み量って感じです。
外音取り込み | (3.5) |
操作性|レスポンスの早さとボリュームノブの操作感が良い
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesの操作性についてですが、レスポンスがよくストレスなく操作ができるように感じましたね。
ボリュームノブを押し込むと再生/停止、二回押すと次の曲、三回押すと前の曲、ボリュームを回すと音量調整と、基本的にボリュームノブを軸とした操作方法となります。
ヘッドホンなのにボリュームノブを回して操作をするって不思議な感覚ですが、音楽好き・オーディオ好きとしてはテンションが上がる仕様です。
ノイズキャンセリングの切り替えはANCボタンを一回押すだけで切り替わっていきます。
一度「ノイズキャンセリングOFF」を挟んでしまうのは煩わしいですが、操作のレスポンスが良いおかげでストレスはそこまで感じません。
総じて操作については不満なく使えています。
その他アプリでできること

その他アプリでできることは次のとおりです。
- バッテリー残量の確認
- ノイズキャンセリングモードの切り替え
- Perfect Tuneの設定
- イコライザー設定
- モデル名やシリアルナンバー、ファームウェアの確認
- 自動電源OFFまでの時間設定
- ボリュームリミット
イコライザーについて
イコライザーは「Flat」「Jazz」「Classical」「R&B」「Rock」「Electronica」「Acoustic」 のプリセット6種と、「Custom」1種の合計7種から選択できます。

カスタムでは8つのバンドに対して±12dBの調整が可能です。
イコライザーはPerfect Tuneで設定したイコライザーから上掛けもできるので、自分好みの音に仕上げやすくなっています。
マルチポイントの挙動について
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesには2台同時接続を行うマルチポイントも備わっています。
挙動をチェックしましたが、電源OFF→電源ONにした後も自動で2台目のデバイスにも接続されます。
1台目のデバイスが再生中に2台目のデバイスを再生しても割り込みができない仕様になっていますね。その仕様の方がちょっとした効果音で接続先が切り替わったりしないので安心です。
通話品質|想像以上に良い
マイク音声も実際に録音してみました。以下の音声をよければチェックしてみてくださいね!
想像以上にマイク性能が良くて驚きましたね。
音声はクリアに届けられていますし、バックのノイズはしっかり低減できていますし、通話用途にもかなり向いているかと。
こちらも参考にしてくださいね
音の遅延|YouTubeでライブ映像を見る分には問題なし
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesの映像と音声のズレですが、YouTubeやPrime Videoを見る分には全然問題なしですね。
ライブ映像を閲覧しても、ドラムと音が鳴るタイミングはだいたい合っています。
ただ、楽曲制作やゲームプレイに使うと音がズレてしまいますね。
そういった場面では有線接続で使うことをおすすめします。
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphones まとめ
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesをまとめると以下のとおりです。
総合評価
4/5
ALCHEM-E Perfect Tune Headphones

- シンバルの音がとても生々しい
- 洋楽との相性が良い重厚なサウンド
- 密閉感と装着感のバランスが良い
- 操作や電源ON/OFFのレスポンスが早い
- 電源ON/OFF時のSEがシンバルでテンションUP
- LDACなどの高音質コーデックに対応していない
- 自動装着検出に対応していない
4.8
高音
4.7
中音
4.8
低音
4.5
装着感
4.0
ノイズキャンセリング
3.8
外音取り込み
4.5
マイク性能
4.0
利便性
Bluetooth | 5.2 | 最大再生時間 ※ANC ON時 | 45時間 |
コーデック | SBC,AAC | 充電時間 | 不明 |
ドライバー | 40mm ダイナミック型 | 充電端子 | Type C |
専用アプリ | ◯ | 防水 | – |
ノイズキャンセリング | ◯ | 質量 | 356.8g |
外音取り込み | ◯ | ゲームモード | – |
自動装着検出 | ◯ | 保証 | 1年 |
マルチポイント | ◯ | 公式サイト | こちら |
Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesはこんな人におすすめ
- 予算問わずに音質を重視したワイヤレスヘッドホンを探している
- ドラムやシンバルの音の躍動感や生々しさにこだわりたい
- 屋外でもヘッドホンを使うことが多い
- 洋楽ファン
邦楽をメインで聴かれるにはおすすめできませんが、洋楽ファンの方にはぜひ一度聴いてみてほしいヘッドホンのように感じました。
スペックと価格のバランスを考えるとイマイチなようにも見えるかもしれませんが、AAC接続のみでも問題がなければ個性はありつつも価格に見合った音質の良さはあります。
特に洋楽ロックシーンとの相性はとても良いので、重厚で脳を揺さぶるような低音と、生々しいシンバルやドラムの音を体感したい方は、ぜひ一度聴いてみてください。
以上! Zildjian ALCHEM-E Perfect Tune Headphonesのレビューをお送りしました。
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