こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回はドイツのヘッドホンメーカー「ULTRASONE(ウルトラゾーン)」より、約5万円で買える開放型プロフェッショナル用モニターヘッドホン「Signature FUSION Open Back」を紹介します。

ULTRASONEは「SENNHEISER」や「beyerdinamic」と並び、ドイツのヘッドホン御三家と呼ばれるメーカーで、オーディオ界隈ではかなり有名dす。
今回紹介する「ULTRASONE Signature FUSION Open Back」は、密閉型モデル「Signature FUSION」を開放型に変更し、各パーツをブラッシュアップさせたモデルです。
ULTRASONEの開放型モデル久しぶりな気がする。
果たしてどれほどの実力なのか、今回はこちらのSignature FUSION Open Backをアユートさんから提供いただいたので、実機を使ってレビューしていきます
Signature FUSION Open Back 外観・付属品・概要
それではSignature FUSION Open Backの外観や付属品、そして概要をお伝えしていきます。
付属品

- 3m着脱式ストレートケーブル6.3mmプラグ(ストレート)
- 1.2m着脱式ストレートケーブル3.5mmプラグ(ストレート)
- 1.4m着脱式ストレートケーブル4.4mmバランスプラグ(ストレート)
- イヤーパッド(装着済み)
- Signatureキャリングケース
本体
Signature FUSION Open Backの本体はマットな素材感と、スエードとメッシュを使用したパッド、そしてゴールドで印字されたハウジングが特徴。

ULTRASONEのヘッドホンはどれもデザインがかっこいいんですよね。
ちなみにULTRASONEのヘッドホンは、全て自社工場でハンドメイドで制作されています。メイド・イン・ジャーマニー。
ハウジングには「Signature FUSION」とULTRASONEのロゴが金文字で浮き出るように印字されています。

他のSigunatureシリーズ同様に90度に曲げて水平にしたり

折りたたんだりして、コンパクトに持ち運ぶこともできます。

アームの付け根には黒で薄くL/Rと表記されています。個人的にはプロユースであればもう少しL/Rを分かりやすくしてほしいですかねー。デザイン性は損ねるかもしれないかもしれないですけど。

アーム部分には「S-Logic3」のロゴもいつも通り入っております。

このS-Logic3という独自技術が、まさにULTRASONEの個性的な音を作っているのですよ。
「S-Logic 3」は簡単に伝えると、ヘッドホンの音をより自然に、スピーカーで聴いているような広がりのあるサウンドにする技術です。

普通のヘッドホンは、ドライバーが耳に近すぎるせいで、音が“頭の中”で鳴っているように感じることが多いですよ。
S-Logic 3では、ドライバーの配置を工夫することで、音を一度耳の外側で反射させ、スピーカーで聴いているような立体的な定位感を作り出します。この結果、
音の距離感や奥行きがリアルになり、耳への負担も軽減されます。
さらに「DDF(Double Deflector Fin)」という技術が加わることで、特定の周波数帯域をコントロールし、音の広がりや定位をより正確に調整しています。
つまり、プロ用のスタジオモニターのような正確な音像定位を持ちながら、開放感のある自然なサウンドを実現しているわけです。
音楽だけでなく、映画やゲームでも没入感を高めてくれるので、リスニング用途でもプロユースでも恩恵を感じられる技術になっています!
イヤーパッドはSignature FUSIONはシープスキンレザーでしたが、Signature FUSION Open Backはスエード素材になっていますね。

ただ、Sigunature PUREのような超肉厚なタイプではないので、側圧はそこまで強くはならないです。
ヘッドパッドはSigunature PUREと同じスエード/メッシュ素材になっていますが、Signature FUSION Open Backの方がやや薄くて柔らかい素材になっていますね。

ドライバーには新開発の45mmチタンプレイテッド・マイラードライバーを採用。
このドライバーで鮮明でパワフルな低域レスポンスの獲得と全域での高解像度再生の実現しつつ、独自のS-Logic 3テクノロジーによりニアフィールドで設置したモニタースピーカーのように聴き疲れの少ない自然なパーソナルリスニング環境を提供するとのことです。
ケーブル着脱端子には3.5mm 4極スクリューロック式着脱ケーブルを採用。

Sigunature PURE、Signature MASTER MkIIは2.5mm 4極バヨネットロック式を採用していたので、仕様は異なりますね。同じケーブルは使えないので注意。
ケーブルは3.5mm / 6.3mm / 4.4mmバランス それぞれプラグ別に3本付属してきます。ありがたやー。

重さは297.8g。最近試したSignatureシリーズの中では一番重ため。

現行Signatureシリーズスペック比較
品名 | Signature MASTER MkII | Signature FUSION Open Back | Signature FUSION | Signature PURE WHITE | Signature PURE |
---|---|---|---|---|---|
型式 | 密閉ダイナミック型ヘッドホン | 開放ダイナミック型ヘッドホン | 密閉ダイナミック型ヘッドホン | 密閉ダイナミック型ヘッドホン | 密閉ダイナミック型ヘッドホン |
独自技術 | S-Logic ® 3テクノロジー | S-Logic ® 3テクノロジー | S-Logic ® 3テクノロジー | S-Logic ® 3テクノロジー | S-Logic ® 3テクノロジー |
電磁波低減ULEテクノロジー | 電磁波低減LEテクノロジー | 電磁波低減LEテクノロジー | 電磁波低減LEテクノロジー | 電磁波低減LEテクノロジー | |
FGCテクノロジー | FGCテクノロジー | FGCテクノロジー | FGCテクノロジー | FGCテクノロジー | |
ドライバー | 40mmチタンプレイテッドマイラー | 45mmチタンプレイテッドマイラー | 45mmチタンプレイテッドマイラー | 50mmマイラー | 50mmマイラー |
インピーダンス | 32Ω | 32Ω | 32Ω | 32Ω | 32Ω |
再生周波数帯域 | 6 – 42.000 Hz | 8 – 40,000 Hz | 8 – 40,000 Hz | 8 – 35.000 Hz | 8 – 35.000 Hz |
マグネット | NdFeB | NdFeB | NdFeB | NdFeB | NdFeB |
出力音圧レベル | 103dB | 98dB | 104dB | 105dB | 105dB |
折り畳み | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
コネクター | 2.5mm 4極バヨネットロック式 | 3.5mm 4極スクリューロック式 | 2.5mm 4極バヨネットロック式 | 3.5mm 4極スクリューロック式 | 2.5mm 3極バヨネットロック式 |
バランス接続 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | – |
イヤーパッド | シープスキンレザー | スエード | シープスキンレザー | スエード | スエード |
ヘッドパッド | シープスキンレザー/メッシュ | スエード/メッシュ | シープスキンレザー/メッシュ | スエード/メッシュ | スエード/メッシュ |
重量 | 約286g(ケーブル含まず) | 約290g(ケーブル含まず) | 約292g(ケーブル含まず) | 約296g(ケーブル含まず) | 約296g(ケーブル含まず) |
付属品 | 3m着脱式ストレートケーブル6.3mmプラグ (Neutrik製) 1.5m着脱式ストレートケーブル3.5mmプラグ (L字/ Neutrik製) 1.4m着脱式ストレートケーブル4.4mmバランスプラグ (ストレート) イヤーパッド (装着済み) Signatureキャリングケース | 3m着脱式ストレートケーブル6.3mmプラグ (ストレート) 1.2m着脱式ストレートケーブル3.5mmプラグ (ストレート) 1.4m着脱式ストレートケーブル4.4mmバランスプラグ (ストレート) イヤーパッド (装着済み) Signatureキャリングケース | 2m着脱式カールケーブル3.5mmプラグ 6.3mm変換プラグ (ネジ式) 1.2m着脱式ストレートケーブル3.5mmプラグ (ストレート) 1.4m着脱式ストレートケーブル4.4mmバランスプラグ (ストレート) イヤーパッド (装着済み) Signatureキャリングケース | 1.2m着脱式ストレートケーブル3.5mmプラグ (ストレート) 6.3mm変換プラグ (ネジ式) 1.4m着脱式ストレートケーブル4.4mmバランスプラグ (ストレート) イヤーパッド (装着済み) キャリングバッグ | 2m着脱式カールケーブル3.5mmプラグ 6.3mm変換プラグ (ネジ式) イヤーパッド (装着済み) キャリングバッグ |
保証期間 | 2年 | 2年 | 2年 | 2年 | 2年 |
生産国 | ドイツ | ドイツ | ドイツ | ドイツ | ドイツ |
Signature FUSION Open Back レビュー
装着感|意外と軽やかで長時間装着していられる
Signatureシリーズで装着感がキツめのイメージがあったのですが、Signature FUSION Open Backは意外と長時間装着していられますね。
実際に装着してみるとこんな感じ。やはりデザインが良き。

前から見ても飛び出しは少なめです。

音質に影響が出ないほどの側圧はですが、Signature PUREほどキツくはなく、ややガッツリめの装着感に対して耳が痛くなりにくいですね。頭頂部への負担も少なめです。
Sigunature PUREと同じような素材・形状に見えますけど、Signature FUSION Open Backの方が快適に使えますよ。
上位モデルのSignature MASTER MkIIより良いと思います。
一応伝えておきますが、開放型ということもあって音漏れは大きめです。
遮音性もそこまで高くないので、ガチャガチャとしたスタジオでモニタリング用途では使いにくいと思います。
装着感 | (4.6) |
音質|俯瞰的なモニターサウンド
Signature FUSION Open Backの音質ですが、全体的にダークトーンのモニターサウンドで、俯瞰的にモニタリングができるような音のように感じましたね。
今まで紹介してきた「Signature MASTER MkII」や「Signature MASTER MkII」とは異なる傾向のように感じます。
S-Logic 3テクノロジーを搭載しつつも開放型で少しウォームなモニターサウンドのように感じましたが、その特徴が同社の「PRO2500」「PRO2900」に近い気がしますね。2009年あたりの古いモデルですけど。
一聴するとインパクトは少なめなんですけど、聴いていくうちに惚れ込んでいくようなスルメサウンドのように感じました。
4.6
高音
4.6
中音
4.7
低音
音の傾向
音の傾向は全体的に暗めで少しウォームでありつつも、フラット〜やや中低域寄りな音で率直に引き出すモニターサウンドという感じでしょうか。
「Signature MASTER MkII」のように、迫力や歯切れで攻めるようなフレッシュさはなく、とても「俯瞰的」で一歩引いた感じの音なんですよね。
真・三国無双 ORIGINSで例えると、霊鳥の眼を使っているような感じ。
サビだからといって元気よく音が飛び出さず、肩の力を抜いて全体域に80%くらいの力で均等に音を割り振っているような感覚。
一聴したときのインパクトは弱めではありますが、一部の帯域の音だけが強調されすぎず、フラットな目線で音を分析的に聴ける感覚はありますね。
音場
音場については、基本的には広めだとは思いますけど、「ULTRASONEの開放型」という先入観を持っていると、意外と音が近めなように感じましたね。
開放型特有の自然で抜けの良い音ではなく、ULTRASONEの密閉型ヘッドホンらしいニアフィールドでスピーカーで聴いているかのような立体的な音場感です。
そして相変わらず定位が抜群に良く、音の方向性から距離感までとても把握しやすいですね。
高域
高域はULTRASONE特有の鋭さや煌びやかさは抑えられた、刺激感が少なめのウォームな音。
「Signature MASTER MkII」や「Signature PURE」と比べてもジャキジャキとした刺激が抑えられていて、長時間聴いていても耳が疲れにくい印象があります。このあたりは開放型による影響がありそうですね。
同価格帯の開放型ヘッドホンと比べると高域の自然な抜けのよさは控えめですが、かといってヌルい音でもありません。少しマイルドに音の輪郭を描くような感じでしょうかね。
MISIAのSOUL JAZZ BEST 2020を聴いてみると、ブラス楽器隊が瑞々しく弾けるように鳴らしてくれますよ。
電子音だけでなく、アコースティック系の楽器も率直にその音を表現しますね。
中域
ボーカルは艶感などはなく、録音された環境を率直に引き出すような感覚。
ボーカルとコーラスとオケ、それぞれをフラットな距離感で聴かせるタイプなので、ボーカルは少し遠めに感じると思います。
ゆえにボーカル / ギター / ピアノなど、同じ帯域の音に対する分離感はとても良いですね。
ボーカルを中心に聴きたい方や、しっとりとしたボーカルが好みの方はやめておいた方がよいかと。
低域
「Signature PURE」と比べると、ズンっと響くような迫力は控えめになっていますが、開放型としては低域の量感はなかなか多め。
量感は多いが脚色の少ない音で、低音の迫力でさえもテンションを上げずに分析的に聴いてしまいます。
ベースラインの解像度はとても高く立体的な迫力もあり、ガチャガチャとしたロックナンバーでも落ち着いたトーンで分析的に低音の輪郭を追えます。
バスドラムも音像がボヤけずにタイトで音圧もしっかりめに感じられます。
静かな環境であれば低域側のモニタリングはとてもしやすいかと思います。
おすすめジャンルは?
おすすめジャンルについてですが、どモニターサウンドということもあり、どんな楽曲でもOKです。
ロックやポップスはもちろん、ジャズやクラシック、ヒップホップやEDMまでなんでも音源が持つ情報を率直に引き出すような感覚です。
音の粗探しをするようなタイプではなく、楽曲全体を俯瞰的に見るような音のため、ミキシングには向いていそうですね。
またその音の特徴から、ゲーミング用途にも向いているかと思います。
無理に4.4mmバランス接続をする必要はない
はじめは4.4mmバランス接続で聴いていたのですが、据え置き機の「RME ADI-2/4 Pro SE」の4.4mmハイゲインで聴いていると、ローが膨らみすぎる感覚がありました。
そこで6.3mmアンバランス接続に変更したところ、低域の膨らみが抑えられ、各帯域バランス良く聴けるようになりました。
DAP単体で運用する場合は、出力を確保するために4.4mmバランス接続でもいいと思いますが、出力が高めのDACで接続する場合はハイゲインで接続するとローが強めの重たい音になってしまいます。
正直AK HC 2でバランス接続するより、AK HC3でアンバランス接続した方が音は好みでしたからね。
元から出力の高い据え置きDACやオーディオインターフェイスを使っている場合は、無理に4.4mmバランスで運用せず、3.5 / 6.3mmアンバランス接続でも問題ないかと思います。
Signature FUSION Open Back まとめ
Signature FUSION Open Backをまとめると以下のとおりです。
総合評価
4.6/5
Signature FUSION Open Back

- 俯瞰的に分析できるモニターサウンド
- 空間表現力が素晴らしい
- モニターからリスニングまでさまざまな用途
/ ジャンルで使える - 装着感が軽快かつマルイドな音で
長時間の作業に向いている - デザインがかっこいい
- 4.4mmバランスケーブルが付属している
- とくになし
4.6
高音
4.6
中音
4.7
低音
4.7
解像度
4.7
迫力
4.6
装着感
Signature FUSION Open Backはこんな人におすすめ
- 予算5万円ほどでモニターヘッドホンを探している
- 開放型のヘッドホンでも作業環境的には問題ない
- 長時間ヘッドホンをして作業をすることが多い
- リスニングからMIXまでマルチに使えるヘッドホンがほしい
Signature FUSION Open BackはEditionシリーズやHFIシリーズのようなシャキッとしたタイプではなく、昔のPROシリーズのようなウォームかつ立体的で、俯瞰的に音を分析できるサウンドという印象でした。
Signature MASTER MkIIとは異なり、落ち着いたトーンのモニターサウンドで長時間の作業もしやすいので、上位/下位モデルで判断せずに、どちらの方が音が好みか?どちらの方が編集しやすいか?で選んでもいいと思います。
開放型なので騒がしい環境でのモニタリングには向いていませんが、自宅など静かな環境メインで編集作業をするならおすすめです。
ULTRASONEにしか表現できないようなユニークな音でなかなかスルメ感があるので、店頭やイベントで試聴する際はゲインを調整しながら色々な音源を聴いてみてください。


コメント