こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回は、中国の高級ヘッドホンを作っている「HiFIMAN」の新しい「ISVARNA(イシュヴァルナ)」についてお話しします。

お値段なんと468,000円+ポイント10%!
た……た…たすいっ!!
1日あたりだと1,283円ですね。こう考えるとやs……いや、全然高いわ。
このISVARNAちゃんはヘッドフォンでありつつ、フルレンジの平面型ドライバー、低域用にダイナミック型のドライバーを採用したハイブリッド構成のヘッドホンなんですよ。
マルチドライバー搭載ヘッドフォンは、位相差が大きくなって音質が劣化してしまいがちなんですが、独自の搭載方法と角度差の調整によって、これを解決したらしいんですよ。
相変わらずアナログ面では変態的な技術を持っているメーカーです。
ISVARNAちゃんがどのような音が鳴るのか検証していきましょう。
▼動画版はこちら▼
HIFIMAN ISVARNA 外観・付属品
それではHIFIMAN ISVARNAの外観や付属品をチェックしていきましょう。
パッケージ
HIFIMAN ISVARNAのパッケージはこちら。ダンボール箱の中に超堅牢なハードケースが付属してきます。

開封するとこんな感じ。

付属品

- 3.5mmシングルエンドケーブル(1.5m)
- 6.3mmシングルエンドケーブル(3m)
- XLRバランスケーブル(3m)
- マニュアル
付属品には3.5mm / 6.3mm / XLRバランスケーブルがそれぞれ付属します。

いずれも布巻きのケーブルではありますがケーブル素材は不明。
4.4mmバランスケーブルは付属しないので、アレだったら別売りの4.4mmバランスケーブルにリケーブルしてもいいかもしれないですね。
付属品で4.4mmバランス端子欲しかったな……。最近の据え置きDACアンプは4.4mm端子も当たり前につけてくれるし。
本体・ケーブル
本体はこちら。密閉型のように見えますがハウジング側面に通気孔が備わったセミオープン型になりますね。

アルミ製の筐体で、左ハウジングには「HiFiMAN」、右ハウジングには「ISVARNA」と印字されたシンプルかつ高級感のあるデザインとなっています。
HE1000、Ananda、Aryaなど今までのHiFiMANのどのモデルとも異なる丸みを帯びたデザインになっていますね。

こんな形状のヘッドホンが昔に日本でもあった気がするのですが思い出せない……。
イヤーパッドは正円型で外側にはレザー、耳に当たる部分はスエード調の素材になっていますね。

ちなみにドライバーの中身はこんな感じになっています。

基礎としてHiFiMANお得意の、フルレンジナノメートル厚振動膜の平面ドライバーで音作りをしつつ、ダイナミックドライバーはまるでオーディオシステムのウーファーのように下部に配置させて低音を拡散しているようですね。
そしてダストカバーを通じて空気を外に逃してコントロールしているような感じですかね。
まるでヘッドフォンの中に一つのオーディオルームが作られているかのような構成です。
ただ、スピーカーのウーファーとツイーターの場合は点音源のように働くので位相差は小さくなるようですが、ヘッドホンで同じ構成をすると、距離が近くてスピーカーと耳の間の角度が大きくなるため、位相差が大きく発生してしまうようです。これによって音が劣化してしまうとのこと。

この位相差をなくすために、独自の搭載方法と角度差によって位相差の問題を解決したようです。詳しくは知らん!
ちなみに公式の周波数特性表はこちらの通り。かなり簡易的なものですけど。

とりあえず従来のHiFiMANの開放型閉園ドライバーのモデルよりも低域はかなり盛られてそう。
またお得意のステルス・マグネットもモチロン採用しており、従来のマグネットで発生する音質劣化を避けるような仕様にもなっています。

ヘッドバンドは穴ボコタイプで、HE1000シリーズにも搭載していたものと似ていますね。

アジャスターはラッチ方式で、カチカチとスライドさせて長さを調整するようなタイプ。

この方式のタイプは本体が重たくても負担が分散されて軽く感じるものが多いんですよね。好き。
ケーブルの着脱部は3.5mm 3極両出しタイプになっていますね。このタイプならリケーブルの汎用性も高そうです。

最後に重さですが462gです。ハイエンドヘッドホンのなかではまだマシなほうかもしれないけど重いっ!

HIFIMAN ISVARNAの概要・スペック
スペック一覧 | ISVARNA |
---|---|
形式 | セミオープン型 |
ドライバー | フルレンジ平面型ドライバー ダイナミックドライバー |
インピーダンス | 16Ω |
音圧感度 | 93dB |
再生周波数帯域 | 6Hz〜60KHz |
プラグ形状 | 3.5mm3極 / 6.3mm3極 / XLR 4pin |
コード長 | 1.5m / 3m / 3m |
重量 | 462g |
リケーブル対応 | 3.5mm 3極両出しタイプ |
リモコンマイク | × |
保証期間 | 3年 |
HIFIMAN ISVARNA レビュー
装着感|重量に対して装着感は良さげ
HIFIMAN ISVARNAの装着感は本体重量に対してなかなか良い方だと思います。
実際に装着してみたらこんな感じです。

まあ据え置きヘッドホンなんで、デザインや見た目は気にする必要はないと思いますけどね。
ただ重たいことには変わりはないため、長時間装着していると頭頂部が少し痛くなってくるような感覚はありました。
装着感 | (4.5) |
音質|低音の化身
HIFIMAN ISVARNAの音質についてですが、低音の質感がヤバいですね。
今まで聴いてきた20〜40万クラスのハイエンドヘッドホンの中で、低音の質感がもっとも”上質”なように感じました。
低音の化身のようなヘッドホンです。
ISVARNA単体だと比較対象がなくて評価しにくいので、最近同価格帯のハイエンドヘッドホンを買いましたけど、正確が全く逆ですね。完全にリスニング向けの音です。
- DAC / アンプ:HiFiMAN GoldenWave SERENADE
- アプリ:Apple Music
- 接続方式:XLRバランス接続
- エージング:50時間ほど

HIFIMAN ISVARNAの音の特長は次のとおりです。
30万〜50万円の有線ヘッドホンの評価軸となります
4.8
高音
4.7
中音
5.0
低音
もうさァッ 無理だよ 46万のヘッドホンの評価軸なんて 想定してないんだからさァッ!
もっと ハイエンドヘッドホンのレビューを しないとさァッ!(ナガノラッタ談)
音の傾向
音の傾向は超リスニング向けのウォームなサウンドで、音のバランスは低域寄り。
ブーミーと感じるギリギリラインまで低音の主張がありますが、中高音もとても繊細で伸びやかに鳴るので、低音の量感があまり気になりません。
低音
その低音の質感が素晴らしいのですよ。
低音のレンジがとてつもなく広く、この音源ってそこまで低い周波数まで収録されていたの!? と思うくらい低く低く沈み込みます。
かなり量感も多めではあるのですが、その量の中にある”質”も非常に高く、膨らみがちな低音の中でも解像度はしっかり高いんですよね。
低音は打ち込みやエレキベースの勢いや解像度よりも、ウッドベースやコントラバス、パーカッションなどの生楽器系をよりリアルに表現するためにフォーカスしています。
といっても電子音も苦手ではなく、ヒップホップやエレクトロミュージックでも迫力あるサウンドを再現します。ただ、ゴリゴリのヒップホップは上品になりすぎますけどね。
高音
低音だけでなく高音の質感も素晴らしいですね。
ブラス系楽器にフォーカスしているのか、サックスやトランペットの音が奏者の口元まで見えるんじゃないかな?と思うくらいリアルに再現します。
ハイハットも余韻たっぷりにシャンシャンと心地よく響き渡りますし、自然な残響も感じられますね。
ただ、アンプ側にはそれなりの駆動力は必要で、20万〜30万クラスの出力の高いアンプがないと高域が少し詰まって本領発揮できない感覚はありますね。めっちゃ鳴らしにくい。
なんだったらSERENADEでも若干物足りない感覚がありますからね。ISVARNAの本領を発揮しようと思ったらPRELUDE(約40万円)レベルまで必要だと思う……。
試しにDC-Elite(3.5mm接続)でも試してみましたが、イイ音ではありますけど、音が全体的に薄くなって実力が全然出しきれていない感がすごかったです。
中音
中音域は非常にウォームで艶やかなサウンド。
ウォームな音でありつつも、クラシックやジャズなど多くの楽器が混在する楽曲でも、同じ帯域の楽器もしっかりと分離されて聴こえてきますね。
ボーカルラインはそこまで主張する感じでもなく、楽器隊とフラットな立ち位置か、ボーカルによっては半歩ほど引いたように感じることもあります。
低音の量感はかなり多めではありますが、ボーカルがマスクされているような感覚はありません。
むしろ低音の質が良すぎて、低めの男性ボーカルをすごく深みのある声で渋く聴かせてくれますよ。
女性ボーカルだとYOASOBIのようなハイトーンボイスよりも、宇多田ヒカルやヨルシカの少し低めの楽曲の方が合うと思います。
宇多田ヒカルだと「俺の彼女」、ヨルシカだと「月に吠える」くらい低いボーカルの方がISVARNAの良さを引き出せると思います。
あくまで、ボーカルが少し引っ込むだけであって質感が悪いわけではなく、むしろボーカルソロになったときの声の質感がやばいほどリアリティで鳥肌ビッシリ立ちますよ。
音場の広さ
セミオープン型を採用していることもあり、密閉型でありつつも開放型のような自然な広がりを持ちます。
横、縦、奥行き、全方向に対して広く、クラシックを聴けばホールで聴いているかのようなリアルな音像が浮かび上がってきます。
おそらく低音の立体感が凄まじいから、音場が広く感じるのでしょうね。
ウォームな音ではありますが定位感にも優れていまして、楽器帯ごとの音の方向性や距離感も把握しやすいです。
おすすめのジャンル
一番おすすめのジャンルはジャズですね。マイルス・デイヴィスの「So What」を聴いた時はビビったもん。
ウッドベースってそこまで低い周波数まで沈み込むの!? と驚くほど深い音を出してました。トランペットの音も超リアル。
ジャズの他にも、小編成のクラシックや、アコースティック編成の楽曲との相性もよく感じました。大編成のオーケストラは少し音がウォームすぎるようにも感じましたけどね。
それ以外にもソウルやR&B、チルテイストのヒップホップなどブラックミュージック全般との相性もよかったです。
The Weekend、Frank Ocean、Thundercat、FKJあたりが好みの方にもおすすめですよ。
ただ、Kendrick LamarやKanye Westを聴くと上品な音になりすぎるので、ゴリゴリのヒップホップには合わないかなという印象でした。
ロックやポップスを聴く場合は、少しもたつき感があるというかアンマッチな感覚がありますね。それらのジャンルを聴くときは、できる限りアコースティック編成の楽曲を選んだ方がISVARNAの良さを引き出せると思います。
HIFIMAN ISVARNA まとめ
HIFIMAN ISVARNAをまとめると以下のとおりです。
総合評価
4.0/5
ISVARNA

- 低音の質感が神がかっている
- ジャズやクラシックとの相性が抜群
- 楽器のディテールがリアル
- ウォームな音質でしっとりと聴きこめる
- 重さの割には装着感が良い
- 価格がとにかく高い
- 駆動力が必要で鳴らしにくい
- 4.4mmバランスケーブルが付属しない
- ロック・ポップスとの相性はイマイチ
4.8
高音
4.7
中音
5.0
低音
4.7
解像度
5.0
迫力
4.5
装着感
HIFIMAN ISVARNAはこんな人におすすめ
- 予算問わずにとにかく音が良いハイエンドヘッドホンを探している
- 低音の質感と量感にとにかくこだわりたい
- ジャズやクラシック、アコースティック編成の楽曲を好んで聴く
- ソウル、R&Bなどのブラックミュージック系を好んで聴く
ISVARNAは、低音の質感が極めて高く、特にジャズやクラシックに最適なヘッドホンのように感じました。
しかし、価格の高さと駆動力の必要性がネックになるため、ヘッドホンだけでなくアンプ側にもかなりの投資は必要になると思います。
ロックやポップスには合わないので決して万能機というわけでもないですけど、この上質すぎる低音をぜひ一度体感していただきたいですね。
ぜひオーディオイベントや専門店などで一度聴いてみてください。
以上! HIFIMAN ISVARNAのレビューをお送りしました。
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