今回はモニタースピーカーでも人気の高いブランド「ADAM Audio」から、同社のモデルとしてはかなり安いUSB-C一本で繋げられるコンパクトモニタースピーカー「D3V」を紹介します。

今回、メーカーさんからPR依頼を受けたんですが……。実は依頼を受ける前から自分で買っておりまして。発売当初からすごく気になっていたスピーカーだったんですよ
サウンドハウスでクッソ高いDACを買って4万ポイントくらい余ってたから、そのポイントで「D3V」を買ってたんですよね。今年の6月くらいに。
ただ、全然スケジュールが空かなくて開封さえできていない状況だったんですよ。
その後にちょうどメーカーさんから依頼があったので、ようやく使える機会ができたわけですよ! キッカケを作っていただき感謝ァ!!
- 3.5インチウーファー+両側パッシブラジエータ搭載で、サイズからは考えられない低音を実現
- ADAMおなじみのリボンツイーター「D-ART」採用
- USB-C直結でPCとシンプルに接続可能
- 環境補正スイッチ(POSITION / DESK / ROOM)で設置条件に対応
- フロントの多機能ノブで音量・入力切替・左右反転まで操作可能
- ヘッドホン出力付きで切り替えもラク
- コンパクト設計ながらスタンドやマイクスタンド設置にも対応
- 価格は43,000円
要はUSB-C一本でADAM Audioの本格的なモニターサウンドを楽しめるデスクトップサイズのスピーカーというわけですよ。
このD3V、制作界隈でも非常に評価の高いモデルなのですが、僕も実際に使ってみましたけど、もう評判通りの素晴らしいスピーカーでしたよ。
約4万円でこのコンパクトサイズで、この音質はふつうにスゴイです。
プロ向けではありますけど、音楽鑑賞用として一般ユーザーやガジェット愛好家、ポータブルオーディオ好きの方でも十分すぎるくらい満足できる仕上がりになっているかと思いますよ
ということでこちらのD3Vを、リスナー視点で深掘りして紹介していきたいと思います。
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ADAM Audioとは
ADAM Audio(アダム・オーディオ)は、1999年にドイツ・ベルリンで設立されたモニタースピーカーブランドです。

プロの制作現場でも絶大な信頼を得ているモニタースピーカーの定番のブランドで、日本の著名なアーティストだと「星野源」さんなども使用されています。
最大の特徴は、同社が独自開発したハンドメイドで作られたリボンツイーター「ART(Accelerated Ribbon Technology)」。
通常のドーム型ツイーターと違い、蛇腹状の振動板を使うことで、空気を圧縮・解放するように効率的に動かし、より繊細で滑らかな高域再生を実現します。
このリボンツイーターは同社の「A SERIES」や「T SERIES」などの上位モデルに搭載されており、ADAM Audioの代名詞的存在になっています。
「プロの現場基準の音」を家庭やデスクトップにも落とし込んでくれるメーカーであり、D3Vはその流れをさらに推し進めたモデルといったところでしょうか。
ADAM Audio D3V 外観・付属品・基本機能など
それではD3Vの外観・付属品をチェックしていきましょう
付属品はシンプルですが、実用的な内容です。

- 電源ケーブル(直結タイプ)
- USB-Cケーブル(PC直結用)
- 角度付きデスクトップスタンド
- クイックスタートガイド
ADAM Audio D3Vは、一見するとスタジオ用モニターをそのまま小さくしたような無骨なデザインが特徴。モニタースピーカーはこれでいいんだよ。

高さは約19cm、幅は12cmほどと非常にコンパクトで、デスクの上に置いても圧迫感がありません。

全体はマットなブラック仕上げで統一されており、質感も落ち着いていて安っぽさを感じさせない仕上がりです。
フロントパネルの上部にはADAMの代名詞でもあるリボンツイーター「D-ART」を搭載。蛇腹状の振動板がうっすらと見えるあたりがいかにも“ADAMらしい”雰囲気。

中央には3.5インチのアルミコーンウーファーが配置。
右下にはアルミ削り出し風の多機能ノブが備わっており、音量調整だけでなく入力切替やスタンバイ、左右反転まで一つで操作可能。

最初にUSB-Cでパソコンと接続しても音が出なくて焦りましたが、2回ボリューム部をクリックすることで入力切り替えができました。
そのほかには入力確認用のLEDと、ヘッドフォンジャックが搭載

両サイドにはパッシブラジエータが埋め込まれています。

サイズの制約がある小型スピーカーで低域を補強するための設計で、このサイズからは考えられないような低域の量感を実現します。
背面にはTRS入力とUSB-C端子、さらに設置環境に合わせて低域や反射を調整できる「POSITION」「DESK」「ROOM」と切り替えが可能なDSP音響補正スイッチが搭載されています。

角度付きスタンドが最初から同梱されているのはありがたい。付属していないスピーカーもけっこうありますからね。
底面には3/8インチのネジ穴が切られているので、マイクスタンドや専用スタンドに固定して設置することも可能です。
実際にデスクトップに置いてみるとこんな感じです。

やはりモニタースピーカーはこんな感じの質実剛健な見た目が一番映えますね。
ADAM Audio D3V スペック
周波数特性 | 45 Hz – 23.2 kHz(-6dB) / 48 Hz – 22.6 kHz(-3dB) |
総合システム出力 | 240W Peak / 200W RMS(ペア) |
低域出力 | 80W Peak / 70W RMS(1台) |
高域出力 | 40W Peak / 30W RMS(1台) |
入力端子 | USB-C、TRS(バランス) |
クロスオーバー周波数 | 4kHz |
寸法(mm) | 高さ200 × 幅115 × 奥行150 (スタンド使用時は高さ240) |
重量 | 1.85kg + 1.73kg(梱包重量 5.6kg) |
付属品 | 電源アダプター、USBケーブル(C to C)、USB変換プラグ(C to A)、スタンド、シール式ゴム足(平置き用)、スピーカーケーブル(2m) |
USB接続時は48kHz / 16bitまでの再生になるようですね。せめて24bitまで対応してほしかったですね。
TRSでアナログ接続した場合は、内蔵のADコンバーターでアナログ信号をデジタル信号で変換し、48kHz/24bitで動作するようです。
ハイレゾ音源を完全ロスレスで聴きたい場合以外は、無理にアナログで入力せず、USB-C直結でも問題ない気がしますね。
ADAM Audio D3V レビュー
DSP音響補正について
まず音質レビューに入る前にDSP音響補正機能について解説します。

D3Vには、本体背面に「POSITION / DESK / ROOM」という3種類の音響補正スイッチが搭載されています。
これはアナログ回路ではなく、DSP(デジタル信号処理)によるチューニングで動作しており、設置環境に合わせてスピーカーの出音を最適化できるようです。
たとえば「POSITION」では、スピーカーを机の上に置くのか、壁際に寄せるのか、部屋の角に置くのかで低域の量感が変わるため、その差をDSPで補正してくれます
「DESK」はその名の通り、机の反射音に対する補正。机の広さや材質によって中域がこもったり高域が減衰したりしますが、このスイッチで余分な響きを抑えることができます。
「ROOM」は吸音材の有無によって調整が可能になっています。
どの設定にすべきかは、以下の画像をみたら一目瞭然です。

僕はPOSITIONをSTAND、DESKをLARGE、ROOMをUNTREATEDにしています。
音質
今回はUSB-C接続で検証しました。すみません、TRSバランスケーブルがなかったので、デジタル接続でしか検証できていません。
その音質ですが、正直今まで使ってきた3〜4万クラスのUSB-C直結型のデスクトップスピーカーと比べて、レベルが違います。
なんでこのサイズでここまで音が広がるの?っていうくらい臨場感のあるサウンドが出ますね。この価格帯のスピーカーは色々聴いてきましたけど、一番サイズと価格に対しての音のギャップを感じたかも。
臨場感や低音の量感でごまかした音ではなく、解像度も高くて定位も定まっていて、ちゃんとしすぎるくらいモニタースピーカーしてます。
音の傾向
音の傾向はモニタースピーカーらしく分析的で解像度や定位の良さを重視した音ではあるのですが、サイズからは考えられないような低域の量感や音の広がりのおかげで、とてもダイナミックなサウンドに感じます。
モニタースピーカーだからスッキリとしたフラット系のサウンドだろうと思っていたら、いい意味で裏切られたと思います。
音場
音場はかなり広く感じます。
よくあるモニタースピーカーのようにニアフィールドで直線的に音が迫ってくる窮屈な感じではなく、部屋の隅々までいっぱいに音が広がっていくような臨場感のあるサウンドです。
音を広げすぎると定位が甘くなり、音の方向性や距離感が分かりにくくなりそうですが、D3Vはその広げた音の中でも左右から奥行きまで、収録された楽曲を三次元的に把握でぎす。
ボーカルも左右ではなく、しっかり真ん中に定位しており、デスクトップに設置すれば、まるでディスプレイから音を発しているかのように聴こえてきます。
この音の広がりと定位の良さもD3Vの強みになるかと思います。
低音
低域はこのサイズ感のスピーカーを使ったことがある人ほど驚くと思います。めちゃめちゃ出ます。
ブーミーにズンズン鳴らすようなタイプではなく、楽曲が本来持つ自然な深みや迫力を再現している感覚に近いかと。
広がりはありつつもベースラインやバスも追いやすく、その輪郭をくっきりと描きます。
ただ、エレキベースの下限やサブベース、バスドラムなどの低い周波数帯の音は、サイズなりに沈み切らない感覚もありますね。
それでもこの価格とサイズ感で、これだけ臨場感のある低音を出せるのはスゴイと思います。
高音
高域はモニターらしく粒立ちが良くて解像度重視の高域なのに、キツさを全然感じないんですよ。
シンバルの余韻やアコースティックギターの弦の震え、ストリングスのきらめきが繊細に描かれているのに、耳あたりはマイルド。
マイルドと聴くと「伸び切らないモヤっとした団子っぽい音なのでは?」と思うかもしれませんけど、D3Vはそういうわけではないんですよ。
ちゃんと伸びるし、ちゃんと粒立ちが良いし、ちゃんと煌びやかに鳴らせているモニター的な高域なのに、詰まり感はなく耳あたりはが良くて聴き疲れしにくいのですよ。
これがADAM Audioの伝家の宝刀、リボンツイーターの実力なのでしょうかね。この技術をヘッドホンでも応用できないかな……。
中音
ボーカル域はこもり感は一切なく、スタジオの録音環境が情景に浮かんでくるかのように生々しく声を響かせます。
定番モニターヘッドホンのような粗探しのようなモニター調のボーカルではなく、あくまでナチュラルで楽曲に調和しているような印象。
リボンツイーター側にもボーカルが乗るのか、女性ボーカルはとても伸びやかでキレ〜イに聴かせますね。
ギターやピアノなどの同帯域のメロディラインは半歩引いたような距離感で主張は少なめ。どちらかといえば同帯域だとボーカルが際立つように感じましたね。
モニターらしく誇張感が少なく、それでいて味気は損なわないナチュラルで素直な印象の中音域です。
おすすめジャンル
モニタースピーカーなのでおすすめジャンルも何もないですね。録音環境をそのまま引き出すことに徹しているので、基本的になんでもOKです。
また、音楽鑑賞や制作用途だけでなく、低域の量感が多くて声も聞こえやすいので、ゲームや動画/映画鑑賞にも向いているように感じましたね。
操作性
ADAM Audio D3Vは、コンパクトながら操作性の部分でもよく考えられています。
フロント右下に配置された多機能ノブが便利で、音量調整はもちろん、クリック操作によって入力切替や左右反転、スタンバイモードの切り替えまで一手に引き受けます。

- 1回押す→ミュート
- 2回押す→入力切替え(アナログ/USB-C)
- 3回押す→L/Rのチャンネルを入れ替えられる
- 2秒間長押し→スタンバイモードへ移行
小型スピーカーの場合、背面にボリュームやスイッチが隠れていて操作しにくいモデルも多いのですが、D3Vは正面に集約されているのでストレスがありません。
フロントにはヘッドホン出力も搭載されており、挿すとスピーカー出力が自動的にミュートされる仕組みになっています。
ただ、簡易的なヘッドホン出力で、ノートパソコン直挿しと変わらない程度の音質だと考えた方が良いです。
ファームウェアアップデートにも対応
デスクトップスピーカーとしては珍しく、ファームウェアアップデートにも対応しています。
製品登録が必要なのでちょっと面倒ではあるのですが、一応やっておいた方がいいです。
直近で公開されたV1.7では、以下の内容でアップデートされています。
- 自動スリープモードを無効化できる機能を追加
- ユーザーフィードバックに基づいた、小音量再生時のパフォーマンス改善
アップデートするまでは小音量時はモヤっとした音になっていましたが、アップデート後は小音量時でも元のバランスは壊さない明瞭なサウンドになっていました。
ADAM Audio D3Vまとめ
こんな人におすすめ
- 予算3〜5万円台でPCスピーカーを探している
- 楽曲制作/編集用のモニタースピーカーが欲しい
- 音楽鑑賞用に使える本格的なスピーカーが欲しい
- コンパクトでデスクトップにも設置できるスピーカーが欲しい
- 低音の臨場感や音の広がりを重視したい
元から評判は良いのは知っていましたが、実際に使ってみると評判以上に感動しましたね。
ボクは普段だとペアで10万クラスのモニタースピーカーを使っているので、さすがにD3Vに乗り換えることはありませんが、「乗り換えてもいいかも……」とちょっと思えたくらい素晴らしいスピーカーだと思いました。
このD3Vの上位モデルで、約10万円ほどで買えるデスクトップスピーカーが出たら購入を検討するかも。
3〜5万クラスでデスクトップスピーカーを考えている方、D3Vいっておきましょ。これ間違いないやつです。
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