こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回は界隈でも高い人気を誇るイヤホンブランド「水月雨 (MOONDROP)」より、初のイヤーカフ型ワイヤレスイヤホン「Pill」を買ってきましたのでレビューします。

発売当初からとても人気がありまして、一時期品切れになったほど。
見た目は錠剤型の可愛らしいデザインですが、その音質は水月雨ということもあって超本格的です。
- 13mm 円形低歪みダイナミックドライバーを搭載
- 特許取得済み低域強化アルゴリズム内蔵
- 「B&K 5128」を用いた新たなチューニングターゲット「VDSFfor OWS」を確立
- ダイポール型指向性音伝送技術音漏れ音の心配なし
- NPUコアAIノイズキャンセリングによりクリアな通話が可能
- マルチポイント接続対応
- 連続再生本体8時間 + ケース20時間
- 価格は6,750円
音質に関する特徴が多いっ!
Pillは「B&K 5128」という日本だとおそらく700万円くらいするヘッドシュミレーターを使ってリスニングテストと繰り返して、正確で人間の耳に忠実な音響調整を実現できるよう、新たなチューニングターゲット「VDSFfor OWS」を確立したとのこと。
ま〜簡単に伝えると、オープン型でもバランスの良い音で聴けるようにめっちゃチューニングにこだわったって感じですね。
音質とデザイン特化のようにも見えますが、スペックも全然悪くないんですよね。
そしてこの子を最近使っているのですが、注意点はあるんですけどふつうに音いいんですよ。1万円以下のイヤーカフ型イヤホンなら一番音質は好みだし、なんやったら最近Pillをメインでイヤーカフ型使ってます。
ということでPillがどれほどの実力なのか、以前のワイヤレスイヤホンランキングでもイヤーカフ型コスパ部門1位として紹介したEarFun Clipと比較しながら検証していきましょう。
YouTube版はこちら
水月雨 (MOONDROP) Pill 外観・付属品
それでは水月雨 (MOONDROP) Pillの外観や付属品をチェックしていきましょう。
パッケージ
Pillのパッケージはこちら。スケルトン仕様でおしゃれ!

付属品

- USB Type Cケーブル
- マニュアル
付属品は充電ケーブルのみと超シンプルです。
充電ケース・本体
充電ケースはその名の通り錠剤のような形状をした近未来的なデザイン。普通に可愛くね?

ただ、独特なデザインがゆえに厚みはけっこうある……。ズボンポケットに入れるとボコっとしそう。

上部にストラップホールがあるので、取り付けてバッグに吊り下げたり、別売りでサードパーティー製のケースも売っているのでバッグにぶら下げて使ってもいいかも。

充電端子はUSB Type Cに対応。

ワイヤレス充電はさすがに対応していませんでした。
充電ケースの開き方がユニークで、円柱部分がクルッと回して本体を取り出すような仕様になっています。

中途半端な位置で止まることもなく、開くか閉じるかのどちらかの状態になります。
この開き方が意外と便利で、片手で持っているときも親指一本でクルッと回せるので、本体へのアクセスがしやすいのですよ。
本体もブリッジ部が大きく飛び出しているので取り出しやすさも問題なし。

ただ、イヤホンを収納するときに引っかかり感が少しあって、スムーズに収納できないことは多いですかね。そこまで気にならないですけど。
イヤホン本体はこちら。今回はブラックを選びましたがダークグレー調のマットな質感で配色や質感は好み!

ちなみにカラーバリエーションはブラック、グリーン、レッドの3色となっています。他の色もおしゃれ。グリーンも良きですね〜。



背面のタッチパネル部の「MOONDROP」「Pill」のロゴも近未来感があって良き

ドライバーが13mmと大口径のものを搭載しているためか、全面の玉の部分は大きめ。
上部にはL/Rの表記もありますが、パッと見どちらが右か左かわかりにくい……。

EarFun ClipやCCと比べるとこんな感じです。

デザイン的には今回のClipが一番好みよ。
最後に重さですが、総重量は約58.8g、本体片耳の重量は約5gです。


EarFun Clipが総重量は約49g、本体片耳の重量は約5.8gなので、EarFun Clipよりも軽いですね。
水月雨 (MOONDROP) Pill スペック
項目 | Pill | EarFun Clip |
---|---|---|
ドライバー | 13mmダイナミックドライバー | 10.8mmダイナミックドライバー |
Bluetooth | 6.0 | 6.0 |
コーデック | SBC, AAC | SBC, AAC, LDAC |
再生時間 | 本体:最大8時間 / ケース込:最大28時間 | 本体:最大10時間 / ケース込:最大40時間 LDAC接続時 本体:最大5.5時間 / ケース込:最大22時間 |
充電端子 | USB Type-C | USB Type-C |
ワイヤレス充電 | – | – |
防水 | IPX4 | IP55 |
自動装着検出 | 非対応 | 非対応 |
低遅延モード | 対応 | 対応 |
専用アプリ | 対応 | 対応 |
マルチポイント接続 | 対応 | 対応 |
質量 | 本体片耳:約6g | 本体片耳:約5.7g |
空間オーディオ | 非対応 | 対応(シアターモード) |
保証 | 1年 | 18ヶ月 |
価格 | 6,750円 | 7,990円→セール時で6,500円ほど |
EarFun Clipと比べると、スペック面では勝てない要素は多いですね。
ただ、Pillも必要な要素は抑えているので、性能面で大きな差があるわけでもないかな〜という印象ですね。
水月雨 (MOONDROP) Pill レビュー
音声ガイダンスが可愛い
本体を取り出して装着すると「でんげん おんっ♪」という舌足らずな女の子の可愛い声が聴こえてきます。かわいい。
ペアリング中は「とぅっとぅとぅ♪」って言います。かわいい。
接続完了すると「せつぞくかんりょっ↓↓」と気だるそうに言われます。なんでそんな嫌そうな言い方するん……。
装着感|軽いし安定している
装着感についてですが、ふつうに良いと思います。
実際に装着してみるとこんな感じ。デザインもアクセサリー感覚で身につけられます。

前から見るとこんな感じ。

EarFun Clipと比べてもホールド力は高いと思いますが、ジョギングなどのスポーツ用途だとちょっとずれてくるかも
オフィスでの仕事や読書・カフェ・散歩など、激しい動きを伴わない環境での使用についてはストレスなく使えます。
ただ、ブリッジ部が少し長くてドライバーも大きい影響でしょうか、イヤーカフ型とはいえ装着位置が耳穴に近いように感じます。
音質面では良い影響はありますが、耳穴近くでやや異物感があったり、イヤーカフ型にしては少し閉塞感を感じたりします。
装着感 | (4.7) |
音質|1万円以下では一番好き
水月雨 (MOONDROP) Pillの音質についてですが、さすがMOONDROP! チューニングがとても上手。
個人的には1万円以下のイヤーカフ型の中では、音質面では一番気に入りましたね!
さすがに2万円クラスのShokz OpenDots ONEと比べると”質”では負けますけど、聴きやすいチューニングですし、価格も安くてラフに使えるから、最近Pillばっかり使ってます。

水月雨 (MOONDROP) Pillの音の特長は次のとおりです。
3.9
高音
3.9
中音
3.9
低音
音の傾向
音の傾向はMOONDROPらしくボーカルを中心に質感高く聴かせつつ、基本的には少し柔らかめのニュートラルサウンドで聴き疲れもしにくいです。
オープン型でもスカスカになったり、高域がシャリついたり、低音が多すぎたりしないように、ふつうに水月雨のカナル型イヤホンで聴いているようなバランスになっています。
想像以上に「ふつうのカナル型」のような聴こえ方で、驚くかと思いますよ。
高音
高域は刺さりや刺激が抑えられたマイルドな音。
伸びはそこまで良くない(といっても価格を考えれば十分)ですが、モッサリとした感覚はなく、耳が肥えていない限りはクリアに聴こえるかと思います。
粒立ちはそこまで良いわけではなく、どちらかといえば滑らかに鳴らすような柔らかな高音。
中音
一番の強みが中域のボーカルの表現力の高さ。
女性ボーカルに対して帯域を広くフォーカスしているようで、Aメロの低く甘く響かせる声から、サビの張り上げる声など、ボーカルに含まれている周波数をカットせずしっかり描き切るような感覚。
要は情報量が豊富なボーカルを、低価格のイヤーカフ型ワイヤレスイヤホンでありつつ表現できているのですよ。
ボーカルの表現力に力を入れているからこそ、全体のバランスも良く聴こえるのかと思います。
楽器隊と比べて半歩ほど前に出たような距離感で、ボーカルだけが際立ちすぎず楽曲の中に調和しています。
低音
低音はイヤーカフ型としては意外と量感が多く、楽曲を下支えするガッシリとした土台として成り立っています。
タイトすぎず滑らかに広がる中低音ではありますが、ボーカルラインはマスクしない絶妙な低音の量感になっていますね。この点はMOONDROPのチューニングの旨さを感じます。
といいつつキックにはドスっとした迫力もあったりと、上品さとノリの良さどちらも兼ね備えた低音となっています。
おすすめのジャンル
おすすめジャンルは女性ボーカルもの全般
レスポンスはそこまで早い方ではないので、ゴリゴリのロックやEDMは向いていないかもしれませんが、ポップスやジャズ、R&B、シティポップ系の女性ボーカルものはとくにおすすめです。
EarFun ClipやSOUNDPEATS CCと音質を比べると
EarFun ClipやSOUNDPEATS CCと音質を比べると、低音の迫力や量感は他2機種には負けるような印象です。”質”としての実力もおおよそ同じくらい。
ただ、Pillは他の2機種とは違って「低域は迫力!」「ボーカルは前に!」「高域はクリアに!」のようなメリハリ感を重視したチューニングではなく、低域〜中域〜高域にかけての道のりがとても丁寧で滑らかなのですよ。
耳の肥えたオーディオファンでも、このチューニングなら全然イケる!と思わせるチューニングの旨さがPillにはあります。
屋外など騒がしい環境でノリ良く音楽を聴くならClipやCCの方がいいとは思いましたが、室内でボーカルを中心に音楽をしっとりと楽しむならPillの方が向いているように感じましたね。
音質だけで評価するまら、他2機種よりもPillの方が断然好みです。
音漏れについて
音漏れについては、音量30~40%くらいだとシャカシャカと音漏れしてる感じはありますね。
めちゃくちゃ音漏れ対策できてる感じではないです。
音量を上げすぎなければオフィスやカフェでも音漏れを気にせず使えるかなって感じですね。
音量50~60%だとオフィスでも音漏れしそうな感じはします。
操作性|操作性は良いがカスタマイズはできない
水月雨 (MOONDROP) Pillの操作性は、割り振りに不満が残りました。

操作方法一覧は次のとおりです。
項目 | 操作方法(デフォルト) |
---|---|
再生/停止 | L or R側を2回タップ |
曲送り | L側を3回タップ |
曲戻し | R側を3回タップ |
音量を上げる | 非対応 |
音量を下げる | 非対応 |
電話を受ける | 着信中にL or R側を1回タップ |
着信拒否 | 着信中にL or R側を長押し |
通話終了 | 着信中にL or R側を2回タップ |
ゲームモード | L or R側を4回タップ |
音声アシスタント | 非対応 |
ペアリングモードへの移行 | LとR側を長押し |
タップするたびに「カチっ」「カチっ」と操作音が鳴るおかげで物理ボタン感覚で操作ができます。
ただ、音量調整の割り振りがありません。アプリでもカスタマイズができません。
1回タップの操作が空いとるやないか……。そこに割り振らせてくれよ〜……。
アプリについて
水月雨 (MOONDROP) Pillはアプリに対応しています……がっ、なかなか癖があります。

アプリでできることは次のとおりです。
- バッテリー残量の確認
- ローゲイン、中ゲイン、ハイゲインの切り替え
- その他の設定
→One Bring two(マルチポイントのON/OFF) - チューニングの変更
→Reference、Bass+、Bass- - オンラインインタラクションDSP
- ユーザーガイド
→閲覧しようとしたら失敗する - ファームウェアアップデート
発売初期はアプリそのものに接続できないなどの不具合がありましたが、今は接続はできています。
ゲインの変更が可能な珍しい仕様になっています。

デフォルトだと「ハイゲイン」になっていますが、この状態だと最小音量が少し大きめになってしまいます。
屋内で細かな音量調整をしつつしっとり聴きたい場合は「ローゲイン」「中ゲイン」、屋外でしっかり音楽を聴きたい場合は「ハイゲイン」がおすすめです。
チューニングの変更で、Reference、Bass+、Bass-の3つから選べますが、個人的にはReferenceのままでいいかな〜ってなりました。

Bass+にすると中低域が膨れてボーカルがやや篭ってしまって、Pillの強みがなくなるように感じました。
オンラインインタラクションDSPは、要はパラメトリックイコライザーですね。

他のイコライザーのように帯域ごとのバンドが並列に並んでいるわけではなく、周波数ごとの波形をチェックしながら超細かく音質を調整できるめちゃめちゃ本格的なやつです。
慣れていない方は使いづらいかと思いますが、本気を出せばドライバーの性能の範囲で思い通りの音を作れるかと思います。
ガッツリ設定して遊んでも面白いと思いますけど、デフォルトの「Reference」でも気に入っているのでそのまま使っています。
アプリはうまく反映されなかったり、途中でフリーズしたり、操作のカスタマイズができなかったりと不満が残る点が多かったです。
マルチポイントの挙動について
マルチポイントについて、一部Pillでマルチポイントが使えない!というポストがSNSで見かけたりしてたので心配でしたが、最新バージョンにすると問題なく使えています。
というのも設定の項目がめっちゃ分かりにくいところにあるんですよ。
アプリのゲイン設定の「その他の設定 >」の部分をタップすると、「One Bring two」という項目があるのですが、こちらをONにするとマルチポイントが使えるようになりました。

ちなみに電源OFFにした後に「One Bring two」の項目をチェックするとOFFに戻っているのですが、マルチポイントは問題なく使えています。UIしっかりしろ。
電源OFF→電源ON後も自動で2台目のデバイスに接続されています。
挙動としては先に音楽を再生していたデバイスが優先される「先勝ち設定」になっていますね。
音の遅延について
水月雨 (MOONDROP) Pillの映像と音声のズレですが、YouTubeなどで動画やアニメをみる分はほぼ違和感なし。
そして片側を4回タップする「げ〜むも〜どっ♪」と気の抜けた可愛らしい声でゲームモードに切り替えてくれます。
この状態でゲームもしてみましたが、音ゲーやFPSは厳しいけど、アクションゲームをカジュアルにプレイするくらいなら問題ないレベルという印象でした。
ただ、マルチポイントとゲームモードを併用すると目の前にスマホがあっても音途切れがちょいちょい発生しました。少し接続が不安定になりますね。
通話品質について
水月雨 (MOONDROP) Pillの通話品質について。
マイク音声も実際に録音してみました。以下の音声をよければチェックしてみてくださいね!
マイク音声自体は聞こえやすいですが、バックのノイズが入りやすいですかね。
使用環境にもよりますが、ある程度静かな環境であれば、クリアに通話は出来ると思います。
騒がしい環境での通話には向いていないかなと思います。
水月雨 (MOONDROP) Pill まとめ
水月雨 (MOONDROP) Pillをまとめると以下のとおりです。
総合評価
4.8/5
水月雨 (MOONDROP) Pill

- イヤーカフ型でありつつボーカルの質感が高い
- 聴き疲れしにくいマイルドなサウンド
- 近未来的で可愛いデザイン
- 軽快で安定した装着感
- パラメトリックイコライザーでで超細かく音を設定できる
- マルチポイントに対応
- ゲームモード搭載
- 音量調整が操作で割り振れない
- アプリの挙動画やや不安定
- 本体がややチープ
3.9
高音
3.9
中音
3.9
低音
4.7
装着感
3.8
音漏れ
–
外音取り込み
4.0
マイク性能
4.0
利便性
Bluetooth | 6.0 | 最大再生時間 ※ANC ON時 | 本体8時間/ ケース込み28時間 |
コーデック | SBC,AAC | 充電時間 | 不明 |
ドライバー | 13mm ダイナミック型 | 充電端子 | Type C |
専用アプリ | ◯ | 防水 | IPX4 |
ノイズキャンセリング | – | 質量 ※片耳/ケース込 | 不明 |
外音取り込み | – | ゲームモード | ◯ |
自動装着検出 | – | 空間オーディオ | – |
マルチポイント | ◯ | 保証 | 1年 |
水月雨 (MOONDROP) Pillはこんな人におすすめ
- 予算6000円ほどでイヤーカフ型イヤホンを探している
- ノリを良さよりもボーカルの質を重視したい
- マイルドで聴き疲れしにくい音のイヤホンが欲しい
- デザインに惹かれた
PillとEarFun Clip、どちらをおすすめするかと言われたら、ボクはEarFun Clipと伝えます。
理由はPillよりもスペックが高く、アプリや機能も安定していて、イヤーカフ型としても十分な音質の良さがあるから。
Pillはアプリのカスタマイズ性は低いし、音量調整も本体でできないし、EarFun Clipと比べると不便な点が多いです。
ただ、ボク自身が「どちらか一つならどちらを使う?」と言われたら、Pillを選ぶと思います。
理由は単純にPillの方が音が好きだし、デザインやギミックが好きだからですよ。
多少不便でもフィーリングが合えばそっちを選ぶんですよ。イヤホンなんて好みの世界なんでそんなもんですよ。
特にボーカルを中心に屋内でしっとりと聴きたい方にはPillがおすすめです。
おすすめ記事

コメント