こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回はソニーより、密閉型モニターヘッドホンとしては6年ぶりの新作「MDR-M1」が解禁されました。
発売日は2025年9月19日予定で、市場推定価格は45,000円前後となっています。

- 超広帯域再生を実現する専用設計ドライバーユニット
- 密閉型音響構造
- クリエイターとの共創による、音源の制作意図を的確に再現するサウンド
- 長時間の作業でも快適な装着感を実現するイヤーパッド
- ステレオ標準ジャック、ステレオミニジャックの着脱式ケーブルを付属
- 収納しやすいスイーベル構造
MDR-M1ST以来の密閉型モニターヘッドホンですが、見た目は似ていますけどドライバーやパッドを含めた各パーツが刷新された完全新作となっています。
先行で使わせてもらいましたが、かなり良かったですよ!
リスニング用としては開放型の「MDR-MV1」があれば十分じゃね?って思っている方もぜひ一度聴いてみてください。MV1とはまた違った魅力があります。
今回は「MDR-M1ST」を含め、どこのスタジオでも置いている大定番「MDR-CD900ST」や、開放型モニターヘッドホン「MDR-MV1」と比較しながらどのような音なのか? どのようなシーンでの利用に向いているか?など紹介していきましょう。
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ソニー MDR-M1 外観・付属品
それではMDR-M1の外観や付属品をチェックしていきましょう。
パッケージは諸事情でカットさせていただきます。
付属品

- ケーブル 1.2m
- ケーブル 2.5m
- 3.5mm→6.3mm プラグアダプター
ケーブルは1.2mと2.5mの2つが付属しています。

MDR-M1STは2.5mしか付属してしなかったのでポータブル用途では使いにくかったですが、MDR-M1は据え置き、スタジオ、ポータブルなど様々なシーンで取り回しがしやすくなりました。
プラグはストレートタイプで、ネジ式の3.5mm→6.3mm プラグアダプターも付属。

ポータブル環境、スタジオ、どちらの環境でも対応できるプラグ仕様となっています。あくまでプロ仕様のため4.4mmバランスケーブルは付属していません。
本体
MDR-M1本体はソニーの昔ながらのTHE・スタジオモニター!な見た目。

ハウジングには「ソニーロゴ」「MDR-M1の型番」そして「Professionalの青帯」がそれぞれ記されています。

ハウジングデザインを4製品で比較したらこんな感じ。

MDR-M1STは「プロフェッショナル感」「プロデューサー感」があるというか……スタジオモニターながらも高級感があるデザインでしたが、MDR-M1は一気に「現場感」が出ましたね。MDR-7506っぽい。
モニターヘッドホンはこれでいいと思う。現場感出してナンボよ。
アームの根本には、色覚だけで左右を判別できるように「L(青)」「R(赤)」で記されています。このあたりの仕様はスタジオモニターらしさがありますね。

アーム部は10段階で調整が可能。

ヘッドバンド部にはCD900STのような印字はなくシンプル。

ヘッドパッドはMDR-M1ST同様にモチモチで、頭頂部に負担が掛かりにくくなっています。

ケーブル着脱部はネジ式3.5mmタイプ。クルクルと回して固定しておけば、ケーブルが引っ張られても勝手に抜けないようになっています。

折りたたみは水平方向にのみ曲げられるスイーベル構造となっています。

ここもMDR-7506のようにコンパクトに折り畳められたら嬉しかったですねー。あっちの方がポータブルしやすいのですよ。
ここまではMDR-M1STと仕様が似ていますが、大きく異なるのはイヤーパッドの仕様。

ほら、MDR-M1STよりも明らかに分厚くなっているでしょ?
正確な音源再生のため、様々な耳の形状にフィットするとともに、長時間の作業でも快適な装着感を実現するため、厚みのある低反発ウレタンフォームを採用して徹底的に設計したようです。
MDR-CD900ST < MDR-M1ST < MDR-M1と世代を追うごとに段々分厚くなっていきます。

きっと最終的にタイヤホンとして話題になった「MDR-XB700」みたいになる。
外観やイヤーパッドの違いだけのようにも見えますが、ドライバーもMDR-M1STやMDR-MV1とも異なる超広帯域再生を実現した専用設計40mmドライバーユニットを採用しています。
またハウジング上に設けた通気孔によって、低域における通気抵抗をコントロールする「ビートレスポンスコントロール」という機構も備えています。

MDR-M1の仕様や他のモデルとの違いについて
スペック・用途の違い
スペック項目 | MDR-M1 | MDR-CD900ST | MDR-M1ST | MDR-MV1 |
---|---|---|---|---|
価格(税込) | 約45,000円 | 24,860円 | 36,300円 | 59,400円 |
型式 | 密閉ダイナミック型 | 密閉ダイナミック型 | 密閉ダイナミック型 | オープンバックダイナミック型 |
ドライバーユニット | 40mm | 40mm | 40mm | 40mm |
再生周波数帯域 | 5Hz~80kHz | 5Hz~30kHz | 5Hz~80kHz | 5Hz~80kHz |
最大入力 | 1,500mW | 1,000mW | 1,500mW | 1,500mW |
音圧感度 | 102dB/mW | 106dB/mW | 103dB/mW | 100dB/mW |
インピーダンス | 50Ω | 63Ω | 24Ω | 24Ω |
本体質量(約) | 216g | 200g | 215g | 223g |
ケーブル長さ | 1.2m / 2.5m | 2.5m | 2.5m | 2.5m |
ケーブル着脱 | 対応 | 非対応 | 対応 | 対応 |
その他付属品 | 3.5mm→6.3mmアダプタ | ― | ― | 6.3mm→3.5mmアダプタ |
主な用途 | レコーディング ミキシング | レコーディング | レコーディング ミキシング | ミキシング マスタリング 立体音響制作 |
スペックで見比べてみると、MDR-M1STと比べてインピーダンス値が少し高くなりましたね。
数値以上にMDR-M1STより鳴らしにくい印象で、DACをローゲインのままにするとマイルドになりすぎる感覚がありましたね。
用途もMDR-M1STと同じく「レコーディング」「ミキシング」「マスタリング」まで、制作に関わるものであれば基本なんでもOKって感じです。
MDR-M1 レビュー
装着感|MDR-M1STよりも快適になってる!
MDR-M1の装着感についてですが、MDR-CD900STやMDR-M1STよりも快適ですね!
MDR-MV1のような開放的ではありませんが、ソニーの密閉型モニターヘッドホンとしては使ってきた中では一番良好な装着感のように感じましたね。
実際に装着してみるとこんな感じ。 THE・業務用!って感じ。

前から見た時の飛び出し感も少なめ。WH-1000XM6もこれくらいペタッとしていてほしい。

パッドの厚みが増したため、MDR-M1STやMDR-900STのようにドライバー部が耳に当たらなくなり、パッドに包み込まれるような装着感になりましたね。
本体も軽いですし、ヘッドパッドも肉厚なので長時間装着していても頭頂部も痛みにくいです。
実際に4時間装着しっぱなしでこの記事を作ってましたけど、耳元・頭頂部どちらもほとんど痛くなりませんでした。
また耳内をしっかり密閉してくれるおかげか、他の2機種と比べても遮音性が高く、音漏れも比較すると少なく感じましたね。
よほど騒がしい環境でもない限りは出先でも編集作業を行えそうなレベルですね。カフェとかで気分を変えながら編集するのにもよさそう。
装着感 | (4.8) |
音質|ボーカルの再現性が超高い
MDR-M1の音質についてですが、今までのソニーのモニターヘッドホンと比べて「俯瞰的に音を視る」ような傾向になっていますね。
MDR-MV1やMDR-M1ST、MDR-CD900ST、どの製品とも異なるような俯瞰的なモニターサウンドという印象です。
その上でボーカルの質感がめちゃめちゃ高いんですよね。
今回のチューニングは「Power Station at BerkleeNYC」というレコーディングスタジオで、Mike Piacentini氏との共創で行われています。
MDR-CD900STは昔の歌謡曲・ボーカルを重視したレコーディングヘッドホンでしたが、MDR-M1はワールドワイドに対応するため、低音のビートを含めさまざまなジャンルに対応する必要があるため超広帯域の音を拾えるようにチューニングが施されています。
- DAP:RME ADI-2/4 PRO SE
- アプリ:Apple Music
- 接続方式:6.3mm
- エージング:50時間ほど

MDR-M1の音の特長は次のとおりです。
4.7
高音
4.9
中音
4.6
低音
音の傾向
音の傾向はとにかくニュートラルで飾りっ気のないTHE・モニターサウンド。
ただ、MDR-CD900STやMDR-M1STとは異なり、少しマイルドで聴き疲れがしにくく、長時間の作業でも耳が耐えられるようなチューニングになっています。MDR-MV1よりもさらにマイルドです。
MDR-CD900STのような一音ごとの粗を探するようなタイプではなく、一歩引いた位置から楽曲全体の音を見渡すような鳴らし方のように感じましたね。
そのためMDR-CD900STよりもミキシング作業には向いているように感じましたね。
音場
音場はやや広めで俯瞰的な感覚。
MDR-MV1は抜け感はありますが一音一音が迫ってくるような、全体的な音場はMDR-M1の方が広く感じましたね。
高音
MDR-MV1は底抜けの高域の抜けの良さやキレがありましたが、MDR-M1は密閉型という箱の中に留まりながら高域の角をとってマイルドに鳴らすような感覚。
リスニング向けとして考えるなら、MDR-MV1の方が気持ちの良い音のように感じるかと思います。
密閉型で比較すると、MDR-CD900STのような高域の剥き出し感はなく、MDR-M1STと同程度にはマイルドに感じますが、高域はより自然に抜けるようになりましたし輪郭もより丁寧に描いていますね。
高域のキツさを感じにくいため、長時間の編集作業をしていても耳が痛くなりにくいと感じるとは思います。
中音
ボーカルの質感はとても良いですね! MDR-M1STよりも中域全体の解像度も高いと思います。
特定の周波数だけに偏らず、低い周波数〜高い周波数帯の男性・女性ボーカルを問わず、「声」にジャストミートで合わせているようなチューニングです。
声の強弱からビブラートの細かな震えや、ファルセットの消え入るライン、少しだけ掛けているリバーブなどのエフェクトまで把握できるような感覚。また、ボーカルが主張しつつもコーラスも聴き分けができる分離の良さもあります。
MDR-M1STは”ボーカルを浮き彫り”にしてモニタリングをしやすくしているのに対して、MDR-M1は”ボーカルの輪郭を良くして解像度を高めて”モニタリングしやすくしているように感じました。中域の表現力に関してはMDR-M1STの上位互換のように感じましたね。
MDR-MV1は高域の抜け感が心地良すぎて、ついつい高域側やサ行の抜ける部分をモニタリングしがちになりますが、MDR-M1は他の音に惑わされることなく、ボーカルだけを捉え続けられますね。
正直、ボーカルの表現力だけはMDR-MV1以上の実力はあるように感じましたよ。
低音
低域についてですが、バスドラムやサブベースはタイトな迫力があってリズムを追いやすい印象。対して、ミッドベースの量は控えめで輪郭もやや把握しにくく、モニタリングしにくいように感じました。
低域はリズムとして割り切っていて、中高域にフォーカスしているように感じましたね。
この辺りの編集のしやすさはボクよりもクリエイターの方の参考になるかと思います。
おすすめのジャンル
ジャンルとしては得意不得意もなく、すべてを満遍なく鳴らすTHE・モニターサウンドって感じです。
基本的にはクリエイター向けなので、音楽鑑賞よりも制作向けにはなります。
リスニング用に使うのであれば、ボーカルものを中心に聴くとMDR-M1の魅力を最大限に発揮できるかと思いますよ。
MDR-M1 まとめ
MDR-M1をまとめると以下のとおりです。
総合評価
5/5
MDR-M1

- 音を俯瞰的に聴けるモニターサウンド
- 高域が少しマイルドで聴き疲れしにくい
- ボーカルの表現力がとても高い
- 1.2m / 2.5m 2つのケーブルが付属
- 軽快な装着感で痛くなりにくい
- ミッドベースは追いにくい
- コンパクトには折り畳めない
- ポーチが付属していない
4.7
高音
4.9
中音
4.6
低音
4.8
解像度
4.6
迫力
4.8
装着感
素晴らしい完成度の高さでしたね。買いますコレ。やっぱりソニーのモニター系は強いですわ。
はじめは「MDR-MV1があるし、少しマイルドすぎる気もするし、正直いらんかな〜」とか思ってましたけど、しばらく使い続けてみるとMDR-MV1とはまた違った魅力を感じられました。
ソニーさん的には各モデルの立ち位置はあくまで使い分けではあるようですが、個人的にはMDR-M1STより実力は上に感じましたね。
とくにボーカルの表現力の高さと装着感の軽さ!この2点は素晴らしいです。価格も45000円前後とおおよそミドルクラスではありますが、同価格帯の精鋭たちにも負けない実力はあると思います。
クリエイターやエンジニアの方で長時間の作業でも耐えられる密閉型のモニターヘッドホンが欲しいと考えている方や、オーディオファンの方でもボーカルを中心としたフラットでクセの少ないサウンドを求める方におすすめです。
以上! MDR-M1のレビューをお送りしました。
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