こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回は変態紳士御用達のオーディオブランド「GRADO(グラド)」より、ハイエンドモデル「Signature HP100 SE」と、「Signature S950」を紹介します。

ウチでは初GRADO製品の紹介ですね! いつか紹介したいな〜とは思ってましけど、代理店から依頼をいただけました。 いきなりハイエンドとか飛ばしすぎやろ、正気か?
Signature HP100 SEは、創設者ジョセフ・グラド氏の生誕100周年を記念し、1990年に発表した「Signature HP1」のオマージュとして生まれたモデルです。

新設計のダイナミックドライバーに加え、同社史上初の着脱可能ケーブルや快適性を追求したヘッドバンドを採用。
伝統を守りながらも新たな方向性を示すヘッドホンとして、ニューヨークのブルックリンにある本社で手作業にて製造されています。
一方、Signature S950はSignatureシリーズの第2弾として登場したブラジリアン・ウォールナット材を使用したモデル。

ハウジングの木目はひとつひとつ異なり、それぞれの製品が唯一無二の個性を持っています。
ドライバーは同じものを採用していますが素材違いというわけではなくチューニングもそれぞれ異なります。
Signature HP100 SEのウッドハウジング派生モデルという感じですね。
今回はSignature HP100 SEとSignature S950、そして専用の4.4mmバランスケーブルをナイコムさんから紹介用に一時的にお借りしました。
ぜひ、最後までご覧ください。
▼動画版はこちら▼
まずGRADOとは?
まず、GRADOについてはオーディオマニア以外は知らない人が多いと思いますので簡単に紹介させてもらいます。
1924年にアメリカ・ニューヨークのブルックリン創立されたオーディオブランドで、創設者はジョセフ・グラド氏。
1953年の設立当初はジョセフ氏の高い技術力で作り上げたレコード用カートリッジが人気を博しましたが、最近はヘッドホンにも力を入れています。一応ワイヤレスヘッドホンとかも出しているのよ?
「快適性? 装着感? 利便性? コスパ?そんなもんは知らん。それよりこの音を聴け」というスタンスで製造を続ける版ハンドメイドメーカーだからこそ変態紳士向けと呼ばれているのでしょうね。知らんけど。
とりあえずその外観や音質の紹介を見ると、変態紳士向けと言われている理由がわかるかと思います。
GRADO Signature HP100 SE / Signature S950 外観・付属品
それではGRADO Signature HP100 SEとSignature S950の外観や付属品をチェックしていきましょう。
パッケージ
パッケージは相変わらず簡素! ハイエンドでも関係なし! これがGRADOクオリティ! ピザでも入っているのかな?

開封するとこんな感じ! ハイエンドらしさの欠片もない、これがGRADOクオリティ!

付属品

- ケーブル
- イヤーパッド
- マニュアル
本体・ケーブル
GRADO Signature HP100 SEの本体は特別処理されたアルミニウム製ハウジングを採用。スタイリッシュなスペースグレイ仕上げとなっています。

Signature S950のハウジングはブラジリアン・ウォールナット製で、耐久性が高く温度や湿度の変化にも強い特性を持っています。

こちらもイヤーパッドはEar Pad Gを標準装備し、Ear Pad Fが付属します。
イヤーパッドは……相変わらずスポンジ!! パッド型に整形された硬いスポンジです。これがGrad(ry

大型のEar Pad Gが標準装備されており、Ear Pad Fも付属しています。
このスポンジじゃないとGRADOの音を出せないんですよね……。
両モデルともヘッドバンドは従来モデルよりパッドを50%増量した牛革製ヘッドパッドを採用し、長時間の使用でも快適なフィット感を提供します。

アームはアルミニウム合金製ジンバルとステンレススチール製ロッドを組み合わせ、耐久性と安定性を高めています。

ドライバーは共に52mm口径の新設計ダイナミックドライバーを搭載。レアアース合金の強力な磁気回路、軽量な銅メッキアルミボイスコイル、新設計ペーパー・コンポジット・コーンを採用し、優れたダイナミクスと精緻な音場表現を実現しています

アームは今までのモデルだと360°永遠回り続けてしまう不具合仕様があったのですが、今回は105°で止まるようになりました!
ケーブルはGRADO初の着脱式に対応! 12芯スーパーアニールケーブルを採用。

柔軟性と耐久性を高めた編組仕上げとなっており、高純度な伝送を可能にしています。プラグ側は6.3mm、ヘッドホン側は4ピンミニXLRプラグを採用。
両出し4ピンミニXLRプラグはMEZEやAudezeの一部のヘッドホンとも互換性があります。
GRADOが段々まともになっていく……。
最後に重さですが、Signature HP100 SEはおよそ515gと、ハイエンドらしい重さです。

Signature S950の重さはおよそ406gで、重さは結構違う印象です。

GRADO Signature HP100 SE / Signature S950 概要・スペック
項目 | Signature HP100 SE | Signature S950 |
---|---|---|
ドライバー構成 | 52mm口径ダイナミックドライバー | 52mm口径ダイナミックドライバー |
インピーダンス | 38Ω | 38Ω |
音圧感度 | 117dB | 117dB |
再生周波数帯域 | 3.5 ‒ 51.5kHz | 3.5 ‒ 51.5kHz |
ケーブル仕様 | スーパーアニール12芯OFCケーブル(約1.85m) | スーパーアニール12芯OFCケーブル(約1.85m) |
入力端子 | 6.3mmプラグ | 6.3mmプラグ |
ハウジングコネクター | 4Pin mini XLR | 4Pin mini XLR |
重量 | 約520g (ケーブル含まず) | 約400g (ケーブル含まず) |
付属品 | ヘッドフォンケーブル、Ear Pad G、Ear Pad F | ヘッドフォンケーブル、Ear Pad G、Ear Pad F |
GRADO Signature HP100 SE / Signature S950 装着感
まず装着感についてはGRADO Signature HP100 SE / Signature S950ともに評価は同じで、重さの割にはまだ軽快な装着感のように感じましたね。
イヤーパッドは相変わらずスポンジですけど、このスポンジのおかげで耳が蒸れにくくて長時間着けていても開放的に感じます。側圧も強すぎずちょうどいいですね。

ただ本体が重いことには変わりないので、どちらもモデルも長時間装着していると頭頂部が痛くなってくる感じはありますね。
まだS950の方が軽いので頭頂部は痛くなりにくいです。
Signature S950 レビュー
それでは実際に使ってみた感想をお伝えしていきます。
まずはSignature S950の方から紹介してきましょう。
Signature S950の音質
Signature S950の音質ですが、ハイエンドでもブレない至高のGRADOサウンドって感じですね!
古参GRADOファンも納得のサウンドになるかと。

4.7
高音
4.9
中音
4.7
低音
音の傾向
見た目の通りの音の傾向で、HP100は金属系のシャキッと系、S950がGRADOらしいシャープさもありつつも温かみも帯びたナチュラルなトーンとなっています。
中高域がなかなかピーキーなので、楽曲や音量によってはその中高域がキツく感じたり、楽曲によってはむしろそこが魅力的に感じることもあるようなバランスになっています。
基本的に中高域寄りのバランスになっています。
音場・定位
音場は非常に広く、特に横方向だけでなく奥行き感があるダイナミックな音場感なんですよね。
ボーカルはやや近めながら、楽器の響きはスピーカーのように空間に自然に広がります。
ジャズやクラシックではその立体感がより際立ちます。
高音
高域はHP100 SEに比べるとエッジの立ち方は控えめではありますが刺激は強めで、それでいて滑らか。
あと、トランペットやサックス、スネアのスナップを炸裂音の表現がめちゃめちゃリアル。
目の前で演奏しているかのような容赦のない刺激がそのまま耳に迫ってくるような感覚があります。これがとても心地よいのですよ。
中音
シンバルやハイハットのような超高域はキツくは感じないのですが、その下の周波数帯のボーカルやスネアはなかなかピーキーに攻めてきますよ。
YOASOBIを聴くとシンセサイザーとハイトーン系ボーカルがキンキンと耳を刺激してくるのでなかなかキツイ……。
対して宇多田ヒカルやMISIAのようなしっとり系ボーカルは、とても艶やかで非常に品のある生々しい歌声を響かせてくれます。
少し低めのジャズボーカルやバラード系はかなり得意かと。
低音
包み込まれるような豊かに広がる低音が特徴。その音が奥行側に振動しつつ立体的に広がるような感覚ですね。
タムの「ドコドコドコドコ」と迫力を纏いながら空気が震えるような音を表現するのがとても上手!
ドラムに限るとスネアとタムだけやたらリアルなので、これだけ聴くとドラムめちゃめちゃ得意じゃね?って思うかもしれないですけど、シンバルとハイハットはややシャープに伸び切らない感じがあるんですよね。
なのでドラムというよりはパーカション系全般の表現力がとても生々しいという感じでしょうかね。
打ち込みも生っぽく鳴らしてしまう傾向にあるので、電子音よりはアコースティック系の打楽器の方が得意。
4.4mmバランスケーブルで聴くと
4.4mmバランスケーブルで聴くと、中高域のピーキーな感覚が少し抑えられて定位も定まり分離感も全体的にアップ。タムやパーカッションの躍動感もさらにアップしたように感じました。
これ以上出力を上げたらさらにピーキーになるかと思ってましたが、むしろSignature S950の強みをさらに活かすかのような変化が見られましたね。
ボクは4.4mmバランスケーブルで使った方がとても好みの音でしたね!
おすすめのジャンル
ジャズやバラードなどアコースティック編成の楽曲やブルースなど、録音環境の空気感を重視するジャンルがおすすめ!
また、打楽器の表現がとても上手なので、パーカッションを使ったワールドミュージック系もおすすめ。
一番良く感じたにはエラ・フィッツジェラルドやビリー・ホリディのような昔のスモーキーさも残るようなジャズボーカル。
S950が中低域〜中高域にフォーカスをしたチューニングなので、帯域幅の広い現代のPOPSよりも、帯域幅の狭い昔の曲の方が得意なゾーンを活かせている感覚があるんですよね。
その上で少し低めの女性ボーカルやサックス、ウッドベースをメインとしたジャズであればなおさらですよ。背景に残るホワイトノイズでさえ味になります。
ハイエンド機でありつつも古き良き楽曲の雰囲気は壊さず、最大限にその楽曲の魅力を再現できるのはさすがの一言。
ただ解像度重視で買うようなヘッドホンではないので、そこは注意。味気重視みたいなヘッドホンです。
GRADO Signature HP100 SE レビュー
Signature HP100 SEの音質
Signature HP100 SEの音質についてですが、GRADOらしさは残しつつもS950とは打って変わってやや現代的なチューニングになっているように感じました。
ロックやポップスを好んで聴くならSignature HP100 SEの方がいいかなと思います。
- DAP:RME ADI-2/4 Pro SE
- アプリ:Apple Music
- 接続方式:6.3mm接続
- エージング:不明(貸出だから結構してると思う)

Signature HP100 SEの音の特長は次のとおりです。
4.7
高音
4.9
中音
4.7
低音
音の傾向
音の傾向はとてもシャープで中高域のエッジ感が際立つような印象。音のバランス的にも中高域が一番前に出ているように感じますね。
その次に中低域の主張が強く、エレキベースやタムあたりの音が際立ちます。
S950と比べると音の輪郭がカチッとしていて、演奏の勢いがより増しているように感じます。
音場・定位
音場はGRADOらしく豊かに広がっていくような印象で、外側や上下だけではなく奥行きにも広く感じます。
ただ、S950のような包まれるような広がりではなく、定位はもう少し明瞭に感じますね。
高音
S950よりもハイハットとシンバルにキラリとしたエッジの鋭さが加わり、より歯切れの良いサウンドになっています。
スネアの「タンッッ!!」と力強く響く炸裂音の表現はさすがの一言! とてもリアルな刺激感がありますね。
ただ、S950と同じく楽曲によってはピーキーに感じるので、普段聴く楽曲が耳障りに感じないかどうか量販店やオーディオイベントでチェックしておいた方がいいかと。
ストリングスの超高域側に対する伸びはイマイチですが、低めのストリングスの音はむしろ空気の震えまで表現できていてとてもリアル。
中音
中域はすんごい……。中域というよりは中高域あたりかな? 高めの女性ボーカルの表現力が今まで聴いたことがないくらい近くてリアル……。
他の楽器帯よりもボーカルの方が全体的に近めで、シャープでありつつも艶やかで美しい歌声を聴かせてくれます。
S950だと相性が悪いと感じていたYOASOBIが、HP100の場合は逆に相性が良くなりましたからね。ボーカルのIkura氏の声が今まで聴いたことないレベルで近くて鮮やかでリアルな歌声を聴かせてくれるようになります。
YOASOBIってボクの場合シンセサウンドとセットで聴くことが多んですけど、HP100の場合はボーカルの表現力だけで鳥肌ビッシリと感じせるほどの凄みがあります。
ボーカルは高ければ高いほどよく感じる印象で、YOASOBIや相対性理論(やくしまるえつこ)あたりの高さがかなりおすすめ。そのラインよりも低くなるとS950の方がボーカルの距離が近く感じますかねー。
かと思えばVaundyの「怪獣の花唄」を聴くと、ボーカルがオケよりも後ろに行っちゃうんですよ……。なんだこの距離感。
シンセサイザーやエレキギターのジャキジャキとした主張は意外と控えめ。ボーカルから一歩引いたような距離で目立ちすぎないような立ち位置になりますね。ボーカルがメインになります
低音
低域はGRADOらしい広がりのある豊かな音でありつつも、S950と比べると引き締まった音のように感じますね。
こちらもS950と同じくタムやエレキベースは「ドゥオン」という空気が震えるようなリアルな迫力はあるが、それより低いバスドラムの「ドンドンッ」とした音の主張は控えめ。
サブベースもそこまで深く沈み込まず、うねるような迫力は得られないですね。
S950よりもシンバル、ハイハット歯切れが良くなっている分、ドラムセットの表現がよりリアルになっていますね。
バランスケーブルに変えると?
4.4mmのバランスケーブルに変えると、全体的に音が引き締まり、ボーカルの音像もよりリアルになった感覚があります。
S950もそうですけど、バランスケーブルを前提でチューニングしてんじゃね?ってくらい良く感じるので、高いけどできればバランスケーブルとセットで購入してみてほしいですかねー。
あとバランスケーブルがあった方が、据え置き環境がなくてもポータブル環境で実力が発揮しやすいかと思います。
30万のヘッドホンなのにiBasso DC-Eliteでも全然鳴らせますしね。
おすすめのジャンル
女性ボーカルのロックやシンセポップとの相性はとても良いと思います。
Signature HP100 SEの強みを活かせる曲は、やくしまるえつこの「絶対ムッシュ制」かなと思いました。
強めのドラムワークを中心としたロックナンバーに電波系ウィスパーボイスが交わる楽曲なのですが、曲を構成する全ての音がHP100の得意ゾーンを突いている感じなんですよ。聴く機会があればぜひ聴いてみてほしい。
同じような要領で椎名林檎の「丸の内サディスティック」もおすすめ。ドラムがリアルすぎて「スタジオライブ音源かな?」ってなりますよ。
ジャズやブルース、バラードなど味のある楽曲はS950が向いていると思います。
GRADO Signature HP100 SE / Signature S950 まとめ
モデル名 | Signature HP100 SE | Signature S950 |
---|---|---|
総合評価 | (4.5) | (4.5) |
音の傾向 | シャープで硬質なサウンド 立体的で躍動感のある中低域 ハイトーン系ボーカルの表現がリアル | シャープでありつつも温かみのある中高域 立体的で広がりのある中低域 しっとり系ボーカルの表現がリアル |
高音 | (4.7) | (4.7) |
中音 | (4.9) | (4.9) |
低音 | (4.7) | (4.7) |
おすすめジャンル | ロック / シンセポップ / 女性ボーカル / 現代的な楽曲 | ジャズボーカル / バラード / ブルース / 古き良き味気のある楽曲 |
GRADO Signature HP100 SE / Signature S950はこんな人におすすめ
さすがGRADO、どちらも一筋縄ではいかな個性たっぷりのヘッドホンでした。ハイエンドだからといって「超高解像度!」「なんでも聴こえる!」というタイプではありません。
唯一無二のチューニングから本体の形状、楽曲の雰囲気の表現やパーカッションのリアルな炸裂音など、ここにハマれば買いだとは思います。
楽曲の雰囲気や空気感を重視したり、ジャズバラードの名盤を好んで聴いたりする方はSignature S950。
女性ボーカルの艶やかさや生々しさやロックの躍動感を重視して聴きたい場合はSignature HP100 SEがおすすめかと思いました。
どちらも無試聴特攻はおすすめしません。この記事を参考にしつつ、気になったら一度試聴してみて検討してみてください。といいつつリンクは貼っておきます。
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