こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
創業110年以上の超老舗日本のオーディオブランド『DENON(デノン)』より、久々のノイズキャンセリング対応ワイヤレスイヤホン「AH-C840NCW」と、同社初のオープン型ワイヤレスイヤホン「AH-C500W」を紹介します。

AH-C840NCWは同社の16万円クラスのハイエンド有線ヘッドホン「AH-D9200」と同じ素材である「12mmバイオセルロース・ドライバー」を採用し、同じく同機種に搭載された振動板の動きを阻害せず、よりスムーズに振幅させるための“フリーエッジ”技術も採用。

AH-C500WはAH-C840NCWのオープン型イヤホンで、周りの音を自然に取り込めるようになっています。ドライバーは同じく「12mmバイオセルロース・ドライバー」を採用しています。
どちらも前作の「AH-C830NCW」に引き続きサウンドチューニングにはDENOMの全ての音に携わるDENONのサウンドマスター『山内慎一』氏が担当しています。
価格はオープンですが、AH-C840NCWは現在16,830円、AH-C500Wは13,365円ほどで販売されていますね。
今回はディーアンドエムホールディングスさんより紹介用に先行で提供いただいたので、実機を使って紹介していきます。
ぜひ最後までご覧くださいませ。
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DENON AH-C840NCW / AH-C500W 外観・付属品
パッケージ
AH-C840NCW / AH-C500Wのパッケージはこんな感じ。どちらも白地のとてもシンプルなデザイン。

開封してみるとこんな感じ。

付属品

- イヤーピース(シリコン製)3ペア(AH-C840NCWのみ)
- USB Type Cケーブル
- マニュアル
充電ケース・本体
AH-C840NCW / AH-C500Wの充電ケースはこちら。どちらもデザインはほぼ同じですね。

厚みもそこまでなくポケットにすっぽりと収まるほどの大きさ。

前作のAH-C830NCWと比較するとこんな感じ。形状はかなり変わりましたね。


背面には充電端子であるUSB Type C端子が搭載。

さらにワイヤレス充電にもどちらも対応。前作は対応していなかったので大きな進化ポイントとなります。

充電ケースを開けるとこんな感じ。

持ち手部分のスペースは確保されているので、取り出しやすさはまあ問題なし。

イヤホン本体はスティック型と呼ばれる形状で、下部にアンテナが伸びたようなデザインになっています。

アンテナ部にはDENONのロゴと、底面はマイク部が備わっています。


内側は耳の形に沿った設計になっているので、装着時のフィット感は良さそうな印象です。

AH-C840NCWのノズルはやや短めで平均的な口径。開口部にはフィルターがついています。

最後に重さですが、AH-C840NCWは総重量は54.1g、本体片耳の重量は5.0gと平均的な重さ。


AH-C500Wは総重量は50.4g、本体片耳の重量は4.5gとオープン型のため軽めになっています。


スペック比較
項目 | AH-C840NCW | AH-C500W | AH-C830NCW |
---|---|---|---|
画像 | ![]() | ![]() | ![]() |
ノイズキャンセリング | 適応型ハイブリッド | ー | ハイブリッド |
外音取り込み機能 | 〇 | ー | 〇 |
ドライバー | 12mm フリーエッジ・バイオセルロース | 12mm フリーエッジ・バイオセルロース | 11×10mm ダイナミック |
イコライザー | 〇(5 バンド) | 〇(5 バンド) | – |
クイックペアリング | Google Fast Pair / Windows Swift Pair | Google Fast Pair / Windows Swift Pair | Google Fast Pair / Windows Swift Pair |
Bluetoothバージョン | 5.3 | 5.3 | 5.0 |
Bluetoothコーデック | AAC / SBC / LC3 | AAC / SBC / LC3 | AAC / SBC |
Auracast | 〇(アップデート対応予定) | 〇(アップデート対応予定) | ー |
マルチポイント | 〇 | 〇 | ー |
再生時間(イヤホンのみ) | 10時間(ANC Off) 7時間(ANC On) | 7時間 | 6時間(ANC Off) 4.8時間 (ANC On) |
再生時間(ケース込み) | 35時間(ANC Off) 24時間(ANC On) | 24時間 | 24時間(ANC Off) 19時間(ANC On) |
ワイヤレス充電対応(ケース) | 〇 | 〇 | ー |
急速充電 | 5分の充電で1時間再生 | 10分の充電で1時間再生 | ー |
ケースの充電時間(イヤホン含む) | 2時間 | 3時間 | 2時間 |
通話用マイク数 | 2 | 2 | マイク、ビームフォーミング &エコーキャンセル機能搭載 |
アプリ | Denon Headphones | Denon Headphones | ー |
カラーバリエーション | ブラック / ホワイト | ブラック / ホワイト | ブラック / ホワイト |
防滴性能 | IPX4 | IPX4 | IPX4 |
前作のAH-C830NCWと比べて、再生時間の増加、ワイヤレス充電対応、アプリ対応、LC3対応、マルチポイント対応と機能性が大幅に改善されています。
前作の音質が好みだったけど、機能性の悪さが気になっていた……という方も選択肢に入れやすくなったのではないでしょうか。
DENON AH-C840NCW / AH-C500W レビュー
装着感|軽快で軽やかな装着感
AH-C840NCW / AH-C500Wの装着感は軽快で浅めの装着感で、長時間装着していても耳が痛くなりにくい印象でした。


前から見ても飛び出しが目立ちません。


軽快な装着感ではありますが、AH-C840NCWは密閉感が控えめで周りの音は遮音しにくい印象を受けます。
AH-C500Wは圧迫感が少なく、周りの音を取り入れつつ軽快に装着できますね。
装着感 | (4.5) |
音質|2万円以下で実現するピュアサウンド
AH-C840NCW / AH-C500Wの音質はどちらも2万以下としてはめずらしい繊細でフラットなピュアサウンドが特徴です。
カナル型 / オープン型による音場や特性の違いは少しありますが、基本的な音作りは同じように感じましたので、AH-C840NCW / AH-C500Wまとめて評価します。
4.6
高音
4.5
中音
4.4
低音
音の傾向
音の傾向はとにかく繊細でフラットな音作り。クラシック / ジャズにチューニングを合わせているのか、低域から高域まで満遍なくフォーカスを当てているように感じます。
PerL Proのようなダイナミックで広大なサウンドではなく、伸びやかで繊細な音という印象です。
前作のAH-C830NCWの方がもう少し低域と高域が強調された弱V字型の傾向で、全体的に引き締まった音のように感じますね。
AH-C840NCW / AH-C500Wの方がフラットで柔らかくナチュラルで一体感のある音のように感じます。
ロック / ポップスも聴くならAH-C830NCWでいい気もしますが、クラシックなどアコースティック編成の楽曲に特化するならAH-C840NCW / AH-C500Wの方がより自然な音のように感じますね。
音場
音場は広めで、カナル型のAH-C840NCWでもオープンタイプかのように横方向にすぅ〜と自然に抜けていくような音場の広さを感じます。
AH-C500Wはインナーイヤー型ということもあり、さらに自然に伸びていきますね。
低域から高域にかけて音に一体感があり、まるでスピーカーで聴いているかのような自然なフィールドを表現します。
高音
高域の表現力は2万円以下のワイヤレスイヤホンの中ではかなりの実力。
アコースティック楽器の表現力に長けており、バイオリン、アコースティックギター、ハイハットなどの楽器隊の表現が、この価格のワイヤレスイヤホンでありつつも”生感”があります。
刺激は抑えられたサラッとした音なので、エレキギターやシンセサイザーのジャキっとしたシャープな表現は苦手というか他にも選択があるように感じますね。
AH-C830NCWの高域はもう少しカチッとした硬質さがありましたが、今作の方がもっとナチュラルよりです。
ちなみにインナーイヤー型のAH-C500Wの方が高域に自然な抜け感があって好みでした。
中音
中音域の表現はナチュラル! ボーカルと楽器帯が自然になじむような一体感のある音で、脚色のない歌声を届けてくれます。
重厚さや勢いは控えめなので、激しめのロックやポップスを聴くと大人しい印象を受けますが、弾き語りやジャズバラードでのボーカルやピアノの表現力は同価格帯でもかなりのレベルです。
低音
低音域も中域同様にナチュラルに広がるような鳴り方。深みのある音でタイトになりすぎずに楽器が持つ特性のままフワッと低域が広がっていきます。
量感は控えめで重低音をズンっと響かせるようなタイプでは無いので、ロックやポップスもキレイめになりすぎます。
大編成のオーケストラでも低音でホール全体を響かせるような感覚までは表現できないため、どちらかといえば小編成のクラシック向けかな?という印象を受けましたね。
コーデックについて
コーデックはSBC / AAC / LC3までしか対応していません。
元々AAC接続までしか接続できないiPhoneユーザーは気にしなくてOKですし、iPhoneのAAC接続はかなり音が良いので今作の実力は十分に引き出せるのですが、AndroidのAACは使用デバイスによるかもしれませんけどiPhoneと比べて音がザラつきがちです。
ただLC3でうまく接続できれば、LDACまではいかずともiPhoneのAACクオリティまでにはザラつきの少ない音で鳴らせるようになります。
なので今作はiPhoneユーザーか、LC3で接続できるAndroidユーザー向けかと思います。
おすすめのジャンル
おすすめのジャンルはジャズ・クラシック・弾き語り・フォーク・民族音楽などアコースティック編成で制作された楽曲全般。
日本のアーティストだと、初期の「星野源」や「青葉市子」のような弾き語りを主体とした楽曲や、「haruka nakamura」「高木正勝」のようなアコースティック・アンビエント全般。
「トクマルシューゴ」や「コトリンゴ」のようなインディー系の楽曲もかなりおすすめです。
個人的趣味でもOKならゲームサウンドトラックの「サガフロンティア2」や「テイルズ・オブ・ブ・レジェンディア」あたりもおすすめですよ。
一番相性が良いと感じたのは無印良品のBGM集です。北欧の民族音楽と超マッチするようで、目の前で弾いているリアルな情景が浮かんでくるかのようです。
ロックやポップスはややモッサリ感があるのであまり合わないように感じましたね。
総評
どちらもDENONらしいピュアオーディオの音をそのまま完全ワイヤレスに詰め込んだような音のように感じますね。
この価格でアコースティック楽器に特化したチューニングのイヤホンは珍しいので、どちらもジャズやクラシックやフォークソングなどを好む方にはかなりおすすめできるイヤホンだと思います。
とくにAH-C500Wに関しては15000円以内のインナーイヤー型ワイヤレスでこれほど音質の良いワイヤレスイヤホンは他にもなく、唯一無二の製品と言えるでしょう。
ノイズキャンセリング|必要十分な実力はある
AH-C840NCWのみノイズキャンセリングに対応していますが、前作よりも確実にパワーアップしていましたね。
中高域側の遮音性は高いみたいで、カフェやオフィスでの人の話し声や、カチャカチャとしたタイピング音や食器が当たる音はしっかりめに軽減してくれます。
音楽を流した状態で無印のBGMを聴いていましたが、周りの雑音が気になることもなく作業に集中できましたね。
低域側の遮音性は並で、電車のガタンゴトンと鳴る下から響くような走行音はカットしきれていない感覚があります。ただ、前作よりは「ゴォォォ」という音が耳内で響きにくくなりましたね。
マイルドすぎて効き目はイマイチかな?と思いきや、意外と実用的な遮音性はありました。
ノイズキャンセリング | (4.2) |
外音取り込み|ややこもり気味
AH-C840NCWのみ外音取り込みに対応していますが、あまり自然には聞こえないですね。
AH-C830NCWと比べてみましたけど、なぜか退化していますね……。前作の方が自然に聞こえるんや……。
モゴモゴとした感覚があり、音楽を止めた状態でも相手の声は少し聞き取りにくいです。
AH-C500Wはインナーイヤー型なので、外音取り込みを使わなくとも自然に周りの音を取り込めます。
ただ、音楽を流すと相手の声は聞き取りにくいので、完全なオープンタイプと比べるとながら聴き用途には使いにくいように感じました。
外音取り込み | (3.5) |
操作|感度が高すぎる&カスタマイズがイマイチ
AH-C840NCW / AH-C500Wの操作についてですが、感度がちょっと高すぎる気がしますね。
操作はタッチパネルで行います。操作方法一覧は以下をご覧ください。
項目 | 操作方法(デフォルト) |
---|---|
再生/停止 | R側を1回タップ |
曲送り | R側を2回タップ |
曲戻し | R側を3回タップ |
電話を受ける | 着信中にL or R側を2回タップ |
着信拒否 | 着信中にL or R側を長押し |
通話終了 | 通話中にL orR側を2回タップ |
ミュート・ミュート解除 | 通話中にL or R側を5秒間長押し |
通話中のノイズレベルの調整 | 通話中にR側を3回タップ |
外音モードの切り替え | L or R側を長押し(AH-C840NCW) |
音声アシスタント | L or R側を長押し(AH-C500) |
ペアリングモードへの移行 | L側を1タップ後に長押し |
今回はアプリに対応したため、アプリで操作方法の変更ができるようになりました。

変更できるのはL/Rの「タップ」「ダブルタップ」「ホールド(AH-C840NCWのみ)」の6項目のみ。
トリプルタップは割り振りはできず、ホールドは「外音モードの切り替え」か「音声アシスタント」の割り振りのみになります。
一応音量操作は割り振れますけど、トリプルタップがL/Rともに「前のトラック」が割り振られているので、整合性を取るためにもダブルタップは「次のトラック」にしておきたいんですよね……。
なぜトリプルタップを固定にしたし……。
可能であれば「ホールド」に音量調整を割り振って、押し続けている間は断続的に音量が上がったり下がったりしていくような仕様にしてほしいですね。
感度が高すぎることとカスタマイズの不自由さも含め、操作性はやや不満が残りました。
アプリ|ついに対応
前作のAH-C830NCWはアプリに対応していませんでしたが、ついに今作のAH-C840NCW / AH-C500Wから対応しました!
アプリはPerL / PerL Proと同じ「DENON Headphones」を使用します。

アプリでできることは次のとおりです。
- 外音モードの切り替え(AH-C840NCW)
- イコライザー
- 接続
- タッチコントロールの変更
- デバイス名の変更
- 自動一時停止の動作
→片側を外した時、両側を外した時、一時停止しないから選べる - LE AUDIOのON・OFF
- ソフトウェアアップグレード
etc……
イコライザー
イコライザーはプリセットなどはなく、5バンドのカスタムイコライザーで調整します。

低域側が400Hzからと周波数帯が高いため、量感を多くしても中低域のベースラインがモッサリとしてしまうだけです。
もう少し細かく調整できるように10バンドイコライザーとかにして欲しかったですね。
イコライザーの調整が細かくできないのは残念ですが、とりあえずアプリに対応してくれたのは嬉しいですね。
通話品質について
AH-C840NCW / AH-C500Wの通話品質についてですが、録音してみましたので以下の音声をよければチェックしてみてください。
AH-C840NCW
AH-C500W
AH-C830NCW
前作のAH-C830NCWと比べると、どちらも少し背景ノイズが入りやすくなっている気がしますね。
音声自体は程々に聞こえやすいかな?という印象。
騒がしい環境でなければ問題なく通話できるとは思います。
通話品質 | (4.5) |
音の遅延|LC3ならゲームもできるレベル
AH-C840NCW / AH-C500Wの映像と音声のズレですが、ライブ映像やPVのような鑑賞向けの作品ではほとんど違和感なく視聴できるように感じました。
低遅延モードは搭載していませんが、LC3コーデックには対応しているため、対応スマホで接続すれば有線に近い遅延の少なさになります。
LC3接続で音ゲーをしてみましたが、ほんの数コンマズレるくらいでタップのタイミングはかなり合いやすいです。
DENON AH-C840NCW / AH-C500W まとめ
AH-C840NCW / AH-C500Wをまとめると以下のとおりです。
総合評価
4.5/5
AH-C840NCW / AH-C500W


ノイキャン非対応
- 2万円以下でありつつ音質はかなり良い
- ジャズ、クラシックなどアコースティックに特化したチューニング
- 軽快な装着感
- マルチポイントやワイヤレス充電にも対応
- LC3で有線並みに低遅延で使える
- 高音質コーデックに対応していない
- イコライザーが細かく調整できない
- 操作性がイマイチ
- 外音取り込み性能はイマイチ(AH-C840NCW)
4.6
高音
4.5
中音
4.4
低音
4.5
装着感
4.2
ノイズキャンセリング
3.5
外音取り込み
4.0
マイク性能
4.3
利便性
こんな人におすすめ
- 予算15000円ほどで音質の良いワイヤレスイヤホンを探している
- ジャズやクラシック、弾き語りなどアコースティック編成の楽曲を好んで聴く
- AH-C830NCWを好んで使っているけど機能性の低さが気になっている(AH-C840NCW)
- インナーイヤー型で音質にこだわったイヤホンが欲しい(AH-C500W)
AH-C840NCW / AH-C500Wは予算15,000円ほどでジャズ、クラシックなどアコースティック編成の楽曲を好む方にはかなりおすすめできるイヤホンだと思います。
前作のAH-C830NCWも音質面では高く評価していましたが、今作になって再生時間のアップやマルチポイント、装着センサー、LE AUDIO対応など利便性も大幅にアップして使いやすくもなりましたね。
とくにAH-C500Wはインナーイヤー型で音質に特化しつつアコースティック系の特化したチューニングというかなり珍しいイヤホンなので「こんなイヤホンを探していた!」という方にはかなりハマるのではないでしょうか。
ちなみに、ロック・ポップス、大編成のオーケストラならPerL / PerL Proがおすすめです。
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