こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
今回は楽彼(LUXURY&PRECISION)のドングルDAC「W2Ultra」を「W4 / W4EX」と比較しながら紹介します。
LUXURY&PRECISIONの製品を紹介するのは初めてですね。ボクもじっくり使うのは初めてです。
いつも紹介しているバケモノDACのライバル的なポジションのドングルDACですが、その音は正反対の傾向でありつつこちらも最高なんですよ。
- DACチップにはCS43131x2を採用
- 800mW持続可能高出力アンプ搭載
- HD800やUtopia等のフラッグシップ級ヘッドホン向け専用SDF
- ±4.5V/±6Vの2段階アンプ電圧切り替え機能で大出力を実現
- 特性大型ヒートシンク+カーボンファイバー背面で冷却を効率化
- 操作性のリニューアルと新カラー&デザイン
今回紹介するW2Ultraは57,200円とドングルDACのなかでは非常に高価な製品ですけど、いや〜これは価格関係なく売れると思うしファンもつくと思います。それほどまでに完成された音ですよ。
今回はオリオラスジャパンさんより紹介用にサンプルを一時期的にお借りできたので、実機を使って検証していきます。
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W2Ultra 外観・付属品
それでは外観をチェックしていきましょう。今回は本体のみ貸し出ししてもらっているので、パッケージはカットで。
- 取扱説明書×1
保証書×1
C-C接続ケーブルx1
USBAオス – タイプCメス変換アダプタx1
iOSには対応していますがLightningケーブルは付属していないので、iPhone 14以前の方は別途Lightning to USB-Cケーブルが必要になります。
本体はダークグリーンで彩られた金属筐体を採用。斜めに入ったディスプレイが特徴的ですね。
側面にはボタン類はなにもついていません。
W4 / W4 EXと比べるとこんな感じ。同じ筐体を使っているのかデザインはまったく同じです。
カラーリングはそれぞれ異なりますが、こちらはカラーバリエーションではなくモデルごとにカラーを変えています。
天面にはUSB-C端子とボリューム 兼 マルチファンクションボタン。
ボリュームの挙動もカリカリと程よく重めに動きますし、まわし心地は良いですよ。
長押しすることで本体のみでゲインやデジタルフィルターの設定など細かなカスタマイズが行えます。
操作にはやや慣れが必要ですがカスタマイズ項目は非常に多く取り揃えています。また後半お伝えします。
下部には3.5mm / 4.4mmイヤホン端子がそれぞれ備わっています。
本体内部には大型ヒートシンクを導入し、熱を効率的に放出して持続的に安定した高出力を実現しています。
価格にしては携帯性もなかなか高く、以前紹介したMagSafe対応のアクセサリー「DAC POCKET」にもすっぽりと収まります。
ディスプレイ部は隠れてしまうので詳細な設定はできませんが、音量調整くらいであれば問題なくできます。
重さは26.6gとドングルDACのハイエンドモデルとしては軽めですね。
W2Ultra 概要・スペック
スペックはこちら!
仕様 | W2 Ultra | W4 | W4 EX |
---|---|---|---|
DAC | CS43131x2 | LP5108 | LP5108-EX |
出力端子 | 3.5mmシングルエンド 4.4mmバランス | 3.5mmシングルエンド 4.4mmバランス | 3.5mmシングルエンド 4.4mmバランス |
出力 | 3.5mm: 216mW@32Ω, 4.4mm: 800mW@32Ω | 3.5mm: 110mW@32Ω, 4.4mm: 420mW@32Ω | 3.5mm: 110mW@32Ω, 4.4mm: 220mW@32Ω |
S/N比 (dB) | 3.5mm: 129 4.4mm: 133 | 3.5mm: 131 4.4mm: 134 | 3.5mm: 129, 4.4mm: 132 |
ダイナミックレンジ (dB) | 3.5mm: 129 4.4mm: 133 | 3.5mm: 131 4.4mm: 134 | 3.5mm: 129 4.4mm: 132 |
THD+N (32Ω) | 3.5mm: 0.00048%, 4.4mm: 0.00012% | 3.5mm: 0.0003%, 4.4mm: 0.00013% | 3.5mm: 0.00035%, 4.4mm: 0.00018% |
入力インターフェース | Type-C USBメス | USB Type-C | USB Type-C |
DSDオーディオフォーマット | DSD256 | DSD256 | DSD256 |
EQモード | Normal / CLASS / JAZZ / ROCK / POP / BASS / MOVIE / GAME | Normal / CLASS / JAZZ / ROCK / POP / BASS / MOVIE / GAME | Normal / CLASS / JAZZ / ROCK / POP / BASS / MOVIE / GAME |
SDFチューニングオプション | NORMAL / IER-M9 / IER-Z1R / SE846 / IE800S / Xelento / IE600 / E900 / Traillii Ti / N5005 / HD800 / HD 800S / Utopia | Normal / Xelento / IE800S / SE846 / IER-Z1R | Normal / Xelento / IE800S / SE846 / IER-Z1R |
ゲイン | HIGH / LOW | HIGH / LOW | HIGH / LOW |
PAV切り替えモード | 4.5v / 6.0V | – | – |
デジタルフィルター | FAST / SLOW / NOS / LL FAST / LL SLOW | FAST / SLOW / NOS / LL FAST / LL SLOW | FAST / SLOW / NOS / LL FAST / LL SLOW |
HIDキー | 対応 | 対応 | 対応 |
SPDIF出力 | 対応 | 対応 | 対応 |
楽チューニング | TUNE 01 / TUNE 02 | TUNE 01 / TUNE 02 | TUNE 01 / TUNE 02 |
価格 | 57,200円 | 79,200円 | 57,200円 |
スペック上で比べてみると、出力はW2UltraがW4の2倍近く上で、後半で紹介するPAVの切り替えにも対応。
対してW4はS/N比やダイナミックレンジ、THD+Nなど数値上では優秀なので、よりノイズレスでピュアなサウンドを体感できそうな感じですね。また、DACチップも独自のものを搭載していますね。
出力か質、どちらで選ぶかで選択肢が変わりそうです。
W2Ultra レビュー
静寂のなかで丁寧に作り出すアナログサウンド
W2Ultraの音質について。
LUXURY&PRECISIONのDACをじっくり試したのは初めてですけど、いや〜スゴイですね。
これぞ”精巧”って感じのとても丁寧な音のように感じました。
- デバイス:iPhone 15 Pro
- ケーブル:付属ケーブル
- アプリ:Apple Music
- SDF:Normal
- Gain:High
- PAV:4.5V
- イヤホン:SENNHEISER / IE 900
- ヘッドホン:SENNHEISER / HD 800S
音の特徴は次のとおりです。
4.8
音質
音の傾向は圧倒的ノイズの少なさの中で奏でるナチュラル系アナログサウンドという感じでしょうか。
味付けがめちゃめちゃ濃いというわけでもないのですが、ニュートラルすぎることもなく程よい暖かみが加えられた音のように感じます。
音の描写がとても精巧で、とにかく音像がブレないしシャリつかないし浮つかないし、その音源が持つ情報ひとつひとつを壊さないように紡ぎながら描くような感覚です。
その音の描写も機械的な丁寧さではなく、職人が作った人肌を感じられる精巧な音作りという印象を受けました。
低域はしっかり沈み込むような深い迫力がありますし、高域もシャリつかせずナチュラルに伸ばしますし、暖かみを加えつつイヤホン・ヘッドホンの特性をそのままに実力を底上げするような感じです。
ジャンルはロックやポップスなど激しめの楽曲よりは、ジャズやクラシック、バラードなど繊細でしっとりとした楽曲の方が合うように感じましたね。
いつも愛用しているDACが超大型の大剣だとすれば、W2Ultraは精巧に作られた日本刀的なイメージですかね。つまりどっちもいいんですよ。なんだったら味変的に2つで運用したいくらいです
イヤホン・ヘッドホンに合わせてゲイン/PAV / SDFのカスタマイズが可能
W2 Ultraの良いところが出力やチューニング、電圧などカスタマイズ設定が非常に豊富なところでしょうか。ディスプレイ搭載でアプリなしでも細かくカスタマイズできる点も評価が高いです。
ゲイン設定はNormalとHighの2種類から設定可能。
またゲイン設定とは別で、インイヤモニターとオーバーイヤーヘッドホン向けに電圧を最適化する「PAV切り替えモード」を搭載し、±4.5V/±6Vの2段階アンプの電圧切り替えができます。
PAVの設定はイヤホンで聴いていると違いがわかりにくいですが、HD 800Sのような大型のヘッドホンで聴いていると中域に厚みが加わってしっかり駆動できている感覚になりましたね。
さらに特定のイヤホン/ヘッドホンの特性に合わせたサウンドスタイルに切り替える事のできる「SDF切り替えモード」も搭載。
SDF切り替えモードの中身を見てみると、SENNHEISER の「IE 900」や「HD 800」、SONY「IER-Z1R」など10万~20万クラスのイヤホン・ヘッドホンがズラリとあるじゃないですか。
IE 900のモードに切り替えて実際にIE 900の実機で聴いてみましたけど、これなかなか良いですね!
IE 900の剥き出しだった硬質な高域にウォームさを与えつつボーカルラインが少し前に出てきて、楽彼らしい丁寧かつ聴きやすいチューニングがそのまま乗ったような感覚ですね。
IE 900の場合はSDFを切り替えた方が好みに近づきました。
そのほかSDF切り替えに対応しているイヤホン・ヘッドホンは次のとおりです。
- Xerento Remote
- IE 800S
- SE846
- IER-Z1R
- IER-M9
- IE 600
- IE 900
- Traillii JP
- NS00S
- HD 800
- HD 800S
- Utopia
HD 800 SとIE 900ユーザーとしてはありがたい! ただ、マジでハイエンド機しかないですね。
HD 800 Sもしっかり駆動できる
SDF:HD 800 S、Gain:High、PAV:6.0V こちらの設定でHD 800 Sでも聴いてみました。
ドングルDACとしてはかなりの出力の高さを持っているかと思いますね。そりゃ欲を言えば据え置きクラスは欲しくなりますけど、ドングルDACのなかでは一番HD 800Sのポテンシャルを引き出せているように感じました。
少なくともHD 620SやHD 660S2クラスであれば余裕で鳴らし切れますね。
チューニングもSDFをHD 800Sに設定すると、剥き出しの硬質サウンドって感じのHD 800Sの音がLUXURY&PRECISIONらしい温かみとアナログ感の溢れる聴きやすいサウンドになっています。
ハイパワーだけを売りにしているだけではなく、設定次第で高感度のイヤホンに合わせて出力を低く調整できる点もW2Ultraの強みです。
とにかく音や出力に対するカスタマイズ性がめちゃめちゃ高いです。
チューニングも2種類から選べる
さらに「TUNE01」「TUNE02」とチューニングを切り替えることができます。
TUNE01ではより広がりのある音となり、人の声を特徴とする楽曲に最適としています。TUNE02では精巧な音となり、交響曲や複雑な楽曲に最適とのこと。
ボクが聴いてみた感想としてはTUNE01が解像度を重視したHiFI的なサウンド、TUNE02が音の一体感を重視したスピーカーライクなサウンドという印象でしたね。
どちらが良いというわけでもなく合わせるイヤホンや音の好み次第ですかね〜。
さらにデジタルフィルターの変更も可能
さらにデジタルフィルターの変更も可能で、以下の5つから選択可能です。
- Fast
- Slow
- LL Fast
- LL Slow
- NOS
わりと音色が変わってくれるので、とりあえず全部試してみるのもおすすめですよ。
ボクはFastメインで使ってました。
W4と比べると
W4と比べてみましたが、やはり価格なりの違いはありますね。
まず聴いて感じたことがボーカルの質感の違い。W2Ultraやいつも愛用しているDACでさえボーカルラインは少し浮ついたり音像がブレたりするのに、W4で聴くと音のブレがなくなり、ボーカルが持つ音情報を一切逃さずに閉じ込めたかのような緻密な音に感じます。
W2Ultraの音がより緻密かつ丁寧になり、聴覚上ノイズもさらに少ないです。
ボーカルの質感にこだわるならW4以上に表現力がすばらしいドングルDACは他にないんじゃないかな?と思うほど。IE 900でなんでここまで艶やかで心地よいボーカルが出るんだよ。この子もバケモンや。
ただ出力面ではW2 Ultraの方がスペック上でも2倍ほど高いので、HD 800 Sのような大型のヘッドホンをしっかり駆動したい場合や据え置きDACアンプ代わりに使いたい場合はW2Ultraの方がいいかもしれません。
有線イヤホンの運用メインで妥協のない音を手に入れたい場合はW4が良いと思います。
W4 EXと比べると
W4 EXと比べると出力差の影響か、同じ設定・同じボリュームで聴いたとしてもW2Ultraの方が明らかに音がダイナミックでレンジも広く感じますが、W4 EXの方が細部にわたる音作りが丁寧という印象ですかね。ボクはW2Ultraの方が好みかな〜。
予算が5万円台まででイヤホンでの利用をメインにする場合はW4 EXでもいいかもしれませんが、W4はもっと出力が上がって、さらに音が丁寧になるような感じです。どうせだったら7万まで出してW4まで行った方が幸せになれる気がします。
バッテリーの減りは?
かなり出力は高いのですが、公式が謳うにはPAV±6V時に60分の再生ではスマートフォンのバッテリーは4%程度の消費となったとのこと。高出力なのに低ノイズ、そして低消費電力を実現した技術力オバケ。
実機環境でも試してみましたが、SDF:HD 800S、Gain:High、PAV:6.0V、Vol.:60 こちらの設定だと1時間でiPhone 15 Proのバッテリーは10%ほど減りました。
iPhoneのバッテリーのヘタリや通信環境など様々な要因があるので上記の結果は絶対ではありませんが、出力の高さに対してバッテリーの消費は抑えられている方だと思います。少なくともいつも使っているDACよりは消費が少ないですね。
Wシリーズ向けの高級USB-C to C(Lightning)ケーブルも販売
今回紹介用に高級USB-C to Cケーブル「WP2」もお借りしました。単品価格28600円!たっけぇ。
銀箔巻きと金箔巻き高純度銅を最適に組み合わせたケーブルで、低誘電率被膜の採用で外部電波の干渉を大幅に軽減します。8芯ケーブルではありますが、とてもしなやかで取り回しも良好です。
純正ケーブルと比べると、“明らかに!“というレベルまではいかないですけど、聴き比べるとたしかにWP2の方中高域に華やかさが生まれて、モヤ感もさらに取れて音像もさらに定まっている感じはありますね。
USBケーブルはデジタル信号だから音質に影響を与えないのでは?と思うかもしれませんが、外部ノイズ要因、電源の供給の安定性の確保、データ転送時のエラーの発生しにくさなど、さまざまな要因が絡んできます。
詳しく語ると論争が生まれがちなので、まあUSBケーブルでも音は変わる理由はあるんよ〜。くらいで思っといてください。
他のアクセサリーに比べて費用対効果は薄いので強くおすすめはしないですけど、できる限りW2Ultraを含めドングルDACの音質を最大限まで引き出したいと考えている方は合わせて検討してみてください。
たっかいけど、ふつうに自分用に買おうかなと思うくらいには効果はありました。
W2Ultra まとめ
総合評価
4.8/5
W2Ultra
- ノイズレスで純度の高い精巧なサウンド
- ドングルDACとしては出力が超高い
- 音量/電圧/ゲインなどを細かく調整できる
- 一部ハイエンド機に最適化した音で聴ける
- 発熱が少ない
- ドングルDACとしては価格が高め
4.8
音質
4.0
携帯性
4.5
拡張性
4.5
利便性
- スマホやパソコンの音を良くしたい
- 有線イヤホン、ヘッドホンどちらも使っている
- 繊細でピュアなサウンドが好み
- 予算は問わない
- IE 900 / HD 800Sユーザー
いつも使っているDACと比べると、音作りから出力設定やカスタマイズ性の高さなど、ひとつひとつの作りがとても”丁寧”なように感じました。
音のダイナミックさよりも精巧さや丁寧さを重視するならW2UltraやW4も超アリだと思います。現にボクもめちゃめちゃ欲しくなってます。
イヤホンメインで運用される方はW4でいいと思いますし、ドングルDACひとつでHD 800Sなど据え置きクラスのヘッドホンも駆動させたい方はW2Ultraがおすすめです!
紹介用に今回借りてるんですけど返したくね〜〜〜。めっちゃええんや〜〜。
またオリオラスジャパンさんから、公式ストア限定 W2Ultra / W4 / WP2 貴重!
公式ストアのクーポンコード入力欄に【lpkajetblog】を貼ると、あら不思議、10%OFFで買えるじゃないですか。
高級DACヤスイヤッター。ふつうに自分用にWP2買おうかな。
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