こんにちは、元イヤホン屋のかじかじです。 イヤホン・オーディオの情報を発信していますので @kajet_jt ←よければフォローお願いします。
THEIAUDIO(セーオーディオ)のハイエンドモデル3製品「Monarch MKIII」「Prestige」そして新製品の「Hype 10」をまとめてレビューします。
今回は販売元のLinsoulさんより提供いただきました。Prestigeは以前YouTubeでレビューしましたけどね。
ちなみに「Monarch MKIII」が170,500円+ポイント10%、「Prestige」が179,500円+ポイント10%、「Hype 10」がまだ日本では正式に取り扱いしていませんがAmazonでは143,180円で販売されています。
まさに神々の闘い。超ハイエンドモデルなのであまり需要がないかもしれませんが、ボクがレビューしたいだけだから許して。
THEIAUDIOといえば最近オーディオ界隈でも特に注目度の高く、中価格〜高価格帯の製品が多い中でも価格以上の実力を発揮するイヤホンを多く販売するブランドです。
この3製品を試してみて、それぞれどんな音の違いがあるのか、そしてボク自身どれが一番よく感じたのかを徹底解説していきます。
Monarch MKIII レビュー
スペック一覧 | Monarch MKIII |
---|---|
ドライバー | 2EST(Sonion) + 6BA(Sonion/Kwoles) + 2DD(Impact²) |
インピーダンス | 18Ω |
再生周波数帯域 | 20~80,000Hz |
音圧感度 | 100dB@1kHz |
プラグ形状 | プラグ:2.5 / 3.5 / 4.4mm プラグ(交換可能) |
コード長 | 1.2m |
リケーブル対応 | 2pin |
リモコンマイク | × |
付属品 | 22AWG 6N OCC、グラフェン銀メッキリッツケーブル プラグ3 種(2.5/3.5/4.4mm 端子) シリコンイヤーピース3ペア(SML 各1ペア) フォームイヤーピース3ペア(SML 各1ペア) キャリーケース |
Monarch MKIIIは「2DD +6BA+2EST」の3タイプ異なるドライバーで構成された計10ドライバーのイエンドモデルです。ドライバー構成がエグい。
Hypeシリーズでも採用されたIMPACT²も搭載されていますね。IMPACT²とは等圧設計で配置された2つの10mm複合振動板ドライバーからなる新しいサブウーファーソリューションのことで、これにより、音質の一貫性を損なうことなく、より高品質な低音を楽しむことができます。
本体はエンジニアが1台1台ハンドメイドで制作されています。ハウジングには医療用樹脂で作られていて安全性と耐久性に優れた設計になっています。
ケーブルは2pinの超高純度 6N OCC 銀メッキグラフェン銀メッキのリッツ構造ケーブルを採用。
プラグ部分の取り外しも可能で、簡単に4.4mmバランス化、3.5mmアンバランス化が可能です。
インピーダンスは18Ωですが、音圧感度は100dB@1kHzなので少し鳴らしにくいイヤホンです。できれば高出力のDAPでバランス接続で繋いであげた方が良いかと思います。
装着してみたらこんな感じ。大型な筐体に対して圧迫感も少なく自然に装着していられます。装着感はとても良い方だと思いますね。
デザインも白と黒のマーブル調にラメが少しだけプラスされた感じで、けっこうおしゃれ。
そのMonarch MKIIIの音質ですが、約17万のモデルだからそりゃ「めっちゃ音が良い」としか言えないんですけど、低域の量感や豊かさを重視したバランス型の音作りのように感じましたね。
ひとことで伝えるなら「優等生」って感じです。
Monarch MKIIIの音の特長は次のとおりです。
※10万〜20万円の有線イヤホンを基準とした評価軸です
4.7
高音
4.8
中音
4.9
低音
まず一聴して感じたことは、全体的に華やかさや刺激感は少なめ。なのでパッと聴きはマイルドに聴こえると思います。
その中でも特徴的に感じたのは低音の表現力。ウッドベースの表現力が特に素晴らしくまるで目の前で聴いているかのような感覚さえ覚えます。
バスドラムやタムの音もとても立体的で、空気を揺らすような臨場感のある音で耳内を響かせてくれます。
低音の豊かさに対して高域はほどよくドライで、繊細なハイハットワークも細かな金属音が輪郭を保ったまま余韻が浸透していく感覚を見事に再現しますね。
オーディオでもよく試聴楽曲として使われるビル・エヴァンス・トリオの「My Foolish Heart」を聴くと、そのウッドベースの表現力の高さに驚かされると思います。この表現力は後で紹介するHype 10にはできません。
マイルス・デイヴィス「So What」を聴いても同じような感覚だったので、ジャズ全般はかなり得意だと思います。「toe」のような繊細なギターと超絶技巧のドラムワークをメインとしたインスト系の楽曲もおすすめです。
ここまで聴いたらボーカルはイマイチなの?と思うかもしれませんが、ボーカルもとても艶やかに奏でてくれますね。
どちらかといえば、宇多田ヒカルやMISIAのようなしっとり系のボーカルとの相性が良く感じました。MISIAのSOUL JAZZ BESTを聴いたら、ジャズ+しっとりボーカルとMonarch MKIIIの得意なラインを全て突いてくるような感覚でそりゃ最高ですよ。
意外と結束バンドのような激しいロックサウンドでも、ボーカルをメインに聴かせてくれます。ただ、バンドサウンドが少しキレイめになり過ぎる感覚も少しあります。
あと電子音もけ少し生っぽく聴かせるので、どちらかといえばアコースティック系の楽器の方が得意なように感じました。まあ、この価格だけはあって”苦手”と感じるジャンルは一つもないですね。
ただ「もう少し派手さや華やかさが欲しい!」「ロックやポップスを高解像度でノリ良く聴きたい!という方は、この後に紹介するPrestigeやHype 10の方が楽しく聴けると思います。
Monarch MKIIIはバランス型でありつつも、しっとりとしたボーカルものや、ジャズやインスト系がとくに相性が良いという印象でしたね。
Prestige レビュー
スペック一覧 | Prestige |
---|---|
ドライバー | 4EST+4BA+1DD |
インピーダンス | 11Ω |
再生周波数帯域 | 20~40,000Hz |
音圧感度 | 95dB |
ケーブル | 超高純度6N OCC銀メッキ、グラフェン銀メッキリッツ構造ケーブル |
プラグ形状 | 2.5 / 3.5 / 4.4mm(交換式プラグ) |
コード長 | 1.2m |
リケーブル対応 | 2pin |
リモコンマイク | × |
付属品 | シリコンイヤーピース3ペア(SML 各1ペア) フォームイヤーピース3ペア(SML 各1ペア) 2.5 / 3.5 / 4.4mm プラグ キャリーケース 保証書 |
保証期間 | 1年 |
Prestigeは、静電型ドライバー+2基の中音域バランスド・アーマチュアドライバー+2基の中低域バランスド・アーマチュアドライバー+10mmダイナミック型ドライバーを搭載したトライブリッド型インイヤーモニターです。
本体はこちらもエンジニアが1台1台ハンドメイドで制作されています。ハウジングには医療用樹脂で作られていて安全性と耐久性に優れた設計になっています。
ケーブルは2pinの超高純度 6N OCC 銀メッキグラフェン銀メッキのリッツ構造ケーブルを採用し、プラグ部分の取り外しも可能で、簡単に4.4mmバランス化、3.5mmアンバランス化が可能です。
ケーブルやシェルの構造はMonarch MKIIIと同じですね。
インピーダンスは11Ωですが、音圧感度は95dBとイヤホンとしてはかなり鳴らしにくい方なので、バランス接続でハイゲインでちょうど良いくらいです。
ボクが普段使っているNW-WM1AM2でもバランス接続+ハイゲインでも出力が若干物足りなく感じます。
装着感もMonarch MKIIIと同じく良好です。デザインはMonarch MKIIIよりもギャラクシー感があります。
その音質についてですけど、ナチュラル系解像度おばけです。
解像度が高過ぎて心地よさとはまた違った感動が生まれました。スパイス的に入れた超細かいコーラスとか、効果音とかでも、遠慮なく拾い上げます。
ひとことで伝えるなら「キッチリカッチリ生徒会長」って感じですね。
※10万〜20万円の有線イヤホンを基準とした評価軸です
4.8
高音
4.8
中音
4.8
低音
音の傾向は超高解像度系モニターサウンドで、Monarch MKIIIをもっとモニター寄りにしたような感じですね。
スタジオで制作された音を何も足さずに何も引かずに、アーティストやサウンドエンジニアが意図した形をありのままに引き出すような感覚です。それでいて、モニター特有の質素さとか味気のなさとかも全然感じさせないです。
高音は粒立ちがあまりに良すぎて、スネアドラムとかハイハットの炸裂音の一つ一つの粒子まで見えるような感覚です。管楽器・弦楽器、どちらが得意ということもなく、どちらも超リアルに描写してくれますね。意識しなくても、ストリングスの音の強弱まで余裕で耳で追えます。
ただ、シリコンタイプのイヤーピースだとカチッとしていて楽曲によっては刺さる印象なので、個人的には付属のフォームタイプのイヤーピースを使うことをおすすめしたいと思いました。
中域は同帯域に対する分離感がとにかく高く、同じ帯域のボーカルとコーラスがまるで別ドライバーから鳴らしているかのように聴き分けができますね。ボーカルはナチュラルに鳴らすような印象で、録音された環境を製作者の意図したとおりに声の強弱からビブラート、息遣い、エフェクトまで全部クッキリと聴こえてきます。
ギターとかピアノも録音環境を率直に鳴らすような印象で、サビでは音圧や厚みのある音で、バラードでは繊細でしっとりと鳴らしてくれますね。
音場も高い解像度を再現するためにある程度広めで、1ドライバーのような一体感のある音ではなく、多ドライバーらしい多方面から鳴る音ですね。
定位感がとても素晴らしくて、前方180度に対して、前から奥まで10レイヤーくらいに分けられているような感覚。
この音は左45°の5レイヤー目くらいとか、この音は右170°の8レイヤーくらいの距離感からこれくらいの音量で!みたいな感覚でハッキリとどの方向から音がなっているのかが見える感覚です。高級モニターヘッドホンでこれができるのなら分かるんですけど、イヤホンでそれを再現しますからね。ヤバい。
低音は一聴するとスッキリとした印象なのですが、キック音が強めのトラックだとめちゃくちゃ深いところからバスドラムが持つリアルな迫力を耳内でしっかり再現してくれます。バンドサウンドでも耳で追うことがむずかしいベースラインも意識せずともハッキリと聴こえます。
藤井風とか宇多田ヒカルとかのバラードポップは甘々でしっとりと鳴らすのに、凛として時雨を聴いたら刺激とスピード感たっぷりで鳴らすし、楽曲に合わせて性格を変えているような感じというか、もはやクールとかウォームとかそういった垣根はなくて、楽曲が持つ本来の雰囲気をありのままに鳴らすような感じなんでしょうね。
あらゆるジャンルを聴くから特化型より万能型が良いという方や、とにかく解像度重視で聴きたいという方、Monarch MKIIIよりももう少し刺激感や解像度感が欲しいという方にはPrestigeの方が良いと思います。
箱出し直後だと音がカチっとしすぎて質素な感じがあるので、しばらく鳴らしこんでエージングしてあげた方が良いと思います。
あとシリコンイヤーピースでもカチッとし過ぎない音で聴きたい場合は、後から発売したPrestige LTDを選ぶことをおすすめします。あっちの方が高域が抑えられている感覚があります。
Hype 10 レビュー
スペック一覧 | Hype 10 |
---|---|
ドライバー | 10BA(Knowles / Sonion)+2DD(IMPACT²) |
インピーダンス | 18Ω |
再生周波数帯域 | 10Hz-40KHz |
音圧感度 | 105dB/Vrms@1KHz |
プラグ形状 | 2.5 / 3.5 / 4.4mm(交換式プラグ) |
コード長 | 1.2m |
リケーブル対応 | 2pin |
リモコンマイク | × |
付属品 | シリコンイヤーピース3ペア(SML 各1ペア) フォームイヤーピース3ペア(SML 各1ペア) 2.5 / 3.5 / 4.4mm プラグ キャリーケース 保証書 |
Hype 10は、Knowles社製のBAを高域帯に、そしてSonion社製のBAをミッドレンジ2に基と低域に2基を採用。そしてMonarch MKIIIやHype 2と同じく2ダイナミックドライバー構成による「IMPACT²」を採用。10BA+2DD構成です。
以前YouTubeでレビューしたHype 2の完全上位モデルですね。ちなみにHype 4というものも発売したのですが、こちらはレビュー用にいただいていないのでお許しを。
本体やケーブルの仕様もおおよそMonarch MKIIIやPrestigeと同じような感じっぽいですね。
プラグもも3.5mm、4.4mmと切り替えが可能です。
ケーブルやシェルの構造はMonarch MKIIIと同じですね。
インピーダンスは18Ωですが、音圧感度は105dBと今回紹介する中では一番鳴らしやすいですね。逆に出力が高すぎると低域が膨らみすぎる感じがあったので、ゲイン調整ができるDAPでほどよい音量で聴いた方が良いかもです。
装着してみるとこんな感じ。他の2機種と装着感は変わらず良好ですね。デザインのコンセプトはなんでしょうねこれ? 太陽と天の川的な感じ?
そしてHype 10の音質ですが、まさにHypeシリーズの最上位モデルの名に相応しい音質のように感じました。
ひとことで伝えるなら「ノリの良い元気っ子だけど成績もめっちゃ優秀なタイプ」です。
音の特長は次のとおりです。
※10万〜20万円の有線イヤホンを基準とした評価軸です
4.7
高音
4.7
中音
4.8
低音
音の傾向は低域に重心を集めたドンシャリ型のサウンドで、Hypeシリーズらしくとても臨場感のある低音で鳴らしてくれますね。Hype 2の音のバランスをそのままに、10万クラスまで音質を向上させたような感覚です。
試しにHype 2に同じケーブルをつけて聴き比べをしてみましたけど、やはりHype 10の方が音の情報量、解像度感、クリアさなどの実力差を感じられます。そりゃ10万ほど価格差ありますからね。
今まで使ってきた5万〜8万クラスとも比べましたが、やはりHype 10の方が実力が上ですね。ちゃんと価格に見合った実力があります。
2DDのIMPACT²構成はHype 2と同じですが、低域の解像度感もアップしている印象で、極太のベースラインをブリブリと鳴らしつつも、その弦の輪郭までしっかり追えるような感覚です。
高域は刺さりがなく、それでいて鋭く伸びるようなフレッシュな音。Monarch MKIIIよりも全体的に音にハリがあり、スネアドラムはよりスナップ感を効かせ、シンセサイザーはよりキラキラとしており、ロックやポップスをノリ良く楽しく聴けます。
ボーカルもより耳に近い場所から鳴っているような感覚で、女性ボーカルのピークの表現のハリが良くてとても心地よいですね。元気なだけではなく高域が消えいる細部の音も最後までしっかり描写してくれます。
10万円台という価格でありつつもジャズやクラシックにフォーカスをあわせず、ロックやポップスに特化しているモデルもなかなか珍しいですね
ボクが普段着ている「ずっと真夜中でいいのに。」「Eve」「YOASOBI」のような電子音を多用した最新チャート曲はHype 10が一番相性が良かったですね。電子音を変に生っぽく聴かせるのではなく、電子音として心地よく聴かせるようなタイプです。
ただ、ビル・エヴァンス・トリオの「My Foolish Heart」のようなしっとりジャズは、Monarch MKIIIと比べると元気すぎる印象で、しっとりと聴かせたいウッドベースも、締まり良くてうなりすぎるような感覚があります。こちらはジャズを逆にロックのようなスナップ感の良いサウンドで聴かせますね。
アコースティック編成の楽曲をメインで聴くなら、Monarch MKIIIの方が良いと思います。
音の解像度感や伸びの良さ、自然さはMonarch MKIIIやPrestigeには負けますが、2製品にはない「ノリ良く楽しく音楽を聴く」ことに特化したハイエンドイヤホンという感じですね。ボクは大好きでした。
まとめ
製品名 | Monarch MKIII | Prestige | Hype 10 |
総合評価 ※というか好み | (4.5) | (4.7) | (4.8) |
高音 | (4.7) | (4.8) | (4.7) |
中音 | (4.8) | (4.8) | (4.7) |
低音 | (4.9) | (4.8) | (4.8) |
価格 | 170,500円 +ポイント10% | 179,500円 +ポイント10% | 143,180円 |
それぞれこんな人におすすめ
- Monarch MKIII→ジャズやバラード、アコースティック編成の楽曲
- Prestige→解像度重視、モニター用途
- Hype 10→ロックやポップスメイン
この中で一番好みだったのは、ボクは「Hype 10」ですかね。理由は単純でロックやポップスを好んで聴くからです。
ただ、どれがおすすめなのかは、普段どのような楽曲を好んで聴くか次第だと思うんですよ。
ジャズやインストを好んで聴くなら絶対Monarch MKIIIの方が好きになっていただろうし、とにかく音の粒立ちや解像度感を重視する場合はPrestigeを選んでいたと思います。
同じブランドで同じ価格帯なのに、ここまで音の性格が異なるのも面白いですね。
今回のレビューが、e☆イヤホンやイベントで試聴する際や購入する際の参考になれば幸いです。
Amazonのリンクを貼っていますが、最近Amazonでは詐欺ストアの出店が多いため、購入前に必ず販売元をご確認ください。ボクの貼っているリンクも勝手に販売元が入れ替わっていることもあるのでご注意ください。
コメント
コメント一覧 (1件)
人気のHype2の後継機Hype4が国内でも流通し始めたのでぜひそちらもレビューしてもらえると嬉しいです!!